【全教談話】児童虐待対策の強化を図る改正児童虐待防止法等の成立にあたって
2019年6月26日
全日本教職員組合(全教)
書記長 檀原毅也
6月19日、参議院本会議において改正児童虐待防止法と改正児童福祉法(以下、改正法)が全会一致で可決、成立しました。不十分な点を持ちながらも、相次ぐ虐待死事件の教訓から体罰の禁止を明文化するなど重要な内容を持つものです。
その特徴は、
第一に、「児童の親権を行う者、児童福祉施設の長等は、児童のしつけ等に際して体罰を加えることはできない」と、しつけのための体罰禁止を明文化していることです。虐待事案で「しつけのため」としているケースが後をたたない現状において重要な意味をもつものです。
また、親権者がその子どもの懲戒権を持つことを認めていることから、虐待を正当化する口実とされている民法第820条、822条の懲戒権の規定のあり方について改正法施行後2年を目途として検討するとしていることも重要です。20日に、山下法務大臣は法制審議会に民法の懲戒権の規定について諮問しましたが、2年を待たず、速やかに民法における懲戒権の廃止をすすめることが求められます。
また、学校教育法では正当な懲戒を認めていますが、懲戒と体罰の境目はあいまいで、体罰が許される余地が残されています。
子どもの権利条約は「子どもがあらゆる形態の身体的もしくは精神的な暴力、傷害もしくは虐待、放置(中略)からその児童を保護するため、必要な措置をとらなければならない」し、
国連子どもの権利委員会は「子どもをけなし、辱め、侮辱し、身代わりに仕立て上げ、脅迫し、こわばらせ、または笑いものにするような罰」も「残酷かつ品位を傷つけるもの」であることを指摘しています。
有形力ではなくても、子どもの人権と人間としての尊厳を踏みにじるような指導が行われている実態を踏まえ、学校教育法のあり方も検討をすすめる必要があります。
第二に、改正法は、児童相談所が、一時保護等の介入的対応と保護者支援を行う職員を分ける措置を講ずることや、弁護士、医師、保健師の配置をすすめ、医学的・心理学的知見に基づく指導を行うよう努めるとしました。
児童相談所への専門的知見を持った職員の配置や専門性にふさわしい職員の処遇改善、一時保護所における専門職の確保は急務です。改正法が「相談対応件数が過重なものとならないよう」見直すことや「国の支援の在り方について速やかに検討」をすること、専門知識・技術を必要とする職員の資格の在り方などについて1年を目途に検討すること等としていることは重要です。
都道府県や政令市・中核市・特別区が新たな児童相談所増設や児童福祉司等の増員、一時保護所の増設などをすすめるために、設置基準を設けることや財政的保障を行うなど国による思い切った支援が求められます。
第三に、改正法は、「児童の意見を聴く機会の確保、児童が自ら意見を述べる機会の確保、その機会に児童を支援する仕組みの構築、児童の権利を擁護する仕組みの構築その他児童の権利擁護の在り方」について2年を目途に検討し、必要な措置を講ずるとしています。子どもの権利条約は「その児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する」こととしており、子どもの人権を守る観点からも子どもの意見表明権を位置付けることは重要です。
全教は、
虐待や体罰の問題を個別の家族の問題にするのでなく、
貧困・格差の拡大や雇用不安などが背景にあることを踏まえ、
子どものいのちと人権、人間としての尊厳を守り、
孤立する親や家族をなくすために
多くの父母・保護者、国民とともに
対話と共同のとりくみをすすめる決意です。
以上
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