【全教談話】

2014 年度政府予算に対する文部科学省概算要求について

OECD諸国並みの教育予算に増やし、30 人学級の実現、「高校無償化」の所得制限導入撤回など、教育条件整備

をすすめることを強く求めます
2013 年9 月4 日
全日本教職員組合(全教)
書記長 今谷賢二
1、2014 年度政府予算に対する各省庁からの概算要求が8月30日に締め切られました。各省庁あわせると、一般会計の要求額は99 兆2 千億円に達し過去最大規模の概算要求となり、さらに「東日本大震災復興特別会計」を加えると合計103 兆円となる見通しです。
 その中で文部科学省概算要求額は、2013 年度予算の10.2%(5477 億円)増で5 兆9035 億円となっています。「日本再興戦略」(6 月14 日閣議決定)などを踏まえた諸課題について「要望」できる「新しい日本のための優先課題推進枠」では、「教育再生」の実現などに8402 億円を「要望」しています。
 文教関係予算については同7.9%(3213 億円)増の4 兆3874 億円となっています。ここでは、「第2期教育振興基本計画等に基づき世界トップレベルの学力、規範意識、歴史や文化を尊重する態度を育むため『教育再生』を実行する」とし、「少人数教育の推進」や「道徳教育の充実」、「高校授業料の無償化の見直し」、「奨学金事業の充実」、「グローバル人材の育成」などを重点化するとしています。そのために「優先課題推進枠」で5143 億円を「要望」しています。


2、2014 年度予算は、2012 年度総選挙で再び政権についた安倍政権が編成する予算としては、初めての本格予算といえるものです。「教育再生」を柱に据えている安倍政権が、今後の教育をどのように方向づけようとしているのか、文教政策にはその特徴が強く打ち出されています。


 それは、第一に、全国一斉学力テストをものさしに教育効果を検証し、施策を選択する「学テ体制」ともいうべき競争主義・「学力」主義に立った教育政策です。父母・国民が切実に求めている「30 人学級実現」については、2013年度全国学テの結果(速報)を活用した効果検証によって「『少人数学級の推進』と『チーム・ティーチング(T・T)や習熟度別指導の推進』を市町村の裁量で選択的に実施」するとしています。これは、2013 年度概算要求で「少人数学級の推進など計画的な教職員定数の改善」を求めていたことから後退するもので、国民的な願いにこたえるものではありません。


 第二に、自民党が掲げる「自助・自立を基本に共助、公助で支える」方向性が色濃く反映している点です。「高校無償化」に所得制限を導入し、奨学金についても「『有利子から無利子へ』の流れを加速する」としながらも「給付制奨学金」創設には踏み込まず、高校生や大学生の学びを社会全体で支えるしくみをつくる気がないことを示しています。これは権利としての教育を保障する理念からの後退であり、国際人権規約留保撤回という国際公約にも反するものです。


 第三に、特定の価値観や歴史認識を押しつける政策を前面に押し出している点です。「道徳教育の教科化」については、「少人数教育」の目的に「規範意識を育むため」とわざわざ書き込み、教職員定数改善をはじめ「心のノート」の活用や指導の推進などを、より具体的に示しています。


 第四に、企業・財界が求める「グローバル化」を子どもたちや教職員に強く押しつけている点です。「優先課題推進枠」には、「世界に勝てるグローバル人材の育成」「世界トップレベルの学力の実現」などの言葉が並び、小・中・高校・大学すべての段階で英語教育の「抜本的強化」をはかるとしています。「スーパー・グローバル・ハイスクール」など一部の学校のみ優遇し、子どもたちの学ぶ条件に格差をつけることは、教育の機会均等を保障する点からも重大な問題です。


 第五に、教職員の人事管理の強化による管理・統制を徹底する点です。新たな計画である「教師力・学校力向上7か年戦略」を示し、少人数学級や教職員定数改善を「メリハリある教員給与」「教員の資質向上」「厳格な人事管理」等とセットですすめるとしています。


 以上のような問題点は、教育条件整備が教育の機会均等を保障し、ゆきとどいた教育を実現するためにおこなわれるという基本原則を逸脱するものです。こうしたやり方では父母・国民の支持を得られないばかりか、教育の充実につながらず、子どもたちや学校が抱える困難を打開することにも背を向けることにもなります。


3、全教は、2014 年度予算編成にあたって、ゆきとどいた教育への条件整備と切実な国民要求の実現を強く政府に求めます。同時に、国の責任による30 人学級を実現し、「高校無償化」への所得制限導入を許さず教育費無償化を前進させるため、「教育全国署名」や「地方議会での意見書採択のとりくみ」などを中心に、年末の2014 年度政府予算編成に向けて、全国の教職員・父母・地域住民のみなさんとともに全力を尽くして奮闘する決意を表明するものです。


以 上

教育全国署名にご協力ください。
国と静岡県に向けて、取り組んでいます。