2018年人事院勧告について(全教声明)

2018年8月10日
全日本教職員組合 中央執行委員会


1.人事院は本日 、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。


 その構成は「職員の給与に関する報告」および「勧告」、「公務員人事管理に関する報告」、「定年を段階的に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」(以下「意見の申出」)からなっています。


人事院は今年4 月における官民較差について、国家公務員給与が民間給与を「平均655円、0.16%」下回っていたとしています。そして、民間賃金調査結果にもとづき、行政職給料表(一)を改定して初任給を1500円、若年層で1000円程度、その他については400円を基本としたベースアップ、一時金については0.05月引き上げ4.45月としたうえで、引き上げ分をすべて勤勉手当に充当するとしました。再任用職員の基本給及び勤勉手当についても改定を行うとしました。また、2019年度以降は6月期と12月期の期末手当の支給月数を均等になるよう配分するとしています。さらに、その他の手当関係では、宿日直手当を引き上げ改定すること、住居手当については、昨年度に引き続き「必要な検討」を行うとしています。


3.本年3月31日をもって国家公務員の「給与制度の総合的見直し」が完了したことに伴い現給保障が廃止され、高齢層を中心に最高で1万円を超える賃下げが起きています。
 人事院が月例給および一時金を5年連続で引き上げる勧告を行ったことは、この間の春闘における官民共同のとりくみの前進、すべての労働者の大幅賃上げで貧困と格差を解消し日本経済の回復を求めてとりくんできたわたしたちのたたかいを反映した側面を持っているとはいえ、本年の人事院勧告における給与の引き上げ幅は超低額であり、一時金の引き上げを含めても公務労働者の生活改善には程遠いものです。また一時金の引き上げがこの間すべて勤勉手当に充てられていることは、「勤務実績に応じた給与を推進するため」と報告でも述べているように、政府・人事院成果主義を拡大・強化していることの証左でもあります。
 わたしたちが一貫して強く公務職場における臨時・非常勤職員の待遇改善を求めてきたことを反映し、人事院は「いわゆる結婚休暇を設けるなど慶弔に係る休暇について所要の措置を講ずる」としました。均等待遇にはまだまだ程遠いものですが、粘り強く要求運動を続けてきた成果であり、さらなる前進のために人事院が労働基本権制約の代償機関としての役割を果たすよう強く求めるものです。


4.人事院は本年2月に政府が閣議決定した「定年引き上げに係る論点整理」について賃金と分限に係る検討要請を受けて、「意見の申出」を人事院勧告と同時に示しました。
(1)定年を段階的に引き上げ、最終的に65 歳とする
(2)60歳を超える職員の年間給与を60歳前の7割の水準に設定することが適当
(3)勤務成績が特に良好である場合を除き、昇給しないこととする
(4)「職員の在職期間を通じて能力・実績に基づく人事管理を徹底」「降任や免職等の分限処分適時厳正に行われるよう、人事評価の適正な運用の徹底」、
など公務労働者の生活と働く権利を保障し、国民のための教育や公務・公共サービスを充実させようとする姿勢は一切見られません。「高齢層職員を戦力としてその能力及び経験を本格的に活用する」ために定年を65歳に引き上ようとするなら、「同一労働同一賃金」の原則等をふまえた賃金・労働条件に係る制度設計を示すべきです。


5.「公務員人事管理に関する報告」では、国民の信頼回復に「全力を挙げる必要」として「個々の職員の意識と矜持」の重要性が強調されています。そのうえで「研修等を通じた倫理感・使命感のかん養」「セクシュアル・ハラスメント防止対策」「公文書の不適正な取扱いに対する懲戒処分の明確化」について言及しています。しかし、森友・加計問題をはじめ国政を私物化するなど、国民の信頼を裏切る行為を行っているのは安倍首相を頂点とした財務省などの一部の高級官僚であり、大多数の公務労働者ではありません。
また報告では「働き方改革」一括法の強行成立に伴う国家公務員の超過勤務の縮減の取り組みとして、超過勤務命令の上限設定、職員の健康確保措置の強化、「一の年の年次休暇の日数が10日以上の職員が当該年において年次休暇を5日以上確実に使用することができるよう配慮」などが述べられています。超過勤務命令の上限設定にあたっては、定員増によって超過勤務を縮減し、公務労働者のいのちと健康を守ることを前提とすべきです。また、年休権は個々の公務労働者の権利であり、その行使については何よりも労働者の意向が最大限尊重されなければなりません。


6.全教は安倍9条改憲を許さないたたかいを軸に長時間過密労働解消をめざし高度プロフェッショナル法案など「働き方改革」一括法案の成立阻止、「すべての労働者の賃上げで景気回復と地域経済の復活を」を求めるとともに、全国一律最低賃金制の確立と今すぐ、どこでも最低賃金1000円以上への引き上げることなどの課題を結合して夏季闘争をたたかいました。具体的には18春闘期におけるストライキや統一行動への支援、公文書改竄、隠蔽、捏造などを繰り返す安倍政権の退陣を求める諸行動への結集、公務員賃金との関連を明確にした官民共同の最低賃金闘争のとりくみをすすめました。さらに、公務労組連絡会全労連公務部会が提起する人事院に向けた公務労働者の賃金改善署名では全教・教組共闘連絡会は3万9777筆(公務労組連絡会全体では11万5542筆)を集約しました。7月25 日に行われた夏季闘争における最大規模の中央行動では、憲法改悪阻止の課題を軸に長時間労働の解消、最低賃金引き上げや「えがお署名」提出行動と一体的に全国から約300名の参加で成功させました。


7.教職員給与を含め地方確定闘争では、教職員をはじめすべての公務労働者の生活改善につながる賃金引上げ、すべての世代における賃金底上げ、会計年度任用職員の導入を含む臨時教職員の待遇改善を基本要求にかかげ、要求の前進をかちとることが重要な課題となります。また定年引き上げや「働き方改革」一括法の成立にともなう地方における具体化への対応も求められることになります。さらに現給保障の廃止による賃下げを補完する措置を当局に迫る課題も重要です。


 全教は、子どもたちの教育に教職員が力を合わせて、生活の不安なしに専念できる教職員の待遇改善を文科省と地方教育委員会にあらためて求めるものです。同時に、安倍9条改憲を許さず、憲法改悪と一体の安倍「教育再生」反対、教職員の長時間過密労働の解消、地域格差拡大反対、成績主義賃金の拡大を許さないたたかいに引き続き全力をあげる決意です。
                            以上

http://www.jinji.go.jp/kankoku/h30/h30_top.htm