尾崎善子さんの死を公務災害認定すべき!

3月22日静岡地裁不当判決に抗議し,あらためてご支援を訴えます

 私たちは、2000年当時静岡県教組の組合員で小笠郡の養護学級の教員だった尾崎善子さんの自殺を公務災害認定すべきだ!と訴えている裁判(以下「尾崎裁判」)へのご理解とご支援を訴えています。

「尾崎裁判」とは…

 小笠郡の養護学級担任だった尾崎善子さん(当時48歳)は、養護学校から養護学級へ転入を希望した多動性障害の子どもの「体験入学」を2週間もの長い間受け入れました。ところが、この「体験入学」よって授業が成り立たなくなり、在籍児童とともに築き上げてきた学級体制をズタズタにされてしまいました。そして受け持つ子どもや保護者への責任感から、悩み苦しみ、また当時の児童相談所や町教委、校長の安易で無責任な対応により、“うつ病”を発症し、ついには自殺にまで追い込まれました。
 地方公務員・公立学校教職員の公務災害は、「地方公務員災害補償基金」(以下「基金」)の県支部(なんと支部長は県知事)や中央の基金および各段階での「審査会」が認めることによって初めて成立します。
 ご遺族は、当然公務災害の申請を行いましたが、基金は公務外の認定を下しました。そこでご遺族は処分の取り消し(=公務災害認定)を求めて静岡地裁に提訴しました。しかし静岡地裁も「体験入学がうつ病の誘因」と認めながら、「うつ病を発症させるような負荷を与えるもので」はなく、尾崎さんの個人的な弱さ(精神的脆弱性)が原因であるとして、請求棄却の不当な判断を下しました。
 そこでご遺族は、この体験入学は教育的なものではなかったこと、学校・養護学級での教育が精神的・肉体的に大変厳しい実態にあること、基金静岡地裁はその実態を無視して判断していることなどを訴えて、東京高裁に控訴しました。

えっ、公務災害にならなかったの!?…地元の声

 尾崎さんの事件を知っている小笠(現掛川市)の教職員の中から、不当な判決が出たことに意外だという声が上がっています。それはそうでしょう。尾崎さんがうつ病を発症したきっかけ(誘因)は、2週間もの「体験入学」(公務、しかも教育的配慮のないもの)だったことは明らかなのですから。
 しかし基金静岡地裁は、「普通」の教員あるいは別の教員なら「無難にこなす」仕事であった(社会通念上、客観的にみて、うつ病を発症させるほど過重なものではなかった)として、尾崎さん個人の弱さを強調します。「普通」の人、「真ん中」の人を基準にして(平均人基準説)、それより「弱い」人は公務災害にはならないよ、ということです。尾崎さんを採用し、20年余勤務させておいて、異例な「体験入学」という仕事に対して耐性がなかったから、死んでも知らないよと言っているようなものです。
 これでは、異常な勤務実態の中で、まさに崖っぷちで働かせられている私たち教職員が、もし倒れても、お前が弱かったのだ!で片づけられかねません。

最近の判例からみてもおかしい!

 尚、労働災害で誰を基準にするかは、最近でも「同種労働者の中でその性格傾向が最も脆弱である者を基準」(名古屋地裁)とか、「完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者、いわば平均的労働者の最下限の者を含むと解するのが相当」(さいたま地裁)という判例があります。実際の仕事上起きた災害なのですから、社会通念上当たり前でしょう。

学校現場や養護教育の実態は無視

 過重性についても、基金静岡地裁は、私たちが意見書などで再三訴えてきた学校現場や養護教育の実態について、無視ないしは下記のように軽視します。
■ 尾崎さんは養護学級へ級外として1年出張授業、翌年初めて養護学級を担任しました。しかしその翌年には養護学級新設の小学校へ希望外転任させられたのです。それに対して基金静岡地裁は、「養護学級担任の職務に不慣れであったとはいえない」「自分の意に沿わない転勤や職務命令」は「珍しいことではない」「いつまでも『憤り』を引きずるのは、社会人としての自覚に欠ける」と言い放つのです。
■ 当時の静岡県内養護学級の児童数について4名以上が全体の6割で、尾崎さんの学級は2名だったので「特別多いとはいえない」と言い、在籍児童や体験入学児童の実態は児童数の部分では関係づけません。
■ また、基金や判決は、体験入学中は、「校長、教頭を含め、手の空いている教師が誰かしら授業に参加」し、「体験児童の相手をしたり在籍児童と体験児童を一時的に引き離すなど」の「配慮」をしたからと、尾崎さんの負担は軽かったと決めつけます。学級担任がそれで本当に気が楽になりますか。
■ 持ち帰り仕事も、記録がないからと認めません。

尾崎裁判は、教職員を守るたたかい

 問題点はまだまだあります。これらのことから尾崎裁判は、尾崎さん個人の問題だけでなく、教職員の問題として突きつけられていると私たちは考えています。意見書提出、公正な判決を求める署名、裁判傍聴、学習などへのご理解、ご支援をお願いします。

11/8(木)15時〜東京高裁818法廷へ、傍聴を!

 
 ごいっしょに、傍聴していただける方、関心をお持ちの方は是非連絡をください。