浜松市教育委員会から「学校運営の見直し、改善と児童生徒と向き合う時間の確保について」が出されました。


 2011年2月、浜松市教育委員会は「「学校運営の見直し、改善と児童生徒と向き合う時間の確保について」を教育長名で出しました。これは、組合が以前から要求してきた業務改善の進め方を体系的に示したもので評価できるものです。
 各職場で業務改善の指針として積極的に活用されるよう期待します。

注;カテゴリーの『多忙の解消のために』の中に、静岡県教委が2009年3月19日に発出した『学校運営の見直し、改善』通知が載っています。それとあわせてご覧ください。

「学校運営の見直し、改善と児童生徒と向き合う時間の確保について」

浜松市教育委員会教育長

1 趣旨
 学校運営等業務の見直し、改善を行うことにより、市民に対する教育サービスの質的な面の確保に考慮しつつ、業務をスリム化して、教職員の児童生徒と向き合う時間を確保し、また、教職員が意欲をもって業務に取り組める職場環境を整えるなど、教育活動をより円滑に推進し、学校教育の一層の充実を図る。


2 見直し、改善の方針及び推進手順等
(1)教育委員会は、自らが業務を見直し、改善に取り組む。


(2)教育委員会は、「学校運営見直し・改善委員会(仮称)」を設置し、見直し、改善の状況を把握するとともに、各学校からの要望等を検証し、関係機関等と協力して改善を図る。

(例)・『やめる』『減らす』『見直す』を合い言葉に、行政自ら改善に取り組むとともに、学校、関係機関の業務改善を推進、指導する。

(例)・教育委員会課長会議(毎月実施)等の機会を活用して「学校運営見直し・改善委員会(仮称)」を開催し、教職員の勤務状況等に対する学校や職員団体等からの要望、各課に係る課題等を出し合い、協議する。
・協議の上、改善可能な事項については、速やかに関係機関との確認・検討等を行った上で実行する。


(3)各学校にあっては、校長のリーダーシップにより、全教職員の参画の下、教育活動にかかわる全ての業務を見直し、改善に取り組む。


(4)見直し、改善に当たっては、次の項目を基本に据え、必要のない業務は廃止し、また、業務の焦点化を図るなど積極的に検証を行い、改善に取り組む。

ア 全ての業務の必要性と効果・効率などについて見直しを行い、業務の質と量、優先順位等を考慮して統合、縮小、廃止等を行う。

イ 各業務の改廃については、学校評議員会やPTA等の意見も参考にするとともに、十分な説明を行う。

ウ 見直しに当たっては、小中一貫や中学校区及び地区単位での工夫等、広大な市域を持つ政令指定都市であることを念頭において検討を行う。
 地区等広域での見直し、改善案については、関係機関が互いに情報を共有し、協力する。



3具体的方策

(1)教育委員会における見直し、改善
ア 主催事業の厳選や会議・会合、参加人数の見直しなどを行い、学校の負担を軽減する。各学校一人の参加を義務づけている各種研修会、講習会等の事業については、その必要性も含めて重点的に見直すとともに、教職員が専門職としての資質の向上のため必要な研修については、質的な充実に努める。
(例)山間部等地区の代表が参加し、事後に地区内で伝達できるような出張については、参加人数を縮減する。


教育委員会の判断により処理する事務と学校の判断により処理する事務との区分について見直しを行い、学校の裁量を拡大する方向で学校管理規則等の改正を行う。
(例)表簿として備付けが規定されている学校経営書や学校要覧については、保護者、市民への説明や紹介に資することを念頭に、掲載内容を必要最小限にとどめ、ページを削減する方向で見直すよう指導する。
(例)校長先決事項である承認手続きは、できる限り用紙・手続きを一括する。


ウ 校務分掌組織、業務処理手順等、運営全般について見直しを行うよう指導するとともに、コンピュータによる情報管理、情報活用により、より効果的な学校運営の実現を支援する。


教育委員会の指定研究は、必要最小限にとどめるとともに、発表会の持ち方や研究報告書の簡素化について指導する。


オ 研修会や会議・会合等への参加に伴う事前及び事後のレポートは、原則として取りやめることとし、提出を求める場合は、必要最小限にとどめる。


力 各種の提出書類を見直し、様式の統一を進め、提出範囲、記載事項等を必要最小限にとどめる。
(例)事務処理要綱を策定し、事務の効率化を図るとともに、データベース等に混在している様式等を整理して検索しやすく改善する。(H23.1.1施行)


キ 指導主事等の学校訪問の際は、学校に求める学習指導案等の提出は、必要最小限とする。


ク 就学時健康診断などの業務について、学校の果たすべき役割を明確にし、学校の負担を軽減する方向で検討する。
(例)就学児童の情報等、情報の安全管理徹底の下、共有化を図る。


ケ 国、県、市長部局、教育研究団体、教育関係団体等が行う研究指定、調査研究、研修、作品募集等の事業や行事への参加要請については、学校の負担を軽減する方向で主催者と調整する。

(ア)市長部局への依頼事項
a 児童生徒及び教職員を対象とする各種の会議・会合、諸行事、コンクール等の募集、審査及びその表彰式等については、極力削減し、授業に影響を及ぼさないように配慮するとともに、学校を通しての募集を安易に行わないようにして、教職員、児童生徒の負担を軽減する。
 また、調査依頼や資料作成委員等の委嘱についても、極力見直しを行い、学校の負担を軽減する。特に、各種の委員については、教職員を退職した方に依頼するなどして、現職教職員の委嘱は最小限とする。


b 各種の会合、諸行事、コンクールの募集とその表彰式を開催する場合や、調査委員依頼、資料作成委員等の委嘱をする場合は、次の点に配慮する。

(a)事前協議
 学校及び学校の教職員に協力を求めたい場合は、教育委員会と事前に協議する。

(b)授業への影響
 会議・会合等の開催は、可能な限り授業終了後(15時以降)とする。

(c)平日開催
 児童生徒や教職員の休みや休養を確保するため、週休日及び休日の会議・会合は行わない。

(d)拘束時間、旅費
 全市から児童生徒や教職員の出席を求める場合は、特別の場合を除いて、地区ごとに開催するなど、出席に要する時間の短縮を図る。
 なお、旅費や交通費については、主催者負担とする。

(e)表彰場所
 児童生徒に対するコンクールなどの表彰は、主催者が学校に出向いて行うか、校長に伝達を依頼するなど、できる限り学校内で実施する。


c 学校開放、地域スポーツ利用、放課後児童会、健全育成会等の社会教育事業における教職員の役割を明確にし、過度の負担とならないように配慮する。
(イ)教育研究団体、教育関係団体(部活動関係団体については別記)への依頼事項
 学校にかかわる教育諸団体の活動は、教職員の研修機会や勤務条件を改善する方向で運営が図られており、本通知の趣旨と相反するものではないが、教育委員会との協議の機会を捉えて以下の観点での主体的な見直しを依頼する。

a 組織
 教職員数の減少などを踏まえ、校種、地域の実情を十分把握の上、整理統合を検討する。

b 総会、研究大会、研修部会等
(a)会議・会合及び研修・研究大会等の整理、統合等
 研究会や役員会及び研究部会等の諸会合や大会等を整理統合するとともに、資料配付での会合の省略、電話やファクシミリテレビ会議システム等の活用等により回数を削減するなど、より一層の厳選を図る。

c 学校への依頼事項の厳選
(a)教職員への依頼
 役員の委嘱、調査依頼、副読本等の資料作成委員の委嘱などについては、極力見直しを行い、教職員を退職した方に依頼するなどし、現職教職員の負担を軽減する。

(b)配布・取りまとめ等の依頼
 児童生徒へのチラシの配布、注文の取りまとめ等については、極力学校に負担をかけないように留意する。

(c)取りまとめの依頼
 大学の同窓会等の私的な事項については、学校にとりまとめを依頼しないで、それぞれの組織で対応する。


(ウ)小体連、中休連及び小文連、中文連等、部活動関係団体への依頼事項
 小・中学校における部活動は、児童生徒や保護者の要請が強く、児童生徒の健全育成と生徒指導、あるいは学校運営上の効果が大きいため、積極的な取り組みが求められている。
 しかし、教職員の時間外勤務状況の課題において部活動指導に係る時間が大きく影響していることや、長時間に及ぶ練習や指導の在り方等について課題もある。部活動については、メリハリのある活動となるよう改善、見直しに向け申し合わせ事項の再検討を依頼する。
a活動時間等
(a)児童生徒の健康安全と指導者の負担の軽減を踏まえた、平日における活動日と活動時間
(例)週に1日は部活動を行わない日を設ける。
  各季節に応じた終了時間の厳守

(b)児童生徒の健康安全と指導者の負担の軽減を踏まえた、週休日の活動
(例)週休日の活動は、半日を原則とする。

(c)長期休業の意義を踏まえた長期休業中における活動
(例)長期休業中においては、できる限り週休日の活動を計画しない。
  お盆期間を中心に、活動を行わない期間を設ける。


b 活動状況の確認
 上記活動時間等についての申し合わせ事項について、各校の実情について確認し、その遵守を図る。




(2)学校における見直し、改善

ア 校内・校外の諸会合の厳選

(ア)各種研究発表会
 教職員の負担が過重になること、児童生徒と向き合う時間が確保できないことがないように、研究発表会の持ち方や研究報告書の簡素化などに努める。

(イ)校内研修
 校内研修計画を立案するに当たって、実施回数、時間、作成資料等の見直しを行い、教職員の児童生徒と向き合う時間の確保に努める。

(ウ)校内各種会議・各種委員会
 職員会議、学年会、職員打ち合わせ等の各種会議、各種委員会等については会議目的を明確にし、会議内容の重複を避けるとともに、あいさつの省略、資料の事前配布並びに予定黒板、印刷物を利用した伝達などにより、会議回数、会議時間の削減に努める。
 また、会議への出席者についても見直しを行い、必要最小限にとどめる。

(エ)校外の研究会、研修会等への参加
 学校運営、教育活動との関連を考慮する中で、参加する範囲、参加人数の厳選を行うとともに、同一区内の学校等で行われる研究会への儀礼的な参加は原則として行わない。


イ 業務の廃止、簡素化
(ア)学校運営の焦点化
 学校経営目標、学校経営方針を見直し、学校運営の焦点化を図る。
(イ)重複業務の一元化
 同様の資料を複数の担当が作成するなど、作業の重複について検討し、重複がある場合には、事務処理の一元化を図る。
(ウ)事務処理の簡素化
 学校内のすべての業務を対象として、処理の簡素化についての検討を行う。規則等で認められているものについては、規則等の範囲内でこれを活用し、事務処理の簡素化を図る。
(エ)教職員間での情報の共有化
 職員会議の提案文書、行事等の実施要項、提出文書様式等を電子データで共同サーバー等において管理し、教職員が活用できるようにするなど、事務処理の効率化に努める。
(オ)職種間での業務再配分
 校長、教頭、主幹教諭、教諭、養護教諭栄養教諭、事務職員、栄養職員、給食員、用務員等の役割分担を明確にし、職種間で業務の再配分を行うことにより、事務処理の効率化を図る。
(カ)学校間での作業協力
 各学校でそれぞれ作成している各種資料のうち、複数の学校が協力して作成することにより効率化が期待できるものについては、共同作成する方向で検討する。


ウ メリハリのある部活動運営
(ア)活動時間
 部活動指導・運営においては、生徒の健康や成長、教職員の健康や教材研究の時間などを踏まえた上で、活動内容、活動時間、活動日数等を設定し、効率よく活動する。
 なお、その際に各地域や団体等の申し合わせ事項を遵守し、休日等に部活動の休止日を設定する。
(イ)指導者
 正顧問に、より負担がかかっている状況を踏まえ、副顧問の協力により正顧問の負担の軽減が図られるよう校内体制を整備する。
 地域の人材等外部指導者による指導を積極的に活用するなど、顧問の負担の軽減と指導の充実を図る。
(ウ)指導及び活動の充実
 地域や学校規模の事情等により、単独では部活動運営が困難な場合は、廃止等も考慮しつつ、複数校が集まった合同部活動を行うなどして、指導や活動の充実を図る。


エ 他機関、他団体に関するもの
(ア)各種コンクール等
 作文、標語、ポスター等の応募、各種コンクールへの参加等については、その教育的意義を十分に検討するとともに、日常の学習の成果とかかわらせるなど児童生徒への負担が過重にならないように厳選に努める。

(イ)行事・大会等への参加
 他機関、他団体等が主催する行事や各種大会等への参加要請については、児童生徒を中心に据えた教育的見地から検討し、極力厳選を図るとともに、参加する場合についても、児童生徒や教職員の負担とならないよう十分配慮する。

(ウ)研究・調査、資料作成委員の委嘱
 他機関、他団体からの研究指定、調査依頼、副読本等の資料作成委員の委嘱については、学校や地域の実態を踏まえ、教職員や児童生徒の負担が過重にならないよう十分検討し、学校側が主体となって対応できるようにする。


オ その他
(ア)上記アからエ以外の内容に加え、各学校において週に1日以上定時退勤日を設定するなどして、会議や部活動等の活動を短縮し、勤務時間外の業務縮減に努める。
(イ)教育課程の編成においては、定期学力調査や成績処理期間において、その処理のための短縮日課や部活動休止日を設け、処理の効率化と情報の安全管理を図る。
(ウ)会合を実施する際には、各学校の休憩時間を踏まえて、適切に休憩時間を確保する。
(エ)夏季休暇及び家族休暇については完全取得するとともに、年次有給休暇については、有効に活用する。管理職にあっては、休暇等が取得しやすい職場環境づくりに配慮する。