全教常任弁護団リレートーク 本会議代表質問への政府答弁に思う

                                         弁護士:田中隆

 5月16日、教育基本法「改正」案の趣旨説明と代表質問が行なわれた。OA化の波が永田町を洗い、翌日には速記録がDataで手に入る。

 なぜ法改正。「道徳心や自律心、公共の精神、国際社会の平和と発展への寄与等を重視した教育が必要だから」が「確定答弁」。法改正をしようとするのだから、「現行法ではなぜ道徳心・・寄与が教えられないか」が本来の「立法事実」だが、これを明示した政府答弁はない。答弁が右に触れれば国家主義教育となり、真ん中にとどまれば「改正の必要なし」となるひとつの急所である。

 自民党の代表質問はある意味で「明快」。「いじめ、校内暴力等の教育現場の問題やニート等の職業意識の低下には、規律・協調・道徳・公共を軽視してきた戦後教育のあり方が影響。だから変えねばならない」となる。現代社会の病理を、政治・経済の責任を隠蔽したまま特定の分野に押しつける論法。今回は教育や学校に照準が向いているが、軍事方面では「9条と平和ボケ」が、治安方面では「治安態勢と防犯意識」がやり玉にあがっている。どの分野にも通用するまことに安直な論法でもある。

 目標の「国を愛する態度」をどのように指導し、評価するか。「内心にかかわって評価することはしない」「内心に立ち入って強制はしない」が「確定答弁」。「内心に・・」の限定がついているから、「外に現れる態度は強制し、評価する」と言っていることになる。「我が国を愛し、その発展を願い、それに寄与しようとする態度」(鳩山質問への答弁)を示し続けることが強要されて、それで思想・良心の自由が保障されていると言えるだろうか。思想・良心の自由や信仰の自由をめぐる根源的論点である。

 以上、予想した以上にあけすけな基本法案審議の「さわり」。こんな「改正」を許してはならない。