1年単位の変形労働時間制を導入できる給特法の「改正」案って、何? → えっ、そりゃダメだよ

10・4国会前集会での、全教書記長の訴えから

 

1年単位の変形労働時間制が導入できる「給特法の一部を改正する法律案」

その内容は、

①公立学校における働き方改革を推進するため「1年単位の変形労働時間制」を条例により実施できるようにするということ、

②「文科大臣が教育職員の業務量の適切な管理等に関する指針を策定し公表することとする」というものです。

 

「学校における働き方改革を推進するため」、という表現に注意が必要です。

 

 「1年単位の変形労働時間制」は教職員の長時間過密労働の解消にはつながりません。

 それどころか、教職員の長時間過密労働を見かけ上、みえなくするものです。

 安倍政権はこの間、数々の疑惑や問題について、あったことをなかったことにすることを常套手段としてきましたが、「1年単位の変形労働時間制」は、現にある時間外労働をなくしてしまうという点で、さらにたちが悪いものです。こうして長時間過密労働問題を「解消」するのだとすれば、本当に許しがたい。これはごまかしでなくて何でしょうか。

 

 このごまかしで、教職員を増やす、少人数学級を実現する、持ち事業時間数を減らすなどという予算をともなう改善策は一切その必要はないということになってしまいます。

 

 労基法の32条の4に定められている「1年単位の変形労働時間制」は、そもそも恒常的に時間外労働が存在している職場には導入の余地がないとされています。30日前に一月の日ごとの勤務時間を決めて、これを変更してはならないともされています。

 また1日の勤務時間は最長でも10時間とされています。それ以外にもかなり厳格な縛りがあるのです。

 

 最も大きな縛りは使用者と労働者の代表が書面による協定を結ぶというものです。

 

 実際にこの制度が導入されている職場では、導入以前よりも時間外勤務が増えるという傾向があることも、明らかになっています

 

 つまり、「1年単位の変形労働時間制」は、休日を増やす、勤務時間を減らすということを建前としながら、実際には、1日8時間労働制を壊し、歯止めがない長時間労働に向かわせることで、労働者の健康を破壊する働き方なのです。

 これが学校現場に入ったらどうなるでしょうか。間違いなく長時間過密労働はいっそう深刻化します。春先からずっとゆとりなく働いて、へとへとな状態になって、夏休みにたどり着けるでしょうか。

 

 法案は、給特法を一部変えて、「1年単位の変形労働時間制」を条例により実施できるようにするとしています。地方公務員には適用除外だが、公立学校の教員のみに適用できる条例をつくる。

 労基法には労使が書面による協定を結び労基署に30日前までに届けると厳格に決めてあるのに、条例に定めているから導入できるというのです。労基法の縛りを取り払い、労働時間について教員をまったく無権利な状態にするというものです。

 

 昨年来の働き方改革で政府は経済界の意向をふまえて労働者保護の規制緩和、つまり労働時間の規制を取り払う高度プロフェッショナル制度など、労働者の権利を剥ぎ取る政策を進めています。

 

 今回は学校現場を入り口に労働時間の概念をなし崩しにすることが狙われているのです。

 

 だから学校に限らず、この国のすべての労働者、やがて社会で働く私たちの目の前にいる子どもたちや生徒にも、保護者の方々にも、ものすごく悪い影響を及ぼす法案と言わざるを得ません。

 

 それは逆に、この問題が大きな社会的連帯につながる課題だということも意味しています。すでにその動きは現れています。

 

この法案の国会提出は、来週中の閣議決定を経て10月中下旬の見込みとされています。

 

 おそらく、政府与党はわずかな審議時間で国会を通過させようとするでしょうが、そうはさせない。徹底審議をさせて問題点を明らかにし、廃案に追い込む。これが私たちのたたかいです。

 次のことをお願いします。

 

1.請願署名のとりくみ

   連絡くだされば、こちらから署名用紙を送ります。

   ↓ 署名用紙          

 

http://www.zenkyo.biz/pdf/190919henkeiroudou.pdf

 

2.国会議員のみなさんに、この法案を徹底審議して廃案にすることを求めます。

 法案を文部科学委員会、文教科学委員会だけの審議にとどめさせない。労働法制について議論する厚生労働委員会や、地方公務員に関わる総務委員会でも議論するよう求めましょう。

3.同時に、法案は地方自治体の条例によって導入できるようにするというのですから、各地でこんな制度はとんでもない、長時間過密労働解消の決め手はやはり教職員を増やすことしかないという立場に自治体当局を立たせましょう。