(全教声明)2015年人事院勧告について

2015年8月6日 全日本教職員組合中央執行委員会

1.人事院は本日、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。その構成は「職員の給与に関する」報告および勧告、「職員の勤務時間に関する」報告および勧告、そして「公務員人事管理に関する」報告となっています。

今年の人事院の主な勧告内容は

2.人事院は今年4月における官民較差について、国家公務員給与が民間給与を「平均1,469円、0.36%」下回っていたとしています。そして、民間賃金調査結果にもとづき、行政職給料表(一)を改定して初任給を2,500円引き上げるとともに、すべての号俸においてベースアップを行うこと、昨年は見送られた再任用職員の賃金改定などを勧告しました。
 また、一時金を0.1月引き上げ4.2月としたうえで、引き上げ分をすべて勤勉手当に充当するとしました。
 さらに、「給与制度の総合的見直し」における配分見直しの一つの柱であった地域手当について、当初予定より早く2年間で完結すること、   単身赴任手当の改善を盛り込むとともに、配偶者に係る扶養手当の支給要件等について、必要な検討を行っていくとしました。


 勤務時間に関しては、フレックスタイム制は「より柔軟な勤務形態の下で職員の能力発揮や公務貢献が期待できるもの」「育児や介護の時間を適切に確保できるようにすることを支援するため」として、原則としてすべての国家公務員を対象としてフレックスタイム制を拡充することとしています。
 人事管理に関しては、「有為な人材を計画的かつ安定的に確保すること」などの課題への対応のために、「能力・実績に基づく人事管理の推進」「研修の充実」を挙げるとともに、
「雇用と年金の接続」について「フルタイム中心の勤務の実現に向けた一層の工夫が求められる」としました。

15人事院勧告の主な問題点は?


3.人事院勧告が、月例給および一時金を2年連続の引き上げ、しかもすべての号俸にわたっての改定するとしたことは、世代間の分断に反対し、すべての公務労働者の賃金引き上げを求めてとりくんできたわたしたちのたたかいを一定程度反映したものといえます。


 しかし一方、勧告は2014年4月からの消費税増税や物価上昇が公務労働者の生活に与えているきびしい実態を軽視し、公務労働者全体の生活改善をはかろうとする立場には立っていません。
人事院は「給与構造改革」の経過措置期間に賃下げ勧告を行った際に、現給保障額をも引き下げました。この経過を踏まえるなら、今回は現給保障者への引き上げ措置をとるべきです。にもかかわらず、わずかな原資の大部分が地域間の賃金格差を拡大する地域手当に配分され、現給保障者の給与は据え置かれます。


 さらに一時金の改善は「勤務実績に応じた給与を推進するため」と称して勤勉手当に充て、成績主義の強化を推進しています。


 加えて、公務職場においても民間と同様に臨時・非常勤職員が増え、しかも職務内容においては正規職員とかわりない実態があるにもかかわらず、臨時・非常勤職員の待遇改善には一言も触れていません。
 これらの事実は人事院が労働基本権制約の代償機関としての役割を果たしていないことを物語っています。

  

フレックスタイム制」って?


 人事院が原則としてすべての公務労働者に拡充するとしたフレックスタイム制は、単なる労働時間の弾力化の一形態に過ぎません。真に人事院が公務労働者の長時間労働の解消をめざすならば、政府に対して国家公務員の大幅な定員増を求めるべきです。


 また、勧告では、フレックスタイム制の拡充が仕事と育児や介護との両立を推進するものであるかのように描きだしています。
「公務における女性の活躍推進」「女性の採用・登用の拡大」をめざすのであれば、職場の公務労働者の実態に応じた労働条件の整備が不可欠です。
 全教は長時間過密労働の解消と女性の地位向上、子どもたちの教育を充実する立場から、フレックスタイム制の拡充には明確に反対の意思を表明するものです。

雇用と年金の接続のための措置・条件整備を


4.今年度末の60歳定年退職者から年金支給開始年齢が満62歳となります。それだけに確実な「雇用と年金の接続」のための条件整備が重要な課題になっていました。
 しかし、今回人事院は再任用者の給与月額を1,100円引き上げること等を盛り込んだものの、「再任用者の給与については、引き続き、その在り方の必要な検討」という報告に留まっています。
 全教は、人事院に対して2011年に人事院が「意見の申出」を行なった「定年年齢の段階的延長」の実現のための必要な措置をとるよう強く求めます。
 同時に年金制度の改悪を強行した政府が、自らの責任で雇用と年金の確実な接続を図るための条件整備を求めるものです。

ここまでの全教などの運動


5.全教は「すべての労働者の賃上げで景気回復と地域経済の復活を」をかかげ、最低賃金1,000円以上への引き上げ、労働法制の大改悪反対、社会保障制度の改悪反対など、官民共同のたたかいを追求し、夏季闘争をたたかいました。同時に、「戦争法案」反対のたたかいを公務労働者の賃金・労働条件改善を求めるたたかいと一体的にすすめました。
 具体的には、15春闘ではストライキや統一行動の支援、官民が一堂に会した共同の宣伝行動など、これまでの到達点を上回るとりくみを展開しました。
 また、最低賃金闘争や労働法制大改悪のたたかいについても、官民共同の立場を明確にしてとりくみました。さらに、公務労組連絡会全労連公務部会が提起した公務労働者の賃金改善署名では、全教は42,918筆(公務労組連絡会全体では135,784筆)を集約しました。7月24日に行われた夏季闘争における最大規模の中央行動では、戦争法案反対の課題や「えがお署名」提出行動と一体的に全国から約400名の参加で成功させました。

県段階=県人事委員会、続いて、県教委への要求・要請行動が大事!

   

6.教員給与を含め地方確定闘争では、教職員をはじめすべての公務労働者の生活改善につながる賃金引上げ、すべての世代における賃金改善、臨時教職員の待遇改善を基本要求にかかげ、たたかいをすすめることが、官と民・世代・雇用形態の違いによる政府・財界の分断攻撃を許さず、要求前進をはかるうえでの重要な課題となります。

人事評価の賃金リンクの攻撃に警戒・対応を


 また、2014年4月、政府・総務省は勤務評定に代えて人事評価を賃金・処遇に反映させることを主な内容とする地方公務員法の改悪を強行しました。政府は2016年4月施行にむけた準備をすすめており、文科省も「メリハリある教職員給与」との名目でこの動きを一層促進しています。そのため、成績主義賃金の導入・強化に反対するたたかいも重要な課題となります。

 全教は、子どもたちの教育に教職員が力を合わせて、生活の不安なしに専念できる教職員の待遇改善を文科省と地方教育委員会に引き続き求めるものです。

生活実態、勤務実態を明らかにし、その改善のためのたたかいを

〜自分と職場の要求がたたかいの基礎〜


7.全教は、あらためて政府に対し、生計費にもとづく賃金改善をおこなうことで、公務員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいをさらにすすめます。


 同時に、「戦争法案」の廃案、安倍「教育再生」反対、憲法を守るたたかいと結合し、労働基本権の確立、教職員賃金の改善と臨時・非常勤教職員の均等待遇実現、地域格差拡大反対、教職員諸手当の見直し改悪反対、差別賃金制度の導入を許さないたたかいに引き続き全力をあげる決意を表明するものです。
                                      以上   

人事院勧告の学習を!

  一喜一憂するだけではなく、先ず、人事院勧告の内容、そして改善点と問題点を正確につかもう。
  そして、自分と職場(の同僚)の要求をはっきりさせよう。
  そのためには、人事院勧告の学習が必要です。
  質問や意見を速やかに、送ってください。

県人事委員会要請行動に参加して、実態と要求をしゃべる準備を!
8月下旬、全教静岡は、県人事委員会に今年度の要求書を出します。
  そして、9月に要請行動があります。
一緒に行きましょう!

常に、職場・勤務の実態をリアルに語る(当局に知らせる=突き付ける)ことを大事にしています。