【全教談話】「教育公務員特例法等の一部を改正する法律案」の成立にあたって

〜政府・財界のための人材育成に向けた教員の養成・採用・研修への政治的支配の強化に反対する〜

2016年11月22日
全日本教職員組合(全教)
書記長 小畑 雅子


 文科省が今国会に提出していた「教育公務員特例法等の一部を改正する法律案」は、
11月18日、参議院本会議で共産、希望の会(自由・社民)沖縄の風が反対しましたが、自民、公明、維新、民進等の賛成多数で可決・成立しました。
今後、2017年4月1日の施行に向け、省令や規則、通知等が策定されることとなります。
また、文科省の通知以後は、任命権者において「指標」「協議会」「研修計画」などの策定作業が進むことになります。


改悪された教育公務員特例法等は、教員の養成・採用・研修を「一体的に改革」するもので、「戦争する国」「世界で一番企業が活躍しやすい国」の人材育成に沿った教員づくりのために、大学での学びから退職するまで、教職生活全体を政治的に支配しようとするものです。全教は、中教審段階でもこうしたねらいを許さない立場からパブコメや意見表明を行うとともに、国会の傍聴行動等にとりくんできました。


 改悪された教育公務員特例法等は、
1 文科大臣が教員の資質向上に関する「指針」を定め、それにもとづき任命権者と関係する大学とで構成する協議会で各県等の「指標」を作成し計画を定めること
2 10年経験者研修を「中堅教諭等資質向上研修」にあらため、実施時期の弾力化等を行うこと、
3 小学校の外国語教育に関わって特別免許状を創設すること、
4 教職課程の大括り化、?改組される独立行政法人教職員支援機構が採用選考試験問題の作成に関与する道を開くこと
などが主な内容となっています。


 衆議院参議院での審議では、指針、指標、育成計画等を通じて、国の意向を反映した教員養成が行われる危険性があるとの懸念が多くの委員から表明されました。
また、免許更新講習の教職課程の大括り化によって、教科の専門性が軽視されるのではないか、
大学の自主性を侵害し、実質的に開放制の原則が崩れることや
「国定教師づくり」がすすむのではないかなどの指摘も相次ぎました。
さらに、教員が力量を高め、能力を発揮するためには、学校現場の自主性や裁量が重要であること、
子どもに向き合う時間を確保するためには定数増や少人数学級が必要であること
なども幾度となく、やりとりが行われました。


 こうした審議を通じて、
以下のような答弁がありました。
1 文科大臣が策定する「指針」は、大綱的なものであり、特定の価値観等の押しつけになってはならない。
2 任命権者が「指針」を参酌して定める「指標」は、「指針」に拘束されるものではない。
3 「指標」は教員が将来身につけるべき「資質の目安」であり、業績を評価する人事評価とは「目的・趣旨が違う」、したがって、人事や処遇に反映されない。
4 「協議会」については透明性が必要である。
5 中堅教諭等資質向上研修については、10年研の負担軽減も目的であり、更新講習と一部重ねることも可能であること、
などです。
 今後、これらの国会審議での到達点をいかして、教員の養成・採用・研修への国の政治的支配の強化を許さないとりくみをすすめることが求められています。
 全教は、以上のとりくみとともに、父母・保護者、国民との共同を強め、憲法子どもの権利条約、教員の地位勧告にもとづき、学問の自由、教育の自由、学習権を保障する教育政策の確立をめざすとりくみに全力をあげるものです。
                                   以上

県教育長に、国の言いなりにならないよう要請

 全教静岡(全静岡教職員組合)は、11月21日の静岡県教育長交渉の冒頭、文科相の「押し付けない」の答弁を紹介して、指標づくりに静岡県の自主性を発揮し国の言いなりにならないように要求しました。教育長も、それ自体は当然の受けとめだったと思います。