6/21(木)11時〜東京高裁8階818法廷へ!傍聴のお願い

東京高裁は、日比谷公園の近くです

丸ノ内線霞ヶ関

『控訴理由書』で訴えていること

 当時、静岡県教組の組合員で、小笠郡の養護学級の先生だった尾崎善子さんの自殺は、公務災害認定されるべきだ!と訴えている裁判は、3月22日に静岡地裁で不当な判決が下されたため、たたかいは東京高裁に移っています。そして、21日(木)11時から東京高裁での初めての口頭弁論が行われようとしています。
 尾崎さんのご遺族と弁護団が『控訴理由書』を提出しています。その中から、少しずつ紹介します。静岡地裁判決(以下「判決」)の不当性とともに、如何に教職員の勤務実態が外に明らかにされていないかが、よくわかると思います。
 6/21(木)11時〜 東京高裁818法廷(日比谷公園近く)傍聴を!
 署名、一言意見書などにご協力を!連絡くだされば送ります。

1.誰を基準に判断するか?「最近の判例」を研究していない(無視?)判決

 ■ 判決は、「当該公務自体が、社会通念上、当該精神障害を発症もしくは憎悪させる一定程度以上の危険性を内在し随伴していることが必要」とするだけで、原告の主張や最近の判例についての当否の判断を示していない。

※最近の判例

 ◇ 名古屋地裁06.5.17判決「同種労働者(職種・職場における地位や年齢・経験等が類似する者で、業務軽減措置を受けることなく日常業務を遂行出来る健康状態にある者)の中でその性格傾向が最も脆弱である者(但し、同種労働者の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲内の者)を基準とするのが相当」
 ◇ さいたま地裁06.11.29判決「「通常の勤務に就くことが期待されている平均的労働者を基準とするが相当であるが、…上記の通常の勤務に就くことが期待されている者とは、完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者、いわば平均的労働者の最下限の者を含むと解するのが相当…そこで、当該業務が精神疾患を発症ないし憎悪させる可能性あるいは危険性ないし負荷を有するかどうかの判断に当たっては、当該労働者のおかれた立場や状況、性格、能力等を十分に考慮する必要があり、このことは、業務の危険性についていわゆる平均人標準説を採用することと矛盾するものではない」
 ■ 従って、「判断に当たっては、当該労働者のおかれた立場や状況、性格、能力等を十分に考慮する」(上記さいたま地裁判決)ことが行われていない。
 ■ 日常普通に勤務していた尾崎さんを「脆弱」なんて決めつけるのはおかしい!
  これでは、異常な勤務実態の中で、まさに崖っぷちで働かせられている教職員は、倒れたりしたら、お前が弱かったのだ!で片づけられることになる。そんなバカな!

2.教職員の勤務実態をことさら無視

3.障害児教育の困難性をことさら無視

 ■ 尾崎さん側がくり返し具体的に語った教職員の勤務実態の異常さや、障害児教育、とりわけ静岡県における障害児教育の遅れ、理解のなさ、不十分な条件などについても、判決は無視しています。養護学級の先生の仕事に関わる裁判で、このことを抜きに判断できるでしょうか。

4.就学指導委員会から尾崎さんを排除したことについてもことさら無視

 ■ 小さな町の就学指導委員会になぜ入れなかったのでしょう。

5.尾崎さんの不本意な転任についての軽視 しかも養護学級初めての担任でたった1年で転任させられたストレスへの無理解

 ■ 判決は、「公立学校の教職員にとって、職場の変更等は珍しいことではない」といとも簡単に片づけます。初めて養護学級を担任して、たった1年で希望外の転任をさせられることは、子どもにとっても教員にとってもショックなことです。
 一般的にも、不当な配転をさせられたら、尋常な神経ではいられません。それを「珍しいことではない」と、簡単に言う判決は、教委当局の人事に口を出すのがおかしいと言っているようなもので、裁判所が言うべきことではありません。

6.養護学級へ級外として1年出張授業、翌年初めて養護学級担任、それで「養護学級担任の職務に不慣れであったとはいえない」という誤り

 ■ これで、養護学級担任に慣れていたと言えないことは、教職員なら誰でもわかることです。裁判所が、少しも学校や障害児教育の現場について勉強していないことがよくわかります。そんなんで、判決を出していいものでしょうか。

7.「精神的肉体的疲労が蓄積していたことは認められない」という誤り

 ■ 判決は、担当した学級の児童数は少ない、勤務時間、退庁時間も問題ない、年休取得もしている、だから、「十分な疲労回復時間が確保されていた」と言います。しかしこれは、「24時間教員」という仕事の性質や実態を無視しています。
 ■ さらに最近の東京高裁で「公務が質的・内容的な面で特に負荷の重いものであったと認めるのが相当」「執務態勢等の数量的・形式的な観点のみをもって直ちに公務の過重性を否定することはできない」という判決が出ていることでも、誤りは明らかです。
 ■ 教員の勤務時間、特に時間外・休日そして持ち帰り仕事の時間が、正確に残っていないことをいいことに(裁判長に対しては、意見書などでも知らせているのに)本当にいい加減な判断だと言わざるを得ません。
8.「養護学級の教材及び教具についても6月末以降は改善」との指摘の誤り 
■ 尾崎さんの要求などで改善されたものであり、だから楽なんて、どうしてわざわざ言えるのでしょうか。しかも、静岡県の養護学級の「教材及び教具」は、担任が不断に補わなければ、とても十分ではないということは、ちょっと調べればわかることです。

 今回はここまでにします。次回は、2週間もの体験入学の問題、それを児童相談所が中心になって決めたという誤りなどについて、言及します。

ご意見、参考になることなどを寄せてください。
再度、一言意見書、署名などをお願いします。連絡ください。