シンポジウム 理想の学校教育の実現を目指して・傍聴記

メモを元に起こしたので、正確でないところもあるかもしれません。
2008年12月18日(木)  主催 静岡県教育委員会

 「理想の学校教育具現化委員会の提言(10月27日)を県民の皆様にお知らせし、御理解を図るとともに、理想の学校教育像を共有し、子どもにとって望ましい教育環境の在り方を考えます。」(当日の配布の文より)

■「理想の学校教育具現化委員会」提言の報告
(委員・大学准教授)  略 パンフレット参照

■パネルディスカッション これからの学校教育に期待するもの
 ・自己紹介を兼ねて問題意識を。
 □中学校教頭  学校の多忙な現状。内発的改善が必要。しかしスクラップ&ビルドというが、見直すより、増えることが多い。(例)食育、学校評価・自己評価、そして新学習指導要領への対応。
 □会社社長 提言のマネジメントの目線を評価。繁忙、多忙というがそれが業務改善に結びつけているか。多忙と言っても個人差があるのではないか。IT化で、業務量は広がっている。成果拡大しつつ、効率を上げているか。
□委員 キーワードは「知識基盤社会」でも、学校が知識を与える時代ではない。学校はこれまでもやってきた。変化の中での条件整備が必要。専門職・同僚制を考慮して。現場でも変えられるという実感が崩れている。提言を通して、その見通しが持てればと思う。
 □母親 理数教員の増員、図書館など先取りした提言をしている。情勢は厳しく非正規雇用問題などあるが、でも子どもは未来の投資と考えてほしい。
 □市教育長 教育界は悲壮感が漂うが、学校に行くと感動があふれている。学校は、未来ある子どもが学ぶ。(家庭ではできない)色々なことを教えてくれる。同世代が一緒に学ぶ。そういう場。
 ・多忙、業務改善、内部改善について
 □会社社長 会社でも書式などを見直したら、無駄、ダブりなどで1/4に減った。費用対効果の観点で見直し必要。業務量が増えるのは当たり前。優先順位が必要。その点、提言も「優先順位」を付けたことは評価できる。
 □中学校教頭 内部改善必要。校務分掌のスリム化や会議を減らすなど図っている。
 □県教委生涯学習企画課長(コーディネーター) 会場の参加者には、この提言を出して、本当にやってくれるのかという思いがあると思う。県教委としても、来年度(出張の)会議を1割減、報告書2割減らしたいと考えている。(失笑あり)
 □中学校教頭 調査の精選をお願いしたい。同じような調査や研修がある。校長の裁量権の拡大も必要。会議を減らすことも必要。市町によって学校管理規則や庶務規程が違うことも、同じようにするなど考えてほしい。
 中学校の教員定数増の提言(施策の優先順位で提言)はありがたい。教員は1日1時間の空きしかない。そこでは日記を見たりノートを見たり授業準備をする。6時間目が終わり掃除をして、4時から部活。教材研究をする時間がない。
 スクールカウンセラーの拡充もお願いしたい。現在週1の8時間か週2の4時間ずつ来てもらっているが、不登校の子どもなどが優先で、他の子については後回しになっているのが現状だ。もちろん、小学校でも同じだと思う。
 □会社社長 学校は企業と違うところがある。質が問われるから、定量的評価しにくい面が多いと思う。しかし効果測定は必要。定性的評価だけでは曖昧になりやすい。少しでも定量的評価をする努力をしてほしい。
 教科担任制の提言も重要。
 ICT化の提言については、コストがかかる。4,5年で変えなければならない。しかし便利、作業の効率化を考えて進めるべき。
 組織マネジメントについても権限の明確化が必要。組織をどう効率化するか。
 □委員 現場で変えていく感覚が必要。多忙と言っても、地域ごとや県内800校では、事情が違う。学校で多忙解消の手も打てる。そうなるよう教委が命令とアドバイスを行うべき。
 服務についても調べると県によって違う。権限の再配分も行うべき。
 人件費は90%。やはりここを増やすことも大事。
 □母親 施設の耐震化は必要。
 三者面談をして、小学校の教員の空き時間が週2コマしかないのを聞いてびっくりした。高校では授業は週18時間。小学校でも毎日空き時間が1コマを最低限必要。そのための支援員、しかも正規教員で補充してほしい。責任が違う。
 外国人の児童・生徒への支援のための雇用もやってほしい。
 □市教育長 市町が積極的に行わなければいけない面も提言には見られる。市では、個に応じたきめ細かな指導ということで、少人数学級、特別支援、外国人支援など配置。
 少人数学級は東京都を除く46道府県で行われ、90%以上が複数学年に拡大している。しかし静岡県は中1のみ。(遅れている。広げてほしい。)
 少人数学級の効果研修を行っている。独自テストや学テの質問紙調査など見ても学力でも心・生活の面でも確証できた。調査結果は年明けにも発表する予定だ。特に小学校低学年で35人以下、特に21〜23人で効果が上がっている。是非静岡県でも30人学級の実現を。期待している。
 □委員 「施策の優先順位」で、(小学校を入れず)中学校の教員定数増を提言したのは(という会場からの質問に対して)、中学校の教員の方が土日も含めて勤務時間が長い。また保護者の満足度でも中学校に不満が多かったからだ。小学校に必要でないというわけではない。
 (同じく非常勤職員・講師の多用について)非常勤の確保は現在でも大変。できれば正規でという気持ちは持っている。
 □市教育長 (文科省出身だから分かるのではの質問に)国は財政的に厳しい。貴重な税金を使う以上、数字で説得する必要がある。学校教育の目標は定性的だろうが、(教育予算要求には)部分的には定量的に計る必要がある。学テなどはその一つの材料。
 □課長 効果検証して予算を求める必要がある。
 □委員 主幹教諭導入の効果は、について。勤務実態調査で、教頭の勤務時間が極端に長かった。特定の一人がなぜ長いのか。業務の再配分をすべきではないか。学校もフラット(横軸だけ)では回らない。私も以前はボトムハット派だったが、色々役職を経験して変わってきた。もちろん、トップダウンにはしてはいけないが。 政策リマリスティック(?)で、主幹教諭導入で非常勤講師が増えるが。
 □課長 主幹教諭の導入は平成20年度からできるようになった。今年度静岡県はできなかったが、平成21年度から検討中である。教頭と主任の間という位置づけだ。
 □会社社長 努力すれば報われる社会が必要。企業も同じ。組織的で協調性も必要。
 □課長 (静岡県の中1支援プログラムについて)3クラス以上平均35人以上に、国は非常勤講師派遣だが、静岡県は少人数学級にすることができるようにしている。今8割が少人数学級、2割が非常勤講師派遣の選択をしている。
 □中学校教頭 勤務校の学校の中1は、150人。4クラスで37.5人になるが、その制度で5クラスにして30人学級になっている。クラスサイズが小さい効果は、教師の目が行き届く、把握しやすい。習得、活用、探究の新学習指導要領では、益々必要だ。中2,中3にも広げてほしいというのが、保護者のアンケートで多い。
 □課長 とすると、(標準を)「35人学級」とすれば、30人学級になる。一人1台のPCについて。ICT化効果。巨額投資。全員持っていても使いこなせているかどうか。また、小規模市町では財政的に一人1台は無理の声もある。県の援助も必要。
 浜松市教委のデータバンクづくりも学ぶべき。
 県教委は来年度事務局再編をして、指導主事を総合教育センター(あすなろ)に集中させる。
 □委員 (部活の質問について)部活の勤務には、校長命令は出せない。部活の分掌の人がお願いする形になっている。不思議な制度だ。何とかするようにとは、30年言っていることだが。勤務ではないのに責任はとらされる。トラブルもある。どの部活を持つか(持たないか)で、同僚の人間関係でもトラブル要因。
 □課長 県は特殊業務手当の改正案を県議会に出している。例えば部活で休日1日8時間出たら、今まで2000円だったが(注・制限がある。国は今度上げて2400円)今度静岡県は3200円にする。これは全国3位だ。(失笑あり)もちろん、桁がちがうじゃないかという声もあるだろうが。(休日勤務の時間外は1.35増しだから時間外手当だったら、3千円×8時間=2万4千円以上)
 県のマイナス12%シーリング(予算を一律12%減らせ)という中で、どうするか。
 この提言全部実現で、1800億円かかる。しかし既に実施している部分もあるので、純増で1400億円くらい必要。5年計画だから、1年間で280億円。県教委の予算が1年2800億円だからその1割になる。この要求は教育関係者だけが言ってもダメ。広く県民の声を。

 ・終わりに
 □中学校教頭 ある保護者から言われた。義務教育12年間は「ただ所属する」でなく「どう生きていくのかの12年間」と言われた。 
 今日の議論をより多くの人に広めていく必要がある。
 □会社社長 団塊の世代。集まると学校のこと、先生との出会い、失敗したことなどが話題。一生の思い出。競争原理、費用対効果、コスト構造を変えていくなどで成果を見せることが必要。
 □委員 学校で変えられる部分があるということを、みんなが試してみる。その手だてを知るだけで、自由になる。
 □母親 静岡県で新しい世帯・家庭を持つ環境…それには義務教育の充実が不可欠。静岡県で子育てができてよかったと思われるようにしてほしい。
 □市教育長 教育・学校には誰も関心を寄せている。現場の先生は、(改革を)そう言われると、今やろうと思ってたのに…と子どものように思うかもしれない。でも、調査でもやる気のある人が8割いる。子どもたちのために、という同じ方向に向かっていってほしい。

傍聴者・ 追;途中でパネリストに質問を出して、と言うので、?提言の「施策の優先順位」に「中学校の教員定数増」(少人数学級なのかは明言なし)を上げて、小学校を上げなかったのはなぜか??教育に臨時なし、非正規雇用が社会問題になっているのに、提言ではまた「非常勤職員・講師」を増やそうとしているが、それでいいのか?と質問紙に書きました。委員の発言の中で「回答」がありましたが、どうでしょうか?納得いくでしょうか?5年計画の中で、しかも「マイナス12%シーリング」を県が掲げている中で、優先順位に入っていなければ実現が難しいのではと思うのです。また、「官製ワーキングプア」と言われる公務での非正規雇用の拡大に対しても、もう少し危機感がほしいものです。
 最後に、アンケートがありました。欄外に「何年も前から組合が要求してきたことばかり」と書きました。(主幹教諭導入提言など、頂けないことも多いですが)
 子どもにも、保護者にも、そして「悲壮感を漂わしている」教職員にも優しい施策の実現を願います。