2012年人事院勧告について(全教声明)

2012年8月8日
全日本教職員組合中央執行委員会


1.人事院は本日 8 月8 日、一般職国家公務員の給与等の勧告と報告をおこないました。
賃金および一時金に関しては、民間との較差がいずれも僅少であったとして改定を見送り
ました。
 ただし、50 歳台後半層の高齢層職員の給与については、給与法を「改正」し、標
準の勤務成績では昇給しないことなどを内容とする昇給・昇格制度の「見直し」・抑制措置
を行うべきと報告に盛り込みました。その結果、55 歳を超える職員については、人事評価
で「特に優秀」「優秀」以外の評価の者は昇給しないことになります。その理由として、人
事院は、昨年の現給保障額の廃止、一昨年の1.5%一律削減によっても「官民の給与差は相
当程度の残ることが想定される」としていますが、これは、2005 年の勧告で廃止した高齢
層の昇給停止への実質上の回帰です。
 高齢層に焦点をあてた度重なる賃下げは、青年層を含むすべての公務労働者の生涯賃金
抑制を意味しており、断じて認めるわけにはいきません。


2.今年は、民自公3党の議員立法による賃下げ法が強行され、平均で7.8%もの賃金削減
が行われているもとでの勧告となりました。
 人事院は、減額後の官民較差について28,610円(7.67%)としたものの、勧告にあたって
は、減額前の給与と比較し、その官民較差が「僅差」であるとしました。これは、幾重にも
憲法を踏みにじって強行された国家公務員に対する賃下げ法を是認したものです。
 人事院が、昨年の勧告時に、「国家公務員の給与減額支給措置を盛り込んだ法案が、本院
の給与勧告を踏まえることなく、国会に提出されたことは遺憾と言わざるを得ない」とする
考え方を表明していることにも反し、労働基本権制約の代償機関であることを自認してきた
人事院の立場を放棄したものにほかなりません。


3.全教は、全労連・国民春闘共闘に結集して、「賃上げでこそ景気回復を」「貧困と格差
の拡大から、労働者・国民の生活を守ろう」と呼びかけ、野田政権が強行しようとする消
費税増税をはじめとする「税・社会保障の一体改悪」や最低賃金の引き上げを求める官民
共同のたたかいを追求し、夏季闘争をたたかいました。
 同時に、国家公務員への平均402.6万円もの大幅な退職手当削減攻撃に対しては、全労連
公務部会に結集し、全国の職場・地域からの共同を広げ、自治体当局や地元選出国会議員
への要請、宣伝行動など多彩なとりくみが展開されました。


 具体的なとりくみでは、全教は、人事院総裁に向けて、賃金改善を要求する職場要求署
名56,905 筆を提出するとともに、文科省への「えがお署名」提出行動と一体的にとりくん
だ7・25 中央行動は、全国から400 名を超える参加で成功しました。また、首都圏を中心
に全国の構成組織から3日間で約100 名が参加した最終盤における人事院総務省前の座
り込み行動など、職場・教職員の積極的な立ち上がりを背景にしたとりくみも前進しまし
た。このようなたたかいが、賃下げ前の給与との官民較差にもとづく勧告を許したものの、
当初懸念された給与および一時金のマイナス改定を強行させない力になりました。
 さらに、給与構造改革の経過措置の解消に伴う対応として、2013 年4 月1 日に31 歳以上
38 歳未満の職員に対して、最大1号上位の号俸に調整措置を実施させることにもつながり
ました。


4.人事院は、昨年の勧告時に、高齢期雇用にかかわって、定年を65 歳まで段階的に引き
上げることを内容とする「意見の申出」を行いました。
 しかし、今年の「報告」では、「新たな再任用が円滑に行えるよう、各府省において、
…適切に対応することとしたい」と述べるにとどまり、定年延長を求めた自らの「意見の
申出」からは大きく後退した姿勢を示しました。定年延長を基本に、働きつづけられる
環境整備と多様な働き方の選択の保障を求め、全教は引き続きたたかいをすすめるものです。



5.人事院は、今年の報告で、超過勤務の縮減についての勤務時間管理の徹底、男性職員
育児休業を取得しやすい職場環境の整備などについて、言及しました。
 いずれの課題も、定数増や安心して育児休業が取得できる賃金の保障が不可欠であり、
人事院は責任をもって、政府や関係機関に対して、必要な予算の確保を含めた条件整備を
求めるべきです。


6.人事院は、国家公務員制度改革について、「国会が国家公務員の給与を最終決定する下
では、使用者である大臣等も給与決定について最終決定権を持つ交渉当事者とはなれない」
「合意に至った労働組合の加入者が職員の過半数に満たない場合にどのように調整するか
が新たな労使関係制度を措置する上で、議論を尽くしておくべき重要な前提となる」など
とし、憲法が保障する基本的人権としての労働基本権が、公務労働者に対して制約されて
いることが、あたかも合理的根拠をもつかのようにのべています。
 これは、公務労働者の労働基本権よりも、その制約の代償措置を上位に位置づける、主
客転倒の論理です。しかも、議員立法によって強行された国家公務員への賃下げ法を、今
年の勧告にあたって是認した人事院が、労働基本権について言及する資格などありません。


7.教員給与を含め地方確定闘争では、国家公務員の賃下げ法の地方への波及や退職手当
の引き下げに反対するたたかいが重要な課題となります。
 給与構造改革の完成とのかかわりで教職員評価を賃金などの処遇とリンクさせる動きも
警戒しなければなりません。
 全教は、子どもたちの教育を守るためにも、生活の不安なしに教育に専念できる教職員
の待遇改善をもとめ、義務教育費国庫負担金や地方交付税の拡充をふくめ、文科省と地方
教育委員会に引き続き改善を求めていくものです。


8.全教は、あらためて政府に対し、生計費にもとづく賃金改善をおこなうことで、公務
員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを
強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいをさらにすす
めていくものです。
 同時に、憲法と教育、国民のいのちと暮らしを守るたたかいと結合し、
労働基本権の全面回復、
教職員賃金水準の確保と均等待遇の実現、
地域格差拡大反対、
教職員諸手当の見直し改悪反対、
差別賃金制度の導入阻止
のため、全力でたたかう決意を表明します。


以上