堀尾輝久東大名誉教授 衆議院教育基本法特別委員会 参考人質疑から

zenshizu2006-06-10

 2006年6月7日

なぜ「改正」が必要なのかという根拠について

理解できません。自民党町村信孝議員は、本委員会で「敗戦後還症」という誉葉を使いました(5月24日〕はたしてそうでしょうか。
あの敗戦の中で、私たちの先人がどういう思いで新しい人間を育て新しい国をつくろうとしたか。その思いが教育基本法をつくったのです。その中心になった田中耕太郎(当時の文相)、南原繁(当時の東大総長)たちば、本当に人間を思い、国を思った人たちです。戦後改草を担った人たちは真の「愛国者」だと思っています。

「敗戦後遺症」という形でわれわれの先輩をとらえていいのでしょうか。

教育基本法は占領軍の押し付けでつくられたのではないのです。先人たちが過去の反省を踏まえて、新しい人間をつくり、その人間を軸に新しい国をつくろうとした。その際中心になるのが一人ひとりの人間の尊厳です。真理と平和を希求する人聞です。その人間をつくることが教育基本法の精神です。それが新しい世界を開いていく。けっして一国の平和主義じゃないのです。日本の平和主義を世界に広げて、いくという使命の自覚を通して、憲法をつくり教育基本法をつくったのです。
私は、教育基本法憲法の精神を本当に現実に生かす。それは条文を守るということではなくて、その精神をどういうふうに具体的に自分たち
のものにしていくのか、現場でそれを発展させることができるのか、一人ひとりの未来を担つ子どもたちにその精神をどういうふうに生かしていけばいいのかという方向で教育を考えてきた一人です。

教育というのは、さまざまな人がさまぎまな議論をするのが大事であって、それを法律で縛り、一つの方向付けを国がやるのは越権行為であると
思います。
では、なぜ教育墓本法で教育目約を定めたのか、、それは戦前の教育のあり方というものが、教育勅語を軸にした超国家主義軍国主義に支配さ
れた教育であった。それをどう克服するかという現実の課題の中で、教育目的についても規定せざるを得なかったのです。

今回の「改正」は、まさに国が口出しをする方向で書かれています。

その最たるものが「改正」案で二条(教育の目標)を新設したことです。さらに10条(教育行政)
を大きく変えて教育は法律に従うものだという書き方をしています。教育と教育行政の区別という観点が全くなくなったのが、今度の「改正」案です。このことでは政府案と同じように民主党案も問題をもっています。
 
 法と教育の関係は非常に大事です。何でも法で決めれぱいいということではなく、法で縛れば現場がどうなるかを考えていただきたい。