【全教談話】2024年度文部科学省 概算要求について

防衛予算の要求が7兆7385億円

 

文教予算5兆9216億円

 教育予算だけだと

    4兆3759億円

2023年9月6日

全日本教職員組合

書記長 檀原毅也

【談話】2024年度文部科学省 概算要求について

 

 2024年度概算要求が8月31日に締め切られ、各省庁からの概算要求総額は過去最高の114兆円に達することが明らかになりました。

防衛省の概算要求が約13%増、1兆円近く増額の7兆7385億円に対して、

文部科学省概算要求は一般会計で2023年度当初予算比約11.9%増の5兆9216億円、

そのうち文教関係予算は約9%増の4兆3759億円となっています。

 

小学校5年生での35人以下学級の前進やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の拡充、小学校高学年の教科担任制前倒し、教員業務支援員や学習指導員等の拡充、部活動指導員の大幅増など示されました。危機的な学校現場に対応するものではありますが、保護者、教職員、地域の願いである、小学校から中学校、高校での少人数学級の前進、教職員定数改善、「教職員未配置」の解消等には程遠い要求となっています。

 

 「えがお署名」をはじめとする私たちのとりくみや、多くの教育関係者が声をあげたことで、教職員定数増の必要性は文科省も認めるようになっています。

そのような中、教職員定数は「小学校における35人学級の推進」3171人、「小学校高学年における教科担任制の推進」1900人等を含め、1万767人の定数増に対して、自然減等7776人、差し引き2991人の定数増となります。

 

しかし、定年引上げに伴う「特例定員」4857人を除くと1866人の定数減になります。文科省は定数改善計画を策定し、計画的に定数改善を行うことが必要です。また、教職員の分断を深める主任手当・管理職手当の増額では、日々奮闘している全ての教職員への処遇改善にはなりません。

 

GIGAスクール」「教育DX」関連が247億円と、前年度から大きく増やされています。

 

GIGAスクール構想の着実な推進~1人1台端末の更新~」で、懸念された端末のBYOD(bring your own device)化が今回は避けられましたが、「教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用」としてCBTシステム(MEXCBT)の「全国学力・学習調査」での活用や「教科調査の悉皆実施」に向けた機能拡充、「次世代の学校・教育現場を⾒据えた先端技術・教育データの利活⽤推進」など、大幅な予算増になっています。

端末使用による健康・学習面への影響、「活用」の押し付け、子どもや教職員等の情報が集約され紐づけられる問題、個人情報保護や情報流出対策など、課題は山積しており、対応が求められます。

 

また、多くの施策で民間事業者を「活用」するとしており「教育の市場化」がいっそうすすめられ、課題が深刻になることが懸念されます。「次世代の校務デジタル化推進実証事業」では学校現場に導入されている校務支援システムの課題として「自宅や出張先での校務処理ができない」点をあげており、今後の方向性として「ロケーションフリー化とクラウド化の推進」をあげています。持ち帰り仕事を是認することに繋がりかねず、「働き方改革」が在校等時間の縮減のみに留められる懸念があります。

 

特別支援教育関係では、医療的ケア看護職員のさらなる配置拡充が示された一方で、「特別支援教育の支援体制等の充実に資する施策」は縮小、「ICTを活用した障害のある児童生徒等への支援」が拡充され、成長発達の保障よりも人材育成の観点が強く押し出されています。また、「インクルーシブな学校運営モデル事業」が新たに示されました。特別支援学校と小中高いずれかを一体的に運営することが想定されていますが、安易な統廃合になってしまう懸念があります。

 

私立学校への経常費助成や、施設設備の整備の推進費の増額が示された一方、高校生等の修学支援の要求は2023年度並みの4290億円です。高等学校等就学支援金は、公私ともに支給対象者を年収910万円未満世帯に制限し、私学の加算支給の対象は年収590万円未満世帯までとしたままで、改善要求はありません。所得制限の撤廃や私学の加算支給世帯の対象拡大など高校無償化へ向けたさらなる改善が求められます。

 

高校生等奨学給付金では、引き続き第一子で大幅に増額される等、評価できるものとなっています。就学支援新制度については、個人要件・機関要件によって、対象者が限定されること等、問題は解消されないままです。制度の改善・拡充をすすめるとともに、大学等学費の引き下げ、給付奨学金の拡充など、教育無償化のための施策が求められます。

 

全教は、「戦争する国」づくりのための軍拡予算を大幅に削減し、国の責任による35人以下学級早期実現、20人学級を展望した少人数学級のさらなる前進、正規・専任の教職員増、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費無償化など、子どもの権利が保障され、子どもが安心して学べる教育予算への抜本的な転換を求め、全国の保護者・教職員・地域住民とともに、政府予算編成に向けて全力を上げ奮闘する決意です。

 

以 上