*1153529913*[憲法教育基本法]全教弁護団リレートーク自民党憲法草案と教育基本法改悪案」
弁護士:杉島幸生

昨年、自民党が決定した新憲法草案は、

「国及び地方自治体」は、「適切な役割分担を踏まえて、相互に協力しなければならない」(新憲法草案92条)と規定しています。これを住民福祉の向上のために国と自治体が一致協力すべきことを定めたものと考えるのはあまりにお人好しというものです。

 自民党草案が「地方自治体は、〜住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施する」(同91条1項)、「住民は、〜その負担を公正に分任する」(同条2項)とし、「財政の健全性の確保」(同83条2項)を規定していることからすれば、自民党草案の意図が、「地域住民の日常的な福祉サービスの実施は、地方自治体の役割だから、国は最低限度の部分しか負担しないよ」ということにあることは間違いのないところです。

他方、教基法改悪案16条は、「教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適性に行われなくてはならない」としています。この規定を先の新憲法草案とあわせ読むなら、「国が責任を持つのは、最低限度の教育だけだよ。後は各地の自治体や住民の責任(負担)でやっていてね」ということを意味しているのだと読むことができます。

 そうなると改悪案が現行法の規定する「9年の普通教育」(義務教育・現行法4条)を「法律の定めるところにより」(改悪案5条)としていることが重要な意味をもちます。国が責任をもつ義務教育は、「読み書きそろばん」ができるまでの数年間だけ、それ以上の教育は、財政的余裕のある自治体やお金持の子供たちだけが受ければいいんだよということにもなりかねないのです。(ちなみに、改悪案5条2項にも先に指摘したの同様の規定があります)。

 憲法改悪と教育基本法改悪は、こうしたところでもつながっています。子どもたちのために、このどちらも許してはなりません。