2016年人事院勧告について(全教声明)


2016年8月8日
全日本教職員組合 中央執行委員会


1.人事院は本日 、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。その構成は「職員の給与に関する」報告および勧告、「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出及び一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律の改正」についての勧告、そして「公務員人事管理に関する」報告からなっています。


2 人事院は今年4月における官民較差について、国家公務員給与が民間給与を「平均708円、0.17%」下回っていたとしています。そして、民間賃金調査結果にもとづき、行政職給料表(一)を改定して初任給を含めて30歳程度までの号俸では1,500円引き上げるとともに、その他については400円を基本としたベースアップ、再任用職員の賃金もこれに準じた改定をおこなうことなどを勧告しました。また、一時金を0.1月引き上げ4.3月としたうえで、引き上げ分をすべて勤勉手当に充当するとしました。さらに、「給与制度の総合的見直し」における配分見直しの一つの柱であった係員および係長にかかる本府省業務調整手当を、それぞれ2016年4月に遡って0.5%引き上げるとともに2017年度からはさらに1.0%引き上げるとしました。
 扶養手当について、経過措置を設けるものの配偶者にかかる手当を現行の13,000円を6,500円に引き下げ、子の手当を10,000円に引き上げること、行(一)9級・10級在職者については、子以外の扶養手当は支給しないこと、8級在職者については配偶者にかかる扶養手当を3,500円にすること、また、配偶者のいない者には扶養親族一人目に対する特例措置を廃止することなどを盛り込むとともに、「税制及び社会保障制度の見直しの状況や民間企業における配偶者に係る手当の見直しの状況に応じ、国家公務員の配偶者に係る扶養手当について、必要な見直しを検討していく」としています。
 再任用職員の勤勉手当について、「勤務実績を支給額により反映し得る」ためと称して「優秀」と「良好(標準)」の成績率を変更しています。そのうえで、「再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行っていく」としています。
 また、人事院は「育児休業に係る職員が養育する子の範囲の拡大」「介護時間制度の新設」「介護休暇を請求できる期間の分割」を勧告するとともに、育児時間や介護時間の取得による昇給や勤勉手当への影響を緩和する措置を設けるとしました。


3.人事院が、月例給および一時金を3年連続で引き上げる勧告を行ったことは、この間の春闘における官民共同のとりくみの前進、すべての労働者の大幅賃上げで貧困と格差を解消し日本経済の回復を求めてとりくんできたわたしたちのたたかいを一定程度反映したものといえます。また、介護時間の新設をはじめ介護休暇制度の改善や育児・介護休暇の取得にかかる給与上の不利益の緩和なども「保育園落ちたのは私だ」などの運動と国民世論の広がりをも含めた私たちのたたかいが生み出したものです。
 同時に、人事院は安倍政権の新自由主義の政策に呼応して、国家公務員の内部に格差と分断を拡大する勧告と報告を今年も行いました。
一つは本府省業務調整手当の引き上げを現給保障にともなう原資を使って行ったことに象徴される「霞が関」と地方の国家公務員間の格差拡大です。これは、昨年の地域手当の前倒し実施に続いて2年目となる措置です。同一業務で20%を超える賃金格差を作り出すことは断じて容認できません。
二つは一時金の引き上げがこの間すべて勤勉手当に充てられていることや再任用職員の一時金への人事評価の反映に見られる成果主義賃金の拡大・強化です。希望者全員を再任用するとともに、その基本賃金を底上げし、生活できる賃金保障こそ求められています。
三つは配偶者にかかる扶養手当の引き下げによる実質賃金の削減です。配偶者に係る扶養手当の受給者が子の扶養手当を必ずしも受けているわけではないことから月例給と期末手当に影響する扶養手当の引き下げは生活に大きな打撃を与えます。しかも扶養手当の「見直し・検討」については、勧告日の直前まで具体案を一切示さず、引き続き協議することを求めた公務労組連絡会に対して実質上の問答無用といわんばかりの勧告を強行したことは人事院の存在意義を自ら否定したにも等しい暴挙です。
 まして、政府や財界などによる配偶者に係る扶養手当が女性の活躍や社会進出を妨げるとの主張はまったくの詭弁です。


 公務職場においても民間と同様に臨時・非常勤職員が増え、しかも職務内容においては正規職員とかわりない実態があるにもかかわらず、臨時・非常勤職員の待遇改善には一言も触れていません。これらの事実は人事院が労働基本権制約の代償機関としての役割を果たしていないことを物語っています。


4.今年3月末の60歳定年退職者から年金支給開始年齢が満62歳に引き上げられました。2022年4月からは満65歳に引き上げられます。人事院は「公務員人事管理に関する報告」において、「再任用職員については、短時間勤務が大半となっており、公務におけるフルタイム再任用を原則とするとの方針やフルタイム中心の勤務となっている民間企業の状況とは大きく異なっている」などの現状認識とともに「公務能率の低下が危惧されるほか、職員の士気の低下、生活に必要な収入が得られないなどの問題が深刻化するおそれがある」と述べています。しかし、人事院は「フルタイム中心の再任用勤務が実現できるよう、定員の調整を行うための経過的な取扱いについて関係機関に働きかけを行う」などとしているものの、「再任用職員の勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、成績率を改めることとした」とするなど、「雇用と年金の確実な接続」に向けた実効性のある施策を打ち出していません。全教は、人事院に対して2011年に人事院が「意見の申出」を行なった「定年年齢の段階的延長」の実現のための必要な措置をとるよう強く求めます。同時に年金制度の改悪を強行した政府が、自らの責任で雇用と年金の確実な接続を図るための条件整備を求めるものです。


5.全教は「戦争法」廃止を求めるたたかいを柱に「すべての労働者の賃上げで景気回復と地域経済の復活を」をかかげ、今すぐ、どこでも最低賃金1,000円以上への引き上げ、労働法制の大改悪反対、社会保障制度の充実など、官民共同のたたかいを追求し、参院選挙という政治闘争をも組み込んで夏季闘争をたたかいました。具体的には、16春闘におけるストライキや統一行動の支援、官民が一堂に会した共同の宣伝行動など、これまでの到達点を発展させるとりくみを展開しました。また、最低賃金闘争においても、官民共同の立場を明確にしてとりくみました。さらに、公務労組連絡会全労連公務部会が提起する人事院に向けた公務労働者の賃金改善署名では全教・教組共闘連絡会は3万9,176 筆(公務労組連絡会全体では12万7,476筆)、配偶者に係る扶養手当削減反対の団体署名では、全教・教組共闘連絡会は1,080団体(公務労組連絡会全体では1,658団体)をそれぞれ集約しました。7月27日に行われた夏季闘争における最大規模の中央行動では、「戦争法」廃止の課題や「えがお署名」提出行動と一体的に全国から約400名の参加で成功させました。


6.教職員給与を含め地方確定闘争では、教職員をはじめすべての公務労働者の生活改善につながる賃金引上げ、すべての世代における賃金改善、臨時教職員の待遇改善を基本要求にかかげ、たたかいをすすめることが、官と民・世代・雇用形態の違いによる政府・財界の分断攻撃を許さず、要求前進をはかるうえでの重要な課題となります。また、人事評価を賃金・処遇に反映させることを主な内容とする地方公務員法の改悪が2016年4月に施行され、成績主義賃金を拡大する攻撃が強まっています。また、地方公務員の場合、配偶者に係る扶養手当の受給者の割合は国家公務員よりも少ないことから、地方の財政力との関係で複雑な問題を孕んで地方確定闘争が展開する可能性も否定できません。また、「空白の一日」問題をはじめとした臨時教職員の待遇改善も喫緊の課題となります。全教は、子どもたちの教育に教職員が力を合わせて、生活の不安なしに専念できる教職員の待遇改善を文科省と地方教育委員会に引き続き求めるものです。


7.全教は、あらためて政府に対し、生計費にもとづく賃金改善をおこなうことで、公務員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいをさらにすすめます。同時に、「戦争法」の廃止、安倍「教育再生」反対、「憲法9条守れ」・改憲を許さないたたかいと結合し、労働基本権の確立、教職員賃金の改善と臨時・非常勤教職員の均等待遇実現、地域格差拡大反対、教職員諸手当の見直し改悪反対、差別賃金制度の導入を許さないたたかいに引き続き全力をあげる決意を表明するものです。

                                       以上

2016藤枝市平和展

この夏も、戦争と平和について学んで、考えよう
特に、南スーダン派遣の自衛隊に 駆け付け警護などの任務を与えようとしています。政府が。
こんな危ない情勢だからこそ