憲法改悪を許さず、憲法を守り、生かすとりくみに全力をあげよう

2012 年12 月17 日
全日本教職員組合(全教)書記長 今谷 賢二

1.12月16日に投開票が行われた総選挙は、「政治を変えたい」と願って政権交代を実現した国民が、民主党政権の3年3か月の公約破りの暴走に対して、厳しい審判を下す結果となりました。総選挙
を前に離党や分裂を繰り返した民主党が、解散時議席から四分の一以下となる57議席へと大敗し、自民党が294議席となり、自民・公明両党を中心とする政権が誕生することになりました。
 他の政党では、日本維新の会が54議席を獲得し、比例代表選挙では第2党となりました。公明党31議席みんなの党18議席日本共産党議席社会民主党は2議席でした。
 「維新含め改憲派3分の2」(12月17日付東京新聞)という選挙結果は、重大です。
 自民党小選挙区全体の得票率は43%でしたが、小選挙区だけで237議席(全議席の79%)を獲得しており、民意を正しく反映しない小選挙区制の矛盾をいっそう際立たせる選挙結果となりました。 自民党の得票数も、小選挙区選挙で前回選挙時比165万票減、比例代表で219万票減となっており、国民の支持によって議席増となったとはとても言えない状況です。
 マスコミが「第3極」と持ち上げた日本未来の党は、9議席となり、政党の離合集散ぶりに対する国民の厳しい審判を示しました。
 また、投票率が59.32%と戦後最低となり、選挙公示前後の世論調査と際立ったかい離を示しました。
 消費税大増税に対する国民の審判や原発ゼロをめぐる課題など重大な争点があるにもかかわらず、「第3極が焦点」と強調し、国民の真剣な模索の時期にさえ政党の獲得議席予想を繰り返し、国民の主権者としての政治判断を軽んじる報道姿勢に終始したたマスコミの責任は大きなものがあります。


2.今回の総選挙結果を受け、連立の枠組みなどはなお不透明ですが、自民党公明党を中心とする政権が発足することになります。
 自民党は、今回の総選挙で、「日本を取り戻す」と強調し、すでに発表されている憲法「改正」草案をもとに「天皇元首制」「自衛権の発動を妨げないこと、国防軍を保持」と明記し、「憲法改正発議要件の緩和」などを主張してきました。
 教育政策にかかわっても「多様な選択肢(複線型)を可能とするため6・3・3・4制の見直し」に言及するとともに、「自虐史観や偏向した記述の教科書」があるとして「教科書検定基準を抜本的に改善し、近隣諸国条項も見直す」などの項目が盛り込まれています。
 また、「教職員組合の適正化を図ります」などの項目もあります。

 こうした自民党の基本政策に対してアジア諸国はもちろん、ヨーロッパなどからも懸念の声が上がっていることは重大です。
 新政権のもとで、憲法改悪に照準をあてた反動的な政策が打ち出される危険性が強くなっていると言わなければなりません。「自民党型」と言われる、財界・大企業とアメリカの利益優先・「構造改革」路線を強化しようとする動きも想定されます。


3.自民党を中心とする政権が誕生するとはいえ、国民の政治を変えたいとの願いはけっして失われたわけではありません。
 消費税の増税中止、原発ゼロを求めるたたかい、TPP参加に反対する共同やオスプレイ配備の撤回を求めるとりくみなど、国民の共同のたたかいが後退しているわけでもありません。
 総選挙を受けて成立する新しい政権の危険な性格を直視しながら、この間のたたかいを発展させ、憲法と民主主義に反するあらゆる危険な動きの一つひとつに対して断固としたたたかいをすすめるとともに、改憲策動を許さないとりくみを強化することが求められています。
 同時に、改悪教育基本法のさらなる具体化を許さず、「競争と管理」を強める教育政策の抜本的な転換をめざし、父母・教職員・国民とともに切実な教育要求の実現をめざす共同のたたかいを強化する必要があります。

 全教は、引き続きこれらのたたかいに全力をあげる決意です。
                    以上