東日本大震災  12年目に寄せて

東日本大震災12年目    

12年目となる3・11を迎えて

昨年秋に全教の被災地の旅を経験した一人として、

福島を思う

                        

楢葉町宝鏡寺の早川ご住職の逝去を悼んで  

 昨年末に福島県双葉郡楢葉町宝鏡寺ご住職早川篤雄さんがお亡くなりになりまし

た。

私は、9月に全教の青年教師達と一緒にお寺を訪ね直接お話を伺いました。

お目当ての「愛吉・すずのばら」に出会い、上野東照宮境内で30年間灯され続けてき

た「非核の火」が、「ヒロシマナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言の灯」として生まれ

変わったものも見ました。

 早川さんは、東電のデータ捏造や改竄・事故隠しの体質を見抜き、ずっと原発反対の

運動をされ地裁→高裁→最高裁と裁判でも闘ってこられました。全て棄却され、お金が

なくて弁護士さんに交通費も払えないと謝った時に、その方が「裁判なんて子孫へのメ

ッセージだと思えばいいんですよ」と言われ、やはり声をあげ行動するしかないと決意

され活動を続け、3.11で自らも被災した賠償金を元に境内に「伝言館」を設立され

たのです。

 私が不愉快に感じたのは、1978年の科学技術庁のポスターで「エネルギー・アレ

ルギー」とキャッチコピーのあるビキニ姿の女性が大写しになっているものです。「原

子力は既に身近に使われています」の文字もあり、国民をバカにするのも程があると思

いました。

 早川さんは亡くなってしまいましたが、子孫に伝えようとした多くの資料が残されて

います。私も、直接お話を伺った一人として、反原発・全世界で核戦争をしてはならな

い!の思いを若い世代に引き継いで語り伝えていきます。

    

9月に全教の青年教師達と一緒に学んだこと

 22年9月23日(金)いわき産業創造館で3時間の学習。

 一人目の講師は三浦さんで野馬土(南相馬市から避難し浜通り農民連としてNPO

を立ち上げた方の話。

 二人目は前浪江町立なみえ創成中教師だった柴田さんのお話。震災後の児童生徒数が

激減し、学校が統廃合されることを語られました。

「ふたばの教育」という双葉郡8町村の各学校の取り組みや子ども達の様子を伝えるき

れいな広報誌(22年春号)もいただきました。少人数できめ細やかな実践を重ねてき

たと思われる学校のうちの数校で、「最後の1年」という言葉が目立ちました。学校が

なくなったら地域はどうなるでしょうか。

 

 翌24日は、いわき駅出発→Jビレッジ(車窓)→宝鏡寺→二葉駅(車窓)→伝承館→

震災遺構の請戸小学校→いわき駅 という行程でした。

 私は宝鏡寺に行って、伝言館や静岡からここに送った「愛吉・すずのばら」を見

る事と早川篤ご住職のお話を聞く事を楽しみにしていました。

 

 早川ご住職のお話は、立命館大学の名誉教授の安斎さんと共に原発の恐ろしさをずっ

と訴えて来たのに、3.11の大震災で恐れていたことが現実のものになってしまった

という悔恨の思いのお話。

 ご自身も由緒あるお寺を残して避難生活を送らねばならなくなり、その賠償金を元に

伝言館を建て、学習会ができるようにとお話を聞いた建物として未来館も建てられたの

です。

 早川さんが最も参加者に伝えたかったのは、東電はずっと住民をだましてきたという

事でした。だから、その嘘を見抜けるだけの学習をしていかねばならないとも語ってく

ださいました。

 伝承館の中には、第五福竜丸事件の資料もありました。それは、まさに「ヒロシマ

ナガサキ・ビキニ・フクシマ」では核の被害を受け、それによって苦しむ人々がいるこ

とを忘れてはならないという決意がこめられていました。

 伝言館には、1978年の科学技術庁のポスターもありました。それは、「エネルギ

ー・アレルギー」とキャッチコピーがあり、裸の女性が胸を押さえているグラビアでし

た。あたかも知性ある文明人ならば、このように意味なく怖がらなくてもいいんだと思

わせるポスターとなっていて、嫌悪感を抱かせるポスターでした。

 本堂前の庭の碑には「原発は本性を剥き出し ふるさとの過去・現在・未来を奪った

 人々に伝えたい 不条理に立ち向かう勇気を」と刻まれています。

 石柱の中の灯は、広島・長崎の原爆から取り保存し、ずっと上野の寛永寺で灯ってい

た「非核の火」を、この宝鏡寺に移して「ヒロシマナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言

の灯」として生まれかわったもので、ずっと灯され続けています。

 今年も3月11日が巡ってきました。あの大惨事からもう12年が過ぎましたが、故

郷に帰りたくても帰る事が出来ない方々や、生活が一変してしまった方々の苦しみはず

っと続いています。分断も進んで精神的な苦しみや経済的な苦しさに加害者である東京

電力や国は向き合って来ませんでした。テレビでは特別番組も放映されていますが、一過性ではだめです。

 (静岡でも)毎週金曜日には原発なくそう市民アクションが継続して行われています。

 早川ご住職は昨年の暮れにお亡くなりになりましたが、若い世代に思いや希望を託され

ました。受け止めた一員でありたいと思います。