2018年6月5日【全教談話】

過労死を促進し、労働者のいのち、権利をないがしろにする

働き方改革一括法案」の徹底審議、廃案を強く求める

          2018年6月5日
           全日本教職員組合(全教)
           書記長小畑雅子
 政府・与党は、5月31日、衆議院本会議において「働き方改革一括法案」の採決を強行し、6月4日、参議院において同法案が審議入りしました。


 8本もの法律を一括し多くの論点のある法案を、「空回し」の時間も含めて、わずか35時間程度しか審議しなかった上に、野党の質問について厚生労働大臣、政府参考人がまともに答えないまま委員会審議を打ち切るなど、異常な国会運営のもとでの強行採決となりました。


 全教は、過労死を促進し、労働者のいのち、権利をないがしろにする「働き方改革一括法案」の衆議院での強行に満身の怒りを込めて抗議するとともに、参議院での審議入りにあたって、徹底審議、廃案を強く求めるものです。


 「高度プロフェショナル制度」は、一定の専門業務に従事する年収1075万円以上の労働者に対して、労働基準法が定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を一切適用しない制度です。


 衆議院厚生労働委員会の審議の中でも、「48日間連続で毎日24時間、合計1152時間連続で働かせることができる」異常な制度であることが明らかとなっています。厚労大臣は、「そのような働かせ方は想定していない」と答弁しましたが、「想定外」の悪用を禁止できない欠陥法、過労死促進法である以上、「高度プロフェッショナル制度」の導入は撤回するべきです。


 また、時間外労働と休日労働の上限について単月100時間未満、2〜6か月で80時間未満という過労死ラインの水準に設定したことは、働く者の「長時間過密労働を今すぐ解消してほしい」「健康で生き生きと働き続けたい」という願いに背くものであり、断じて容認できません。


 残業上限は、少なくとも厚労省が示したガイドラインの水準である月45時間未満、年360時間未満まで引き下げるべきです。


 そもそも、同法案をめぐっては、労働時間法制の見直しに向けた実態把握に関する調査データに2割もの異常値が含まれていることが発覚し、裁量労働制の拡大をめぐるデータのねつ造問題とあわせて、立法事実に信頼度が疑われる事態となっています。


 「同一労働同一賃金」という言葉が一切入らず「同一労働・差別賃金容認法」とも言える内容になっている問題や、「雇用によらない働き方」を広げる問題もあり、法案を撤回することこそが求められています。
学校現場では、長時間過密労働が、肉体的にも精神的にも教職員を追い詰め、子どもたちの教育にゆとりをもって専念することを困難にしています。


 全教は、この問題を教職員のいのちと健康を守る課題であると同時に、子どもと向き合う時間の確保とあわせて、「教育の質」を確保し向上させる課題としてとらえて、「全教提言」を発表し、とりくみをすすめてきました。


 文部科学省も、世論と運動に押されて、教職員の長時間過密労働の実態を「看過できない状況」として認め、中教審「学校における働き方改革特別部会」において取りまとめられた「中間まとめ」を踏まえた「緊急提言」を発出しています。


 しかし、「学校における働き方改革」がよって立つべき労働法制が改悪されてしまえば、教職員の長時間過密労働を真の意味で解決することができなくなってしまいます。また、教職員の働き方の問題にとどまらず、教え子、教え子の保護者の働き方にもつながる重大な問題です。


 全教は、「働き方改革一括法案」の撤回、廃案に向けて、全国の仲間とともに、署名、街頭宣伝、国会前行動、国会傍聴などに旺盛にとりくんできました。参議院での審議入りにあたって、引き続き、共同を広げ、廃案に向けてとりくみをすすめていく決意です。


                                  以上