管理職による上からの“一方的な教員評価”は、学校をダメにし、子どもをダメにします

静岡県内の教職員の皆さん!

7月29日、「教員人事管理システム研究協力者会議」(以下「協力者会議)から「最終報告」が教育長に提出されました。皆さんはご存じでしたか。県内一万数千余名の教員に関係する「教員評価」問題であるにもかかわらず、反応が大変弱いのは、内容を知らされていないからでしょうか。
 「中間まとめ」にも反対!
 静岡県内の教職員の皆さん!
 私たち全教静岡は、本年1月に出された「中間まとめ」に対しても(右のような「意見陳述」もしました)、
●学校職場には、上からの一方的な成績評価はなじまない
●今、教育現場に必要なものは、教員の「成績評価」ではな く、職場での“協力・共同”である
●教員評価を考えるのに、「教員」抜きで勝手に論議するの はおかしい。現場の代表を会議に参加させるべきである
といった考えで、『全教静岡』ニュースを発行し「教員評価」の導入に反対の姿勢を明確にしてきました。
給与に反映していく
 「方向」で検討!
今回の「最終報告」を読むと、いくつか気になる表現があります。
●「教員評価」の目的として、「教員の資質能力及び意欲の向上を図る」「学校組織の活性化を図る」「教員の人事管理に資する」の三点をあげているが、“子どもたちの健やかな成長・発達のために”という観点がない。
●「数値目標」について、「企業において・・・問題点も指摘されている」としながらも、「数量的な表現に向けて最大限の努力」が求められるとし、「数値目標」肯定の立場に立っている。
●本来、評価は双方向的であるべきなのに、「評価者は校長・教頭が望ましい」とし、「教員」は被評価者というように、固定化してしまっている。
●5月の段階では「将来的には何らかの形で給与に反映していくことを検討すべき」の文言が、「反映していく方向で検討すべき」と一歩踏み込んだ表現になっている。
 **皆さんの『要望』を全教へ 
 静岡県内の教職員の皆さん!
県教委はこの「最終報告」を受けて具体化し、試行・実施していくことでしょう。教育現場に能力業績主義を持ち込み、人事や給与につなげようとする「新勤評制度」を黙って実施させてしまっていいのでしょうか。
 皆さんの率直な批判・意見をぜひ「全教静岡」までお寄せください。私たちは現場教員の“声”をたくさん持って、県教委に交渉に出かけます。


三月の「意見聴取」における『全教静岡』の発言より
(前略)教職員のおかれている状況ということで言えば・・・文科省からは、次から次へと新しい政策がおりてきて、すぐに変わってしまうんです。以前、「教師は子どもの前に立つな。横にいて支援する」と言われ、「支援案」なんていうものになってしまいました。それから数年したら「子どもたちの力がついていない。先生たちはしっかり指導しろ」ということになって、「指導案」に戻ったのです。どうしてたった数年間で変わってしまうのでしょうか。
 それから「総合の時間」も「目玉だ。しっかり実践しろ」と言われてきたのに、ここに来て今度は逆に「時間を削れ」と言うのです。削って国語、算数の時間を増やせというふうなことまで言われているのです。指導要領は3割削減だと自信をもってスタートしたものの、学力問題でちょっと批判されたら「出来る子用」の問題集がつくられ、それを使って指導するように言われ、先生たちは本当に振り回されてしまっているのです。
 先生たちは「子どもたちが変わった」状況や、そういう朝令暮改的な政策によって振り回され、(資料によると)去年で言うと6304人の休職者がいて、そのうちの3194人、50%以上が精神疾患だというのです。(後略)


私たちの学校に『コーチングスタッフ』はいりません!

   静岡県内の教職員の皆さん 〜もったいない!約二億の予算は教育条件整備に〜
 秋も日一日と深まり、朝夕は寒さを感じるほどの気候となって参りました。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、あなたの学校では、コーチングスタッフによる年二回の学校訪問は既に終了したでしょうか。そして、皆さんの学校でのコーチングスタッフに対する評価は、どんなものだったでしょうか。
   コーチングスタッフって何?
 皆さんは、“コーチングスタッフによる「魅力ある授業」づくり支援事業”がどうして生まれたか、ご存じですか。多分、ほとんどの方がご存じないのではないでしょうか。4月になって「コーチングスタッフが来るよ」と言われ、そこで初めて“コーチングスタッフ”について知ったというのが実態だと思います。
 つまり、コーチングスタッフは、教育現場で働く“私たちの要求”から生まれたものではないのです。いつもそうであるように、“上から一方的”に現場に下ろされてきたものなのです。
 驚くことに、今年この事業に約二億円(正確には1億7900万円を予算計上)使われるというのです(二年間ですから四億近くなるようです)。コーチングスタッフは、そんな大金を使うべき事業なのでしょうか。
 
「実施要項」によると、「教員の『魅力ある授業』づくりを支援するために、教科指導力を持った退職校長等を『コーチングスタッフ』として任用し、学校訪問を通して『静岡県版カリキュラム』の普及・浸透を図り、すべての小中学校において教員の県版カリキュラムを活用した実践的指導力の向上を目指す」(下線は組合)となっています。
 つまり、コーチングスタッフは、教員に県版カリキュラムを活用させるために送り込まれてきたわけです。
 ところで、その「県版カリキュラム」ですが、そんなに大事にしなければならないものなのでしょうか。読んでみればわかるように、「県版」らしい部分も教科によっては少し見られますが、学習指導要領を少しいじった程度のもので、とても“優れもの”とは言えない代物です。
   学校訪問の実態は・・・
 さて、その活用のために派遣されるというコーチングスタッフですが、“本音で語る実態報告”を聞く限り《現場では歓迎されていない》《いらないもの》だと言えます。県内各所から寄せられた声の中から、その一部を紹介します。

■授業者の希望がなかったため、A小学校では若手と研修主任が授業を行った。「県版カリキュラムといっても、新しいことがあるわけではない。学習指導要領を具体的に解説したものだ」とコーチングスタッフの言。「だったらコーチングスタッフはいらないねぇ」の声もあり。 
静岡市内で多いのは、授業者は教科主任が受けるというもの。「なんで私なの?」という不満も出るが、希望者がいないため仕方なく承諾しているようだ。
■「教師主導の授業など、今時ありえない」等と言って、学級の状況や担任の考えも聞かず、授業論の押しつけをして「指導」を終えたコーチングスタッフもいる。
■B小学校では、授業者は指導力が不安視されている者に当てられた。
■指導の日、C小学校では半分の教室が教師不在になってしまった。午前中、三時間も「指導」を受けた教師もいた。
■D小学校では、授業を受けるのは若い人がいいということで、職員室で校長が指名していた。丁度、学校行事があって忙しい時期のため、「なんでこんな時期に来るんですか」との不満が聞かれた。
■中部では学校によってではあるが、授業案の準備については緩やか(「A4一枚程度で、授業の流れがわかるものがあればよい」と公式文書には掲載)だったが、東部や西部ではA4二枚などと決められ、授業案を提出させられている。
支部(静教組)に「廃止してほしい」と言ったら、その要求は却下されてしまった。「ありがたかった」という評価も聞いたが、指導案を書くのがとても大変そうだった。
結論!コーチングスタッフは無駄遣い!
 「指導」することになっている「県版カリキュラム」は、前述したように“優れもの”ではなく、参考程度に見ればいいものです。これ以上現場を忙しくさせるものはいりません。そして、教育現場に「複数の指導主事」など不用です。現場の実態に疎い、退職した管理職などを人材として活用する必要は、全くありません。
 私たち全教静岡は、「無駄遣いはやめて、その金を教育条件整備に回せ」と県教委に訴えています。
    全教静岡ニュース 第 9号       2〇〇5年10月31日