「すべての教職員の力を十分に活かして活気ある学校教育を実現させてください」と集めた3487筆の署名を県教委に提出し要請


 静岡県の臨時教職員制度の改善を求める会(「求める会」=教員採用のあり方や臨時教職員の待遇の改善を通して誰もが大切にされる学校をつくろうと、県内の教職員や保護者などが集まって結成された団体)は、2月19日、昨年6月以来県内外の方に広くお願いして集めた「すべての教職員の力を十分に活かして活気ある学校教育を実現させてください」の署名3487筆を静岡県教委に提出しました。あわせて、資料として、現場で実際に勤務されている臨時教職員3人の手記なども手渡しました。


 そして、教育監や教育総務課、義務教育課の職員に対して、参加者はそれぞれ学校現場の実態や願いを語りました。


 「是非教育長が対応していただきたかった。」と切り出した「求める会」事務局長は、現場の声を聞いてほしいと、資料の中の手記の1つを読みました。


「この時期、講師は、肩たたきされるのにびくびくし、もう一年生き残れるかどうかの瀬戸際で不安がつのります。2月に行われた校長面談では、「再任用の希望も多く、うちは教科主体だから講師として残れるかどうかなんとも言えない。」とか、「新聞に載っていた通り、研修センターにいる指導主事たちが現場に下ろされる。その人たちが今の講師の枠に入ってくることになるだろう。」などと不安にさせるような話が、校長から、他人事のように話されました。」
「ある年はなんと2人の初任者と一緒に学年を持たされました。初任者がやりやすいように楽なクラスをあげてねと言われましたので、私が持つクラスは全て大変な方のクラスになりました。学年でも一番の困難児の担当です。入学式のあと、その子は窓から飛び降りようとしました。大変、手立ての多くいる子です。「初任者には楽な子を」というのは現場では当たり前、いつ首を切られるかわからない講師はどんな子でも対応しなければいけません。 また、初任者研修は出張が多いです。初任者が出張でいないときは、私が2人の代わりに授業に入り、英検も学調対策も体育もT1で行ってきました。私は、教員採用試験を落とされ続けている講師で、きちんとした研修を受けたことがありません。にもかかわらず、初任者2名と抱き合わせという人事は、正直辛く、悲しかったです。受かった人の代わりを務めるこの1年は屈辱的でした。 「初任者としていつか、きちんとした研修を受けて学びたい。」そう思いました。」(以下略)


 また、臨時講師なのに、教育実習生を引き受けさせられ、教員採用試験会場でその実習生といっしょに試験を受けたという例があったことも付け加えながら、現場を支えている臨時・非常勤教職員の実態を理解し、改善するよう強く求めました。


 さらに、参加した会員から、「臨時非常勤教職員を「調整弁だ」などと言う者もいてひどい。」「ここ何年も2割、3割と学校現場に配置しているなど、県教委は雇用主として無責任」「昨年総務省が改善を求める7・4通知を出し、待遇など改善している県もあるのに、静岡県では手を打っていない。」「2月3月は、4月からの雇用があるのか心配で、パニックになる、という声が聞こえて来る。」などが語られました。


 教育監からは、「国の指導の認識はある。研修の機会なども考えている。特別支援学校での比率が高いことも(高すぎることも)認識している。しかし、再任用は今後も増えると思われる。」と、具体的な改善策のない回答しか返ってきませんでした。


 せめて雇用の安定を県教委の責任で、とお願いして、限られた設定時間での要請を終わりました。



 
 その後、県政記者室で記者会見を行いました。要請の様子とともに、静岡県の教職員の年齢構成〜平均44.8歳である上に20代30代が少なすぎる実態も示しながら、この問題の深刻さや、県や県教委が早急に臨時・非常勤教職員の正規雇用、待遇改善などの手を打つべき必要性を訴えました。


 署名に協力していただいた方には、報告が遅くなってすみません。既に秋から要請の場をお願いしていたのですが、県教委は「分刻みの忙しさで、時間・場所の設定が大変」なんだそうです。市民団体には今少し迅速・丁寧であってほしいものだと思いますが。


 改めて、要請の趣旨と内容を載せます。引き続きこの内容で追求していきたいと思います。みなさまのご理解とご協力をお願いします。 

要請趣旨

 静岡県の公立学校には、5000人を超える臨時教職員が働いています。そのうちの約2300人は常勤講師と呼ばれ、正規教員と同様に学級や部活を持ち、長時間の時間外労働をしながら学校教育を支えています。彼らの働き無しに、静岡県の学校教育は成り立たないのが現状です。ところが、臨時教職員の中には、毎年教員採用試験を受験しているのに、長年の努力と経験によって積み重ねられた力と実績を採用試験で評価してもらえず、5年、10年と不合格通知を受け取っている人が多くいます。また、劣悪な待遇と将来の不安に耐えかねて、学校現場を去って行く経験豊富な臨時教職員も少なくありません。

 さらに、2014年度から、希望する定年退職者は原則として全員再任用するという制度が始まりました。これは、国が決めた年金支給年齢の引き上げに対し、教職員の定年後の生活を保障するための施策です。しかし、再任用者を国が定める教職員定数の中に置いているため、再任用者が増える分だけ新規採用が減り教職員の高齢化が進行することから、様々な弊害が心配されています。また、これまで長年学校教育を支えてきた臨時教職員が、再任用者に職を奪われる形で学校を去らなければならなくなることも危惧されます。

 私たちは、新規採用者、教職員経験者、再任用者それぞれの力を十分に活かして、より充実した学校教育を実現するために、下記の項目を実現していただくようお願いします。

要請項目

1.経験ある臨時教職員の任用を保障し、計画的に正規として採用すること。

2.再任用者を定数外とすることにより、再任用者の力を教育条件整備・拡張のために活かすこと。

3.新規採用者数を大幅に増やし、高年齢層に偏っている教職員の年齢構成のゆがみを解消するための計画的な新規採用を行うこと。