全教第26回定期大会【中央執行委員長あいさつ】

 全教第26回定期大会の開会にあたり、ごあいさつを申し上げます。
 まず初めに、ご多用のなか激励にかけつけてくださいました来賓のみなさんに、心から厚くお礼を申し上げます。ありがとうございます。
 私は開会にあたり、4点について所信を述べ、みなさんの討論に資したいと思います。
 

その第1は、深刻化する「貧困と格差」から子どもたちの教育を受ける権利を守り、進路を保障するとりくみについてです。

 小泉内閣以降、特に強められた「構造改革」推進の政治のもとで、貧困と格差の拡大が急速にすすみました。加えて、昨年秋以降の世界的な経済不況のもとで、大企業による「派遣切り」など労働者の大量解雇、大量失業、生活破壊が大問題になっています。
この事態は「子どもの貧困」が叫ばれる状況をつくり出し、未来を担う子どもや青年に深刻な影響を及ぼしています。貧困で家庭の経済が崩壊し、安心して学ぶことができない子どもたち、正規雇用の道が閉ざされ、低賃金の非正規雇用でしか働くことができない青年たちの状況が急速に広がっています。お金がないため、食事を与えられない、病気になっても医者にかかれないなど、いまでは子どもたちの生命すら脅かすできごとが報告されるようになっています。また、雇用情勢の悪化を理由とした「内定取り消し」や「求人取り消し」の増大で、青年が社会に出て働くことすら困難になるという状況も生まれています。
私はこの機会に改めて、大企業は内部留保の一部をとりくずし雇用の確保と労働条件の改善に努めるなど、子どもや青年も安心できるよう社会的責任を果たすこと、政府は有効な緊急施策を直ちに講ずることを強く求めるものです。
 
 いま多くの国民が反撃のたたかいを始めています。大企業の「派遣切り」にあった労働者が組合をつくって団交に臨み解雇撤回を勝ちとるなど、解雇された労働者自身のたたかいが前進しています。そのとりくみは「年越し派遣村」にみられるように、国民の大きな支持と共感を得て広がっています。
 子どもの保険証取り上げ問題では15歳までではありますが、短期保険証の発行を勝ちとっています。高校生も「高校統廃合反対」「私学助成の増額を」「学費の軽減を」「内定取り消しはやめろ」と、学び働く権利の保障を求めて立ち上がっています。学校は間もなく卒業や入学の時期を迎えます。年収500万円以下の家庭の子どもは公私とも授業料を無償とすること、就学援助の国庫負担金を復活すること、「内定取り消し」はやめることなど、子どもの就・修学と進路を保障する運動をいっそう強めましょう。

 併せて、この時期、学校に納めるお金、揃える学用品や教材などもたくさんあります。子どもの生活実態に目を向けて正面から受けとめ、困難を抱える子どもの実情に即したきめ細やかな教育実践に努めるとともに、必要な場合には生活保護や就学援助、授業料減免、奨学金などの相談にものりましょう。解雇などによって入学金や授業料が払えない家庭の増加が予想されます。行政に対し緊急の援助措置を求めるとりくみもすすめましょう。これらの課題をしっかりと位置づけながら、教職員も民間労働者とともに今春闘を積極的にとりくもうではありませんか。
 

第2に述べたいことは、改悪教育基本法の具体化を許さず、教育の条理と憲法にもとづく、どの子も人間として大切にする教育をすすめるとりくみについてです。

 この間の教育をめぐる情勢の最大の特徴は、国民の運動と世論で「教育の構造改革」路線の破綻が始まってきていることです。
 日本が見本としたイギリスで14歳を対象とした学力テストが廃止となったこと、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の会合で「全国いっせい学力テストは税金の無駄遣いであり、今のままなら不要」などの声があがっているとの報道、東京都江東区群馬県前橋市での学校選択制の見直し、和歌山県での高校2段階入試の廃止、教員免許更新制に対する地方教育行政や大学側の批判や反発などが、そのことを物語っています。
 摘発・排除の人事管理政策や教職員評価制度に対しても、日本の教職員組合運動の共有の財産といえる今回のCEART勧告は、見直しを求めるなど厳しい指摘を行っています。私は政府・文科省に対して、全国いっせい学力テストの中止、教員免許更新制の廃止を決断するなど、この間の教育政策を根本的に見直すよう改めて強く要求するものです。
 
 いま職場で関心を集め、全力をあげなければならない課題に教員免許更新制の廃止、当面2009年度からの実施凍結を求めるとりくみがあります。国民世論を高め、文科省都道府県教委に対するとりくみをさらに強めるなど、残された期間、全力をつくしましょう。それでも文科省が実施を強行する場合には、子どもと教育、教職員に関わって生じる否定的な影響を極力少なくし、一人の教員も失職させないよう条件整備を要求してたたかい抜こうではありませんか。

 改訂学習指導要領の実施に向けてのとりくみも重要です。押しつけを許さず、「参加と共同の学校づくり」と結んで、それぞれの学校で教育課程の民主的な編成にとりくみ、豊かな教育実践をつくりあげていくことが求められています。

 それらのとりくみをすすめていくとき、確かな拠り所となるものが憲法です。佐藤学東京大学教授や槇枝元文元日教組委員長、三上満元全教委員長ら13氏による「教育子育て九条の会」のよびかけに応え、立場を超えて共同をすすめ、「学校九条の会」や「地域九条の会」を広げ、憲法と子育て、教育、学校などについて旺盛に語り合おうではありませんか。
 

第3に話したいことは、職場活動の活性化と組織の拡大・強化のとりくみについてです。

 青年教職員の中心的要求である「学ぶこと」「つながること」を重視した計画的・意識的なとりくみが広がっています。多くの地域で青年が主体となったとりくみがすすみ、青年が青年に働きかける、青年が職場活動の中心的役割を果たすなどの状況が生まれ始めています。また、孤立した青年や若年退職者を出さない連帯と助け合いの職場づくりも広がっています。

 臨時の教員、職員、パート、アルバイトの仲間に対するとりくみも大切です。正規化をすすめ、雇用確保、賃金、権利をはじめとする労働条件の改善などのとりくみを、組合への組織化とも結合してとりくみましょう。子どもと教育、働くものの未来をみんなでつくりあげるために、全教のすべての構成組織と組合員が職場活動の活性化と組織の拡大・強化に全力をあげることを心からよびかけるものです。
 

第4に申し上げたいことは、総選挙のとりくみについてです。

 今日、世界と日本はまさに激動の渦中にあります。世界を席捲していた「新自由主義」は終焉を迎え、日本でもそれにもとづく「構造改革」路線の破綻は誰の目にも明らかです。「教育の構造改革」も破綻に向かっています。いまこそ、国民のくらしを守り、どの子も人間として大切にする教育を、国民みんなの力でつくりあげるために力をつくすときです。間もなく総選挙があります。自公政治を終わらせ、憲法が生きる、国民が主人公で、子どもと教育を大切にする政治へと歩みだす結果をつくりだしましょう。
 
 以上、開会にあたって所信を述べました。代議員のみなさんの豊かな討論で大会方針を練り上げていただくようお願いするものです。
 あいさつを終わるにあたって、本大会の会場を快く貸し、好意的に対応してくださっている社会文化会館のみなさんにお礼を申し上げます。また、大会の成功にむけて要員・警備の仕事に当たっていただいている首都圏の仲間のみなさん、弁護団のみなさんをはじめ多くの方々に支えられて本大会が開催されていることに心から感謝を申し上げます。
 最後になりましたが、代議員のみなさんの積極的で活発な討論を期待し、委員長あいさつといたします。