全教第32回定期大会中央執行委員長あいさつ

2015年2月14日(土)東京
全日本教職員組合中央執行委員長北村佳久
 大会参加のみなさん、おはようございます。全教中央執行委員長の北村です。全教中央執行委員会を代表して、第32回定期大会の開催にあたり、ごあいさつを申し上げます。
 代議員、特別代議員、傍聴者のみなさん、今年も早朝からの開会にもかかわらず、本定期大会に全国各地から組合員の期待を担ってご参加いただいたことに、心より敬意を表すものです。また、自主的な警備にあたっていただいております首都圏組織の組合員のみなさんと、会場使用でご高配をいただきました会館関係者のみなさま方に感謝申し上げます。
 あわせて、大変ご多用の中、全教への激励と連帯の熱い気持ちで本定期大会に足をお運びいただきましたご来賓の方々に、深くお礼申し上げます。
 

 今年は、これまで全教と交流のあった海外の教職員組合に招待状を差し上げましたところ、長い交流の歴史を重ねておりますフランスSNESから2名の代表をお迎えすることができました。全教定期大会の歴史に新たな1ページを刻む記念すべきことでありまして、日本の教職員を代表して大会参加のみなさん方とともに、熱烈なる歓迎と連帯の拍手を送りたいと思います。


 わたしは、冒頭、1月初旬にパリで発生した武装集団による「テロ」行為によって、多くの尊い命が失われたことに深い哀悼の意を表すものです。この「テロ」事件の直後に400万人の参加で行われた「テロは許さない」の抗議集会とデモ行進に、SNESのみなさん方が参加されたことを全教は承知しています。
 いわゆる「イスラム国」による残虐で野蛮な「テロ」行為は、人質にされた2名の日本人にも及びました。「テロ」で犠牲になられたご家族のみなさまに、心よりお見舞いを申し上げます。
 日本では今、武力ではなく法に則り、国際的な連帯と協調でテロ集団を包囲し、封じ込めるとりくみの重要性が議論されています。同時に、人質事件に対して日本政府がとってきた対応の検証を求める声も高まっています。
 全教は、教育が果たすべき役割、すなわち、諸国民の間ならびに人種、種族、宗教的集団の間の理解と寛容、さらには友好を促進するという教育の役割を再確認しながら、平和と民主主義の実現、子どもたちの人権擁護、教育を受ける権利の確立などをかかげてたたかいをすすめる教職員組合の国際的な連帯が、いっそう強化される方向での努力を惜しまないことを表明するものです。


 大会参加のみなさん。本定期大会では、集団的自衛権行使を許さず、憲法改悪反対、憲法を守りいかせ!のたたかいに全力をあげる方針の確立が求められています。
 安倍首相は、通常国会を「改革断行国会」と位置づけ、集団的自衛権行使を可能とする新たな安全保障法制の整備など、戦後以来の大改革をすすめていくと表明しています。集団的自衛権の行使は、自衛隊アメリカ軍とともに海外での戦闘行為に参加することであって、日本の青年を死の危険にさらすとともに、他国の人々を殺傷し、際限のない報復と暴力の連鎖を誘発し拡大する以外のなにものでもありません。
国際的な緊張が高まり、政治的に不安定な地域が地球上に多数存在する今日だからこそ、日本政府に求められていることは、恒久平和基本的人権の尊重を高らかにうたった日本国憲法の諸原則をいかす政治と外交ではないでしょうか。いわんや、「テロ」事件を契機に、自衛隊の海外派遣を強化しようとする策略は、断じて許されるものではありません。
 5月の連休明けにも、集団的自衛権行使を可能とする関連法の国会提出が予定されており、わたしたちは重大な情勢に直面しています。これを許さないたたかいに、全力をあげようではありませんか。
 加えて、安倍首相は、憲法改正のための国民投票の時期に初めて言及するなど、明文改憲にむけた動きを強めようとしています。
しかし、国民の声をきく耳をもたない安倍政権の暴走は、必然的に国民各層との矛盾を拡大しています。この間、特定秘密保護法反対、集団的自衛権行使容認の閣議決定反対などのたたかいでは、立場の違いにかかわらない自然発生的な行動を含めた広範な国民的共同が日本中で繰り広げられてきました。しかも、これらの共同の行動には、いつも多数の青年が参加しているのです。

全教は、その存在意義をかけ、憲法闘争において積極的な役割をこれまで以上に果たす決意に立っています。

わたしは、全教を代表してすべての教職員とあらゆる教職員組合に心より呼びかけたいと思います。

憲法改悪反対、憲法を守りいかせ、教え子を再び戦場に送るな、での共同を、立場の違いを超えて今こそ広げ、強めようではありませんか。


 大会参加のみなさん。全教運動がこれまでに築き上げてきたかけがえのない宝物のひとつは、参加と共同の学校づくりが世代を越えて実践され、豊かに育まれてきたことです。
 この1年、教育のつどいや全教が開催した各種の集会などで、わたしは、多くの教育実践に接する機会を得ました。それらの一つひとつに、日本の子どもたちと教職員、さらには父母のおかれた現実が刻みこまれていました。全国一斉学力テストや評価制度の押しつけなどによる「競争と管理」の教育政策が強まり、学校は息苦しい場となっています。父母のおかれた厳しい労働環境や生活実態が、子どもたちに直接否定的な影響を与えています。この現実から出発して、日々、これでいいのか、と自分自身に問いかけ、本来、学校とはどんなところであるべきなのか、を問い続け、全力で子どもたちと向き合ってきた日本の教育の宝物が、どの実践報告にもあふれていました。


 先々週、開催した全国青年教職員学習交流集会「TANE!」で、埼玉の青年教師は4月からの壮絶な10か月間を振り返った教育実践を報告しました。時にはイライラする子どもをそっと抱きしめると、その子は安心して話せるようになった、と語る青年教師。くたくたになる毎日でも、青年教師は、子どもや父母の声をきき、子どもを丸ごと理解しようと努めていたのです。その青年教師のまわりには、いつも、励まし支えあう学校の教職員と、学校外で相談できる組合やベテランの存在がありました。
 参加と共同の学校づくりという言葉が使われているかどうかにかかわらず、今日の学校をとりまく深刻な状況が、不可避的に参加と共同の学校づくりの実践を豊かにしているのだと、共感しながら青年教師の報告を聞きました。
 その一方、安倍首相の憲法改正ありきの政治姿勢は「教育の再生」に向けられ、旧日本軍による過去の侵略戦争と植民地支配を肯定・美化する立場を教育現場に持ち込もうとしています。教育委員会制度の改悪をはじめとして、「道徳の教科化」や教科書記述の統制と教科書採択制度の「改正」、学校制度の改悪、さらには教員の養成と採用制度の改悪など、教育への政治支配を強め、「戦争する国」を担う人づくりと企業のための人づくりが狙われています。これらは、基本的人権である教育への重大な挑戦であり、国民の願いと相いれないものです。
 一つひとつの職場からの参加と共同の学校づくりは、「声をかける」「話をきく」「つながる」職場づくりと不可分の関係にあります。さらには、父母との共同や地域での子どもを守る共同を強め、安倍「教育再生」への職場と地域からの確固とした反撃力となります。参加と共同の学校づくりの取り組みを前進させることは、全教の担うべき社会的・歴史的な使命なのです。本定期大会では、教職員組合の大会だからこそ、子どもと学校、教育を語りあい、教職員と全教の希望を語りあおうではありませんか。


 大会参加のみなさん。全教と日高教の一体化を決定した昨年の定期大会から早いもので1年が経過しました。
全教と日高教の一体化でわたしたちがめざしたものは、理論政策上でも、運動推進の点でも、そして組織の拡大・強化の観点からも、教育産別の全国組織の強化でした。この1年間の全教運動の推進とその到達は、全教と日高教の一体化に寄せる全国の組合員の期待に応えるものであったばかりか、全教運動の新たな地平を築き、将来にむけての展望を切り開くものとなったことを確認しあいたいと思います。本定期大会に執行部より提案を予定しています「組織建設3か年計画」が、すでに各組織において、“わがこと”と積極的に受け止められ、議論と具体化が始まっているのは、その反映でもあります。
 全教は来年3月6日で結成25周年を迎えます。激動の情勢の中にあって、結成以来の四半世紀の全教運動は、教育基本法改悪反対の大闘争をはじめとして、いつも情勢を前向きに切り開き、全国の教職員と父母、教育関係者の希望であり続けました。2015年度は、全国の組合員の叡智と情熱と力を合わせ、心を通わせあって、次の四半世紀に向かっての全教運動を開始する年です。豊かな大会討論を通して運動方針を確立していただくとともに、運動方針を先頭に立って実践する新しい全教の執行体制を確立する節目の第32回定期大会となるべく、大会参加者のご奮闘をお願い申し上げ、開会にあたってのごあいさつとさせていただきます。