【全教談話】

教育再生実行会議「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、

学校、家庭、地域の教育力の向上」(第十次提言)について

2017年7月4日
全日本教職員組合
書記長 小畑雅子

 「教育再生実行会議」は、6月1日、「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」(第十次提言)(以下、「提言」)を発表しました。
 その内容は、改悪教育基本法を具体化し、改訂学習指導要領がねらうグローバル大企業に奉仕する人材を育成するとともに、「愛国心」の押しつけなどにより国や財界への奉仕者を育成することを貫徹させるために、家庭・地域のあり方にまで国や地方公共団体が介入するものとなっています。


1、「提言」は、「教育基本法第10条においては、父母その他の保護者は、子の教育について第一義的な責任を有」するとしたことをもとに、各家庭がその責任を果たせるよう「支援の充実」が必要だとし、「訪問型家庭教育支援」や「個人情報の共有化」などをあげています。これは、改悪教育基本法を具体化するため、国が家庭の「あるべき姿」を示し、家庭のあり方にまで介入するものです。また、子育てを個人の責任の問題として親を追い込み孤立させると同時に、「支援」の名で国が国民を監視することにつながりかねません。


2、「提言」は、地域が「子供たちの育ちに積極的に関わり、役割を果たすことが必要不可欠」だとして、コミュニティ・スクールの導入や「地域学校協働活動」の推進、国や地方公共団体NPOや民間機関とともに「地域未来塾」「放課後子供教室」「放課後児童クラブ」の推進をはかるなどとしています。


  学校、家庭、地域が互いに協力し、共同の力で子育て・教育をすすめていくべきであることは言うまでもありません。しかし、家庭や地域は、大企業優先の経済政策と福祉切り捨てにより、非正規雇用や低賃金長時間労働、「貧困と格差」の拡大の状態におかれています。「提言」は、そのことにはふれずに、「自助、共助、公助がある中で、公助のみに頼ることが当然視される状況がある」などとして、その責任をもっぱら国民の個人責任に押しつけようとしていることは問題です。就学支援制度の拡充・教育の無償化・保育待機児童解消など安心して子育て・教育に取り組める環境をつくることこそが求められます。


3、「提言」は「日本の学校教育は、教師の長時間勤務に支えられている状況に」あることを指摘し「教師の働き方改革」として、「多様な専門性を持つスタッフ」の確保、「地域住民との連携・協働」を含めた「チームとして教育活動に取り組む指導体制の整備」にふれています。


  今日の教職員の長時間過密労働の実態を解決するためには、教職員定数の改善と一人あたりの授業の持ち時間数の削減が不可欠です。地域住民との協力や専門スタッフの導入は大切ですが、その大前提として、授業や学級・学年・学校づくりを通して子どもたちと心通わせ、指導をすすめている教職員の専門性や各学校での教育課程編成が尊重されなければなりません。


4、「提言」は、「日本の子供たちの自己肯定感は諸外国と比べて低」く、「自分に対して自信がないままでは、必要な資質・能力を十分に育めたことになりません」としています。


  しかし、国連子どもの権利委員会が「日本の教育システムがあまりに競争的なため、子どもたちから、遊ぶ時間や、からだを動かす時間や、ゆっくり休む時間を奪い、子どもたちが強いストレスを感じていること、それが子どもたちに発達上のゆがみを与え、子どものからだや精神の健康に悪影響を与えている」と指摘しているように、これまでの競争主義的な日本の教育制度が子どもたちの自己肯定感が低いことの大きな要因になっていますが、そのことへの分析と反省はありません。ただちに、子どもたちを競争に追い立てている全国一斉学力テストの中止や改訂学習指導要領の抜本的見直し等の競争主義的な教育政策を改めるとともに、少人数学級を実現する等の教育条件を整備することこそが必要です。競争に追い立てられ、「自己責任論」によって孤立し苦しむ子どもたちに、「競い合う気持ち」や「負けたくない気持ち」を押しつけるのでなく、「ありのままの自分」を受けとめることのできる環境づくりこそ必要です。


5、「提言」は「自然体験活動や集団宿泊体験、職場体験活動、奉仕体験活動、文化芸術体験活動といった様々な体験活動を通じて、達成感や成功体験等を得る」ことが重要としています。様々なNPOや民間団体等と連 携して、子どもたちの居場所づくりをすすめるなどの多様な体験活動の場を保障することは重要です。しかし、長期宿泊体験活動や奉仕体験活動の押しつけなどにより、学校や子どもたちの実態を踏まえず、子どもや教職員に過度な負担を強いることが危惧されます。また、自衛隊や米軍への体験活動等を行う口実にすることは許されません。


 全教は、政府・文科省が、子どもたちの成長・発達を保障する教育という憲法子どもの権利条約の基本に立ち返って、その競争主義的な教育政策を根本的に転換すること、教職員を統制・管理するのでなく、その専門性を生かし発揮できるよう、少人数学級の推進、長時間過密労働の解消など教育条件をOECD諸国並に引き上げることを求めます。                                                                               以上





 第1次安倍政権の時に、教育基本法を改正(=改悪)しました。大反対(このブログの中にも当時の反対の様子が残っています)の中身が、少しずつ、第2次安倍政権の中で実現されようとしています。基本は、国と財界のための人づくりの方向です。教育は、統制することだ、あるいは統制しないと人材は育たないと言っているようです。ついに家庭や地域にも。
 強制の教育は、教育とは言えません!強育は、様々なゆがみをもたらします。一番の犠牲者は子どもたちです。
 止めよう!悪政、暴走!なめんなよ、国民!←あまりにひどい、あまり 復活?