教育基本法「改正」と国際基準

              牛久保秀樹(全教弁護団

 教育基本法の改正を検討するならば、本来、ILOユネスコ勧告(以下、「勧告」という)等の国際基準にもとづいて論議されなければならない。そのことは、国際法上、当然であり、ILOユネスコが、「それは、教員に関する国内法や実施される制度の基礎となるように立案されています」と表明しているところである。

この国際基準から、今回の教育基本法「改正」の動向をみると、幾つもの問題が指摘される。第一に、教育の目標として掲げる「改正」案第2条5項の「国と郷土を愛する態度」についてみると、「勧告」は、「これらの諸価値の範囲の中でもっとも重要なものは、教育が平和の為に貢献することおよびすべての国民の間の、そして人種的、宗教的集団相互の間の理解と寛容と友情にたいして貢献することである」と明確に、平和への貢献、民族、宗教との調和を掲げている。平和と国際協調の中でこそ教育の目的が達成されるという「勧告」の立場との整合性が問われる。第二に、「勧告」は、教員は専門職として尊重され、教員には、学問の自由が認められるとされている。そして、教員の社会的参加が推進されて、市民的自由が全面的に認められるとしている。教員の自由な創造的な営みの中からこそ豊かな教育がなされるという立場である。このことが明確にされずに、「改正」案17条による教育振興基本計画が強調されることはあってはならないのである。第三に、現在の基本法10条2項が「教育条件の整備確立」を求めているもとでも、この国の教育条件は劣悪である。OECDの統計によっても、日本の教員は最長の長時間勤務についている。生徒数に対する異常な教職員の少なさ、貧困な教育予算の実態、これらの改善がなされないまま、行政の義務が、一般的な「財政上の措置」に切り替えられることが問題とされる。

「改正」教育基本法は抽象的な規定であるために、直接、「勧告」に違反するとまではいえないとしても、その本質的部分において、「勧告」の基準に反することは許されないことは当然である。国会審議において、充分にそのことが論議されることを期待したい。