全教が談話  恣意的な基本的人権の制約ではなく・・・

【全教談話】

新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法」の「緊急事態宣言」による恣意的な基本的人権の制約ではなく、国民のいのちと健康を守る施策の抜本的強化を求める

                2020年3月25日

             全日本教職員組合(全教)

             書記長檀原毅也

 新型コロナウイルスの感染拡大は3月11日にWHOがパンデミックを宣言し深刻な事態となっています。日本においても3月19日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が爆発的患者急増を起こさないよう引き続き警戒感をもって対応する必要性を強調しています。新型ウイルスの感染拡大を抑え、収束させることが何よりも重要です。

 

 3月13日、従来の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象に新型コロナウイルス感染症を追加する「改正」法案が参議院本会議で採決され、14日から施行されました。審議時間は衆議院で3時間、参議院では4時間だけというわずかなものでした。

 

 今回の「法改正」により新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことを理由に首相が緊急事態宣言をすることが可能となります。

同法による緊急事態宣言の最大の問題は、国民の自由と権利を制約する緊急事態宣言を発する要件が「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるもの」というきわめてあいまいなものであることです。

科学的な知見にもとづいて判断することも明記されていません。

今回、緊急事態宣言を発する際に国会に事前報告することが付帯決議に盛り込まれましたが、付帯決議に法的な拘束力はありません。緊急事態を口実に行政権の著しい肥大と、立法府の軽視がすすむ恐れがあります。

 

 首相の「緊急事態宣言」にもとづき、都道府県知事が不要不急な外出の自粛や、学校や劇場、体育館など多くの人々が集まる施設の利用制限を要請・指示をすること、病院が足りない場合など土地・建物の強制使用や、医薬品や食品などの売り渡し要請や収用や保管命令もすることが可能となります。

 

また、NHKは指定公共機関とされ、緊急事態宣言の下では首相から必要な指示を受けるとされています。

国会審議では民間放送にも統制が及ぶ恐れが指摘されました。人々が必要な情報を知らされないばかりか、政府に対して抗議することが許されない社会体制につながりかねません。

 

 新型コロナウイルス感染拡大予防への対応として、政府は専門家会議に諮ることもなくイベントの自粛を求め、2月27日には安倍首相が独断で全国一律に休校要請をしました。今回の「改正」法はこのような独断専行に法的な根拠を与えることにほかならず、立憲主義・民主主義の破壊、独裁への道を開くことになりかねません。

 

 現政権は「桜を見る会」問題、検事の定年延長問題などでも明らかなように、政治の私物化を公然とすすめ恥じるところがありません。このような政府に緊急事態宣言をさせることは非常に危険です。

 

 全教は、政府による恣意的な基本的人権の制約を許さず、子どもたちのいのちと健康、学ぶ権利を保障し、誰もが安心してくらせる社会を実現するために引き続き奮闘する決意です