全国学テに関わって、その順位などがマスコミをにぎわしました。
 県教委や市町教委、管理職なども振り回されています。
 でも、もともとの学習指導要領の問題に目が行っていないように思います。
 教科書や授業のもとになる学習指導要領の問題が論議されなければ、いつまでたっても、
子どもや保護者、教職員は振り回されるだけです。
 以下、長文が2つですが、是非読んでおいてください。
1.全教談話 「次期学習指導要領の改訂に向けた中教審での審議入りにあたって」


2.文科相中教審への諮問 「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」


【全教談話】

次期学習指導要領の改訂に向けた中教審での審議入りにあたって

2014年12月16日
全日本教職員組合(全教)書記長 今谷賢二
 12月4日、下村文科大臣が11月20日に中央教育審議会(以下、中教審)に諮問した「初等中等
教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」を受け、中教審初等中等教育分科会教育課
程部会において、次期学習指導要領の全面改訂をめざして審議がはじまりました。
 今回の諮問は、10年ごとの改訂期にあたって、学習指導要領の全面的な改訂を行おうとするもので
あり、改悪教育基本法とその具体的方策としての教育振興基本計画を教育課程等に具体化するものです。
 その根底にすえたのは、今の子どもたちが成人する頃には「生産年齢人口の減少、グローバル化の進展
や絶え間ない技術革新」などによって、子どもたちの職業の在り方が様変わりしていること、こうした
「変化を乗り越え、伝統や文化に立脚し、高い志や意欲を持つ自立した人間」が求められるとの認識で
す。こうした認識に立って、教育課程について「新たな在り方を構築していく」とし、(1)これからの時
代に必要な「資質・能力」、それらを育むための指導方法や評価の在り方、(2)育成すべき「資質・能力」
を育むための教科・科目等の目標や内容の見直し、(3)そうした学習指導要領の理念を実現するためのカ
リキュラムマネジメントや指導方法や評価方法の「改善を支援する方策」などについての審議を求めて
います。
 とりわけ、育成すべき「資質・能力」にかかわって「特に」検討する事項のなかで、英語教育と高校
における教育課程について踏み込んだものとなっています。
 英語教育については、「外国語で躊躇せず意見を述べ他者と交流していく」として、小学校の中学年
から英語活動、高学年で教科とすること、中学校で授業を英語で行うこと、高校で「発表・討論・交渉
などを行う能力を高める」ことなど、学校段階での目標を例示しています。
 高校教育については、「国民投票投票権年齢が満18歳以上となる」などを踏まえて、「国家及び社
会の責任ある形成者となるための教養と行動規範や、主体的に社会に参画し自立して社会生活を営むた
めに必要な力を実践的に身に付けるための新たな科目等の在り方」、「日本史の必修化の扱い」、「総合的
な学習の時間」の「改善」などを例示しています。
 こうした一方で、日本の子どもたちの「自己肯定観や学習意欲、社会参画の意識等が国際的に見て低
い」ことを課題としていますが、国連子どもの権利委員会からの再三にわたる勧告で指摘されている「高
度に競争主義的な教育環境」の問題には一言も触れていません。また、PISA 調査をめぐって世界中の
教育学者から指摘されている「学力テスト」の在り方やその問題点にかかわる懸念も一顧だにしないも
のです。
 このように、今回の諮問は、教育の目的を人格の完成や平和で民主的な社会の形成者におくのではな
く、財界や時の為政者が考える人材育成を求めるものとなっており、憲法にも教育の条理にも反するも
ので、諮問の内容そのものが問題です。
 また、指導方法や評価の在り方、その方法まで踏み込んでの答申を求めていることは、学習指導要領
によって教育内容のみならず、教育活動全体を統制しようとするものとなっており問題です。全国一斉
学力テストによって、指導方法や指導内容の画一化や押しつけが強まっていますが、そうした実態を学
校教育全体に押し広げ、教育への国家統制を強化しようとするものです。
 そのことは、諮問の標題そのものが「初等中等教育における教育課程の基準等」となっていることに
も表れています。これまで学習指導要領は、戦後「試案」とついていたものを1950年代後半に官報
告示によって「法的拘束力がある」と改悪されたものの「大綱的基準」とされ、子どもたちの実態に合
わせて学校で教育課程を編成するものとし、教材の選択や指導方法については現場の裁量が幅広く認め
られてきました。戦後、自民党政権の下で、こうした裁量の幅を狭め、国や行政による統制を強化して
きましたが、前回の改訂においても「基準性」として、「大綱的基準」とする見地を堅持していました。
しかし、今回の諮問では明確に基準としてその拘束力を強化しようとするもので、重大な問題です。
 旭川学テ訴訟の最高裁判決は、教育は「専ら子どもの利益のために行われるべきもの」であり、教育
内容に対する「国家的介入についてはできるだけ抑制的であること」とし、国の行政権力が教育内容や
方法をすべて決定し、現場に押しつけることを否定しています。また、現憲法下では教育に関して地方
自治の原則が採用されているとし、「(地教委の)権限にたいする国の行政機関である文部大臣の介入、
監督の権限に一定の制約が存する」ことにも言及しています。今回の諮問は、この最高裁の判決にも背
くものです。
 今後、文科省は2020年度からの小学校での全面実施を想定し、2018年度内の答申と学習指導
要領の改訂をめざして、中教審での審議をすすめる構えです。
 全教は、中教審での議論を注視するとともに、今回の諮問とそれにもとづく学習指導要領の改訂の問題点を明らかにし、学校現場において憲法子どもの権利条約、教育の条理に裏打ちされた子どもたちの実態から出発する教育課程編成が尊重されるよう奮闘するものです。そのため、全国の学校現場で子どもの実態からはじまる教育課程づくりを参加と共同の学校づくりに位置づけ、とりくみを強化することをよびかけるものです。

                                             以上

初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)

26文科初第852号
平成26年11月20日
中央教育審議会
次に掲げる事項について,別添理由を添えて諮問します。
初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について
                                     文部科学大臣  下村博文
(理由)
 今の子供たちやこれから誕生する子供たちが,成人して社会で活躍する頃には,我が国は,厳しい挑戦の時代を迎えていると予想されます。生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく変化し,子供たちが就くことになる職業の在り方についても,現在とは様変わりすることになるだろうと指摘されています。また,成熟社会を迎えた我が国が,個人と社会の豊かさを追求していくためには,一人一人の多様性を原動力とし,新たな価値を生み出していくことが必要となります。
 我が国の将来を担う子供たちには,こうした変化を乗り越え,伝統や文化に立脚し,高い志や意欲を持つ自立した人間として,他者と協働しながら価値の創造に挑み,未来を切り開いていく力を身に付けることが求められます。
 そのためには,教育の在り方も一層の進化を遂げなければなりません。個々人の潜在的な力を最大限に引き出すことにより,一人一人が互いを認め合い,尊重し合いながら自己実現を図り,幸福な人生を送れるようにするとともに,より良い社会を築いていくことができるよう,初等中等教育における教育課程についても新たな在り方を構築していくことが必要です。
 幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の教育課程の基準となる学習指導要領等については,これまでも,時代の変化や子供たちの実態,社会の要請等を踏まえ,数次にわたり改訂されてきました。平成二十年及び平成二十一年に行われた前回の改訂では,教育基本法の改正により明確になった教育の理念を踏まえ,子供たちの「生きる力」の育成をより一層重視する観点から見直しが行われました。特に学力については,学校教育法第三十条第二項に示された「基礎的な知識及び技能」,「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力」及び「主体的に学習に取り組む態度」の,いわゆる学力の三要素から構成される「確かな学力」をバランス良く育てることを目指し,教育目標や内容が見直されるとともに,学級やグループで話し合い発表し合うなどの言語活動や,各教科等における探究的な学習活動等を重視することとされたところです。
 これを踏まえて各学校では真摯な取組が重ねられており,その成果の一端は,近年改善傾向にある国内外の学力調査の結果にも表れていると考えられます。
 その一方で,我が国の子供たちについては,判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることについて課題が指摘されることや,自己肯定感や学習意欲,社会参画の意識等が国際的に見て低いことなど,子供の自信を育み能力を引き出すことは必ずしも十分にできておらず,教育基本法の理念が十分に実現しているとは言い難い状況です。また,成熟社会において新たな価値を創造していくためには,一人一人が互いの異なる背景を尊重し,それぞれが多様な経験を重ねながら,様々な得意分野の能力を伸ばしていくことが,これまで以上に強く求められます。
 こうした状況も踏まえながら,今後,一人一人の可能性をより一層伸ばし,新しい時代を生きる上で必要な資質・能力を確実に育んでいくことを目指し,未来に向けて学習指導要領等の改善を図る必要があります。
 新しい時代に必要となる資質・能力の育成に関連して,これまでも,例えば,OECDが提唱するキー・コンピテンシーの育成に関する取組や,論理的思考力や表現力,探究心等を備えた人間育成を目指す国際バカロレアのカリキュラム,ユネスコが提唱する持続可能な開発のための教育(ESD)などの取組が実施されています。さらに,未曾有(みぞう)の大災害となった東日本大震災における困難を克服する中で,様々な現実的課題と関わりながら,被災地の復興と安全で安心な地域づくりを図るとともに,日本の未来を考えていこうとする新しい教育の取組も芽生えています。
 これらの取組に共通しているのは,ある事柄に関する知識の伝達だけに偏らず,学ぶことと社会とのつながりをより意識した教育を行い,子供たちがそうした教育のプロセスを通じて,基礎的な知識・技能を習得するとともに,実社会や実生活の中でそれらを活用しながら,自ら課題を発見し,その解決に向けて主体的・協働的に探究し,学びの成果等を表現し,更に実践に生かしていけるようにすることが重要であるという視点です。
 そのために必要な力を子供たちに育むためには,「何を教えるか」という知識の質や量の改善はもちろんのこと,「どのように学ぶか」という,学びの質や深まりを重視することが必要であり,課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や,そのための指導の方法等を充実させていく必要があります。こうした学習・指導方法は,知識・技能を定着させる上でも,また,子供たちの学習意欲を高める上でも効果的であることが,これまでの実践の成果から指摘されています。
 また,こうした学習・指導方法の改革と併せて,学びの成果として「どのような力が身に付いたか」に関する学習評価の在り方についても,同様の視点から改善を図る必要があると考えられます。
 以上のような問題意識の下,今般,新しい時代にふさわしい学習指導要領等の在り方について諮問を行うものであります。
 具体的には,以下の点を中心に御審議をお願いいたします。
 第一に,教育目標・内容と学習・指導方法,学習評価の在り方を一体として捉えた,新しい時代にふさわしい学習指導要領等の基本的な考え方についてであります。
 これからの学習指導要領等については,必要な教育内容を系統的に示すのみならず,育成すべき資質・能力を子供たちに確実に育む観点から,そのために必要な学習・指導方法や,学習の成果を検証し指導改善を図るための学習評価を充実させていく観点が必要であると考えられます。このように,教育内容,学習・指導方法と学習評価の充実を一体的に進めていくために求められる学習指導要領等の在り方について,御検討をお願いします。
 その際,特に以下のような視点から,御検討をお願いします。
○ これからの時代を,自立した人間として多様な他者と協働しながら創造的に生きていくために必要な資質・能力をどのように捉えるか。その際,我が国の子供たちにとって今後特に重要と考えられる,何事にも主体的に取り組もうとする意欲や多様性を尊重する態度,他者と協働するためのリーダーシップやチームワーク,コミュニケーションの能力,さらには,豊かな感性や優しさ,思いやりなどの豊かな人間性の育成との関係をどのように考えるか。また,それらの育成すべき資質・能力と,各教科等の役割や相互の関係はどのように構造化されるべきか。
○ 育成すべき資質・能力を確実に育むための学習・指導方法はどうあるべきか。その際,特に,現行学習指導要領で示されている言語活動や探究的な学習活動,社会とのつながりをより意識した体験的な活動等の成果や,ICTを活用した指導の現状等を踏まえつつ,今後の「アクティブ・ラーニング」の具体的な在り方についてどのように考えるか。また,そうした学びを充実させていくため,学習指導要領等において学習・指導方法をどのように教育内容と関連付けて示していくべきか。
○ 育成すべき資質・能力を子供たちに確実に育む観点から,学習評価の在り方についてどのような改善が必要か。その際,特に,「アクティブ・ラーニング」等のプロセスを通じて表れる子供たちの学習成果をどのような方法で把握し,評価していくことができるか。
 第二に,育成すべき資質・能力を踏まえた,新たな教科・科目等の在り方や,既存の教科・科目等の目標・内容の見直しについてであります。中でも特に以下の事項について,御検討をお願いします。
○ グローバル化する社会の中で,言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくことができるよう,外国語で躊躇(ちゅうちょ)せず意見を述べ他者と交流していくために必要な力や,我が国の伝統文化に関する深い理解,他文化への理解等をどのように育んでいくべきか。
   特に,国際共通語である英語の能力について,文部科学省が設置した「英語教育の在り方に関する有識者会議」の報告書においてまとめられた提言も踏まえつつ,例えば以下のような点についてどのように考えるべきか。
・小学校から高等学校までを通じて達成を目指すべき教育目標を,「英語を使って何ができるようになるか」という観点から,四技能に係る一貫した具体的な指標の形式で示すこと
・小学校では,中学年から外国語活動を開始し音声に慣れ親しませるとともに,高学年では,学習の系統性を持たせる観点から教科として行い,身近で簡単なことについて互いの考えや気持ちを伝え合う能力を養うこと
・中学校では,授業は英語で行うことを基本とし,身近な話題について互いの考えや気持ちを伝え合う能力を高めること
・高等学校では,幅広い話題について発表・討論・交渉などを行う能力を高めること
 ○ 高等学校教育について,中央教育審議会における高大接続改革に関する議論や,これまでの関連する答申等も踏まえつつ,例えば以下のような課題についてどのように改善を図るべきか。
・今後,国民投票投票権年齢が満18歳以上となることや,選挙権年齢についても同様の引下げが検討されるなど,満18歳をもって「大人」として扱おうとする議論がなされていることも踏まえ,国家及び社会の責任ある形成者となるための教養と行動規範や,主体的に社会に参画し自立して社会生活を営むために必要な力を,実践的に身に付けるための新たな科目等の在り方
・日本史の必修化の扱いなど地理歴史科の見直しの在り方
・より高度な思考力・判断力・表現力等を育成するための新たな教科・科目の在り方
・より探究的な学習活動を重視する視点からの「総合的な学習の時間」の改善の在り方
・社会的要請を踏まえた専門学科のカリキュラムの在り方など,職業教育の充実の在り方
・義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るための教科・科目等の在り方
○ 子供の発達の早期化をめぐる現象や指摘及び幼児教育の特性等を踏まえ,幼児教育と小学校教育をより円滑に接続させていくためには,どのような見直しが必要か。
 ○ 子供の体力等の現状を踏まえつつ,2020年の東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会開催を契機に,子供たちの運動・スポーツに対する関心や意欲の向上を図るとともに,体育・健康に関する指導を充実させ,運動する習慣を身に付け,健康を増進し,豊かな生活を送るための基礎を培うためには,どのような見直しが必要か。
 ○ 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ,全ての学校において,発達障害を含めた障害のある子供たちに対する特別支援教育を着実に進めていくためには,どのような見直しが必要か。
   その際,特別支援学校については,小・中・高等学校等に準じた改善を図るとともに,自立と社会参加を一層推進する観点から,自立活動の充実や知的障害のある児童生徒のための各教科の改善などについて,どのように考えるべきか。
 ○ 社会の要請等を踏まえ,教科等を横断した幅広い視点からの取組が求められる様々な分野の教育の充実のための方策について,関係する会議等におけるこれまでの議論の状況等を踏まえつつ,どのように考えるべきか。
○ 各教科等の教育目標や内容を,初等中等教育を通じて一貫した観点からより効果的に示すためにどのような方策が考えられるか。また,学年間や学校種間の教育課程の接続の改善を図ることについて,現在中央教育審議会で御議論いただいている小中一貫教育に関する検討状況も踏まえつつ,どのように考えるべきか。

 第三に,学習指導要領等の理念を実現するための,各学校におけるカリキュラム・マネジメントや,学習・指導方法及び評価方法の改善を支援する方策についてであります。特に以下のような視点から,御検討をお願いします。
○ 学習指導要領等に基づき,各学校において育成すべき資質・能力を踏まえた教育課程を編成していく上で,どのような取組が求められるか。また,各学校における教育課程の編成,実施,評価,改善の一連のカリキュラム・マネジメントを普及させていくためには,どのような支援が必要か。
○ 「アクティブ・ラーニング」などの新たな学習・指導方法や,このような新しい学びに対応した教材や評価手法の今後の在り方についてどのように考えるか。また,そうした教材や評価手法の更なる開発や普及を図るために,どのような支援が必要か。

 以上が中心的に御審議をお願いしたい事項でありますが,審議に当たっては,学校と家庭や地域の連携強化の在り方など学習指導要領等の改善に関連する事項にも御留意の上,新しい時代にふさわしい学習指導要領等の在り方に関し,必要な事項について御検討をお願いします。