8月27日(木)静岡地裁で、

木村裁判第6回口頭弁論が開かれました。

 
  Nくんが半年間受診した医療センターの診療記録を、裁判所の求めで、開示の申し出をすることになりました。Nくんのお母さんが、大変だった当時の様子を書面で出してくれています。しかし地方公務員災害補償基金側(以下基金)は、それだけでは満足しないようです。
 
 尚、この受診に当たっては、当時の養護教諭がNくん宅を家庭訪問までして受診を勧めたという経過があります。弁護士が当の養護教諭に尋ねると、「よく覚えていない。」という返事であったということですが。
 基金側は、Nくんは指導の難しい子どもではなかったことを立証したいようです。
 しかし問題は、NくんがADHDであったかどうかではないのです。木村さんが、当時、過重な負担を負っていたということなのです。
 また、原告はNくんをせめているわけではありません。

  基金側は、Nくんを受け持った担任の陳述書を出してきました。
 1〜3年と5、6年の計5人の担任(4年は木村さん)の陳述書が出ました。 
 1年の担任は、「甘えん坊のイメージ。ひらがななど多少時間はかかるが、学習面、普通の1年生だった。」
 2年の担任は、「友だちに対してやさしい。不器用なところがあって、友だちと言い争いをするところもあったが、2年生としては幼いが、特に指導を要する子ではなかった。」
 3年の担任は、「むしろいい子。着眼点がよく、授業を活性化することもあった。4年になって、様子が変わった。カーヴィーなどかわいいキャラクターの絵を描いていたのが、4年になって、画面いっぱい赤く塗られたたたかいの絵を描いて、図工の先生は困っていた。」
基金側は、木村さんが担任した4年生以外は、Nくんは指導が困難な子ではなかった、ということを言いたいようです。
 この裁判は、誰かに賠償責任を持たせようという裁判ではありません。公務中の災害について、補償してほしいという裁判です。基金側が、補償を渋るのは、許せないですが、意図はわかります。
 でも、なぜ、同僚であった方々が、そのような陳述書を出したのか意図がわかりません。木村さんの大変さを立証するのではなく、逆に大変じゃなかったことを立証するのに一役買おうとしているのです。なぜ、同僚だったのに、そんなことを?聞いてみたい!

 尚、ここでも問題は、木村さんが担任していた4年生のクラスの大変さです。そして、その木村さんへの支援が十分であったかの問題です。個々を責めることではありません。
  
 この間の経過の中で、次のような声が出ています。
 この程度のこと(木村さんの困難さ)は、教員なら多かれ少なかれ感じていて、みんな乗り越えてきています。例え新採であってもそうです。でも、「乗り越えた」ことのでの違いは、一人ではなかったということです。様々な支援体制があったからこそです。
 クラスがかわると、今までと突然違ってクラスが荒れることは、珍しいことではありません。
 また、支援体制といっても、限界がある場合もあります。学年集団がたよりになることもあります。
 木村さんの場合は、そうではなかったということです。 
 ここでも、公務災害認定訴訟なのですから、個々を責めるのではなく、体制や仕組みとしての職場の問題を明らかにしていく必要があります。
 今後木村さんのようなことが起きないようにするには、どうしたらいいかが問われているのです。まさに、教職員全体の問題、学校職場の問題として、使用者の「安全配慮義務」の問題として考えてほしいことなのです。

 証人尋問としては、教頭(当時)など二人を、原告・被告共同申請とすることが決まりました。
 基金側医師の丸山氏、原告側で意見書を出してくれている天笠医師および学校のことをよく知っている先生などが考えられています。

 原告・木村さん側としては、積極的に意見書を出す予定です。現在、小学校の教員、退職教職員から7通出ています。次回が10月末なので9月中には、もっと多く出してもらおうと呼びかけています。
 学校現場での自らの経験、苦悩したこと、乗り越えた、乗り越えられなかった、その際の教訓、など積極的に出してください。県内各地で、意見書を出そうという動きが起こっています。

尚、裁判官が判決を出す場合には実名で出していただくのが有力です。
 ただ、もちろん匿名で出さざるを得ない場合も多いでしょう。それでも出してください。その際は、できたら、なぜ匿名にしたいのか、(校長に知られると、どうなるかわからないから、など)理由も書いてくれるとありがたいです。

 ある学習会の場で、他県の教頭は、木村さんの事件を知って即座に「この校長は何をやってたんだ!木村さんの当時に実践記録を見れば、(援助が必要なことが)わかる!」と言ったそうです。
 使用者としての「安全配慮義務違反」があったことは、誰の目に明らかです。

次回、第7回口頭弁論は10月29日(木)13時40分 静岡地裁

弁護士より  先生方が色々とご指摘くださったので,大変参考になりました。
学校現場のことは,われわれ弁護士には本当のところは分かりません。先生方のご意見から気付かされる視点がたくさんあります。