6月12日、東京高裁は、不当解雇で訴えた裁判で、許せない判決を出しました。
 JALの不当解雇裁判と同様です。
 司法が中立の立場で、法と証拠に基づいて判断するなら、
せめて、弱い立場の視点を重視するべきではないでしょうか。
 弁護団の声明を紹介します。

富士急石川タクシー事件不当解雇撤回裁判控訴審判決を受けての声明文

富士急石川タクシー事件不当解雇撤回裁判弁護団


 本日、東京高等裁判所第24民事部は、タクシー乗務員12名(うち1名は裁判中に亡くなり、相続人が承継)が、富士急系列の静岡ホールディング石川タクシー富士宮、石川タクシー富士らに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、解雇から現在までの未払賃金及び慰謝料の支払を求めた裁判で、控訴を全部棄却する極めて不当な判決を言い渡しました。


 私たちは本裁判において、
(1) 会社解散に伴う解雇においても解雇権濫用法理が適用され、本件解雇は手続的配慮を著しく欠き、違法無効であること、
(2) 法人格否認の法理により、静岡ホールディングらが控訴人らの雇用責任を負うことを主張し、
    具体的には、
a)  財務状況、経営状況からみて、石川タクシー富士宮は突然会社を解散させる必要性がないこと、
b) 本件解散解雇は事前に従業員に知らされることなく、当日になって事業場をバリケードで封鎖して行われ、何らの経済的手当や転職先の斡旋もなされておらず、手続的配慮を著しく欠いていること、
c)  本件組合は法律違反是正のため活発な組合活動を行い、会社はこれを嫌悪していたこと、
d)  解散会社の事業は存続会社が承継していること、を主張してまいりました。


 本判決は「・・・解雇手続としては、解散を事実上決定する際に、資金繰りや事業廃止を遅らせることによる損失の程度等を考慮した上で、適切な時期を解散や解雇の実施日と定め、・・・説明文書を作成して従業員に予め配布するとともに、説明会を開催して質疑応答を経るなどした上で、例えば、直ちに退職するのであれば解雇日までの給与相当額を別途支給するなどの取扱いをすることとして、解散及び解雇に伴う双方の損失の軽減を図り、また従業員の納得を得た上で、円満に解散及び解雇を行うことが、信頼関係を基礎とする継続的契約である雇用契約を終了させる方策として望ましいことは当然である。しかるに、本件解雇では、このような手続がとられていなかったといえる」と認めています。


 しかしながら、それに続けて、「・・・そのような手続をとることが困難であったり、とったとしてもそれに見合う成果が期待しがたいような場合もありうるのであり、このような場合に、そのような手続がとられなかったことにより解雇権の行使が権利の濫用となることはない」、(本件組合は会社側提案の賃金減額を拒否し交渉に応じない旨表明したことから)「上記のような手続をとったとしても円滑に進行するか疑問であり、また、被控訴人富士宮の厳しい財務状況からして、それ以上の損失の拡大を避けるために直ちに解散と解雇を行い、従業員の負担軽減策は事後的に講じるという選択も、経営的判断としてあり得るところといえる」、「そうすると、本件解雇は、それまでの経緯に照らすと、必要かつ可能な手続を敢えてとらなかったことにより、ことさら控訴人らに不利益を与えたとまではいうことができない。したがって、・・・本件解雇が解雇権の濫用に当たるとはいえない」などと、意味不明の論理を展開しています。
 経営側の経済的利益を最重視し、解雇によって被る労働者の不利益については、触れてさえいません。
 

 私たちは、この極めて不当な判決を断じて受け入れることはできず、最高裁において引き続き闘争を継続する決意でおります。
 ここにご支援をいただいた方々に対し、ご報告を兼ねて、以上のとおり声明を発表致します。


 本件は、解散当日まで従業員らに解散の事実を一切伝えず、従業員の解雇に伴う打撃を緩和する有意な措置を何一つとらなかったという、他に例をみない極めて悪質な不当解雇事案です。
 

 現在、経済界では経営の合理化が求められ、会社分割や不採算部門からの撤退・縮小、事業再編などが活発化しております。同時に、経営者の「迅速な判断」が過度に尊重され、労働者の権利保護の要請を軽視する風潮が横行しております。
 本判決の判断がまかり通るのなら、使用者は気に入らない組合があっても会社を分割して、会社解散という形式さえ採っておけば自由に解雇をなし得ることとなってしまいます。
 整理解雇において積み上げられてきた判例法理を実質的に破壊し、労働者の権利擁護の流れを断ち切る不当なものであり、到底容認することはできません。


 原告らは平成22年2月8日に会社を解散されてから、4年4ヶ月以上もの長きにわたり、組合事務所を守りながら闘争を続けてまいりました。これは原告ら自身の救済だけを目指してのことではなく、日本の労働環境全体に関わる重大な岐路に立っているという認識に基づくものです。


 私たちは今後も労働者の権利擁護を求め、原告全員が無事職場復帰を果たせるようになるまで、全力で闘い抜く決意でおります。引き続き皆様のご支援ご鞭撻を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

以上

お願い

支援共闘会議では、最高裁に向けたたたかいと、解雇された乗務員の方々の支援のためのカンパを訴えています。
 連絡は、静岡県評 電話054−287−1293 へ。