■(全教談話)

文部科学省による「新・教職員定数改善計画(案)」について

30年ぶりとなる改善、小・中学校での35人・30人学級を歓迎します。

引き続き、すべての校種への拡充と抜本的な定数改善を求めます。

                    2010年8 月31 日
  全日本教職員組合 教育文化局長 今谷 賢二

1.文部科学省は、8月27日、「新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画(案)」(以下、「義務制計画案)及び「新・公立高等学校等教職員定数改善計画(案)」(以下、「高校等計画案」を発表しました。
 義務制計画案では、2011年度からの6 年計画で、小・中学校のすべての学年を35人学級とするとともに、その後の2年間で小学校1・2年生の30人学級への改善を盛り込みました。
 また、義務制計画案には複式学級の学級編制の標準を現在の16人(1年生を含まない学年、1年生を含む学年及び中学校は8人)を14人(1年生を含む学年は6人)に改善するとともに、中学校では解消するとしています。
 これらが、実現すれば、1980年に40人学級への計画が決定されて以来30年ぶりの学級編制の標準の改善となります。学級編制を含む新しい定数改善計画の策定は、全国3000万署名から教育全国署名に発展してきた国民的運動の貴重な到達であり、心から歓迎します。

 しかし、両計画案では、特別支援学級、高校、特別支援学校等の学級編制については改善方向を示しませんでした。全教は、すべての校種・学年での30人学級実現、障害児教育の充実をめざす学級編制の改善と教職員定数の抜本的拡充をあらためて要求します。

2.教職員の配置改善計画は、義務制では2014年から始まる5年計画とされています。
 学校数や学級数に応じて教職員数を増加させる基礎定数の充実(24,800人)を中心に、生徒指導担当教員の配置改善(2,100人)、養護教諭栄養教諭の配置改善(1,600人、900人)、特別支援教育コーディネーターの配置改善(800人)や障害を持つ児童生徒を対象とした通級指導の充実(5,000人)などを内容としており、基本的には全教が提起した定数改善の方向を取り入れたものとなっています。
 しかし、計画のスタートは4年後とされ、当面の教育課題への対応とはなりません。
 高校等計画案では、2011年度から動き始めるものの、習熟度別少人数指導の充実(740人)・生徒指導担当教員の配置改善(1,030人)・特別支援コーディネーターの配置改善(490人)などわずか2,600人の改善にとどまる5年計画として発表されています。この改善分は5年間の生徒数の自然減を見込んだ
人数となっており、国民的な願いや教職員の切実な要求とかけ離れたものです。

3.義務制計画案では、「柔軟な学級編制実施のための制度改正」として、市町村に学級編制に係る権限を委譲すること、学級規模が小さくなりすぎないよう弾力的な学級編制を実施するしくみを導入することが示されています。具体化にあたっては、国の教育条件整備義務を地方自治体に責任転嫁することなく、ナショナルミニマムとしての国基準を確立し、その基礎のうえに地域・学校の自主性を保障した上積み施策を可能とするような制度とすることを求めます。

4.今回の計画(案)にあたって、文部科学省は、「『強い人材』の実現は、成長の原動力としての未来への投資」と打ち出しています。
 全教は、子どもたちの成長と発達を保障する国民的、社会的な営みである教育を「未来への投資」ととらえ、国家の経済成長を支える「人材」育成とする文科省の考え方は、容認できません。ゆきとどいた教育の条件は、日本国憲法がすべての子どもに保障する教育を受ける権利を充足し、そのことをもってすべての子どもの人格の完成をめざすという教育の目的を達成するためにこそ必要とされています。この基本を欠いて、定数改善計画を「成長戦略」に位置づけた「政策コンテスト」の対象にしてはなりません。
 すべての子どもを大切にする教育を実現するという基本に立ち返った文科省の努力を求めます。

5.全教は、発表された計画(案)が2011年度政府予算に反映され、来春から着実に実行に移されることを要求し、そのための運動に全力を尽くします。また、今回の計画(案)で残された課題を早急に解決し、すべての校種・学年での30人学級実現、定数改善計画のいっそうの充実を強く求め、引き続き全力をあげる決意です。                         以 上