特別委員会論戦はじまる

世論と運動を意識した自民質問

自民党の質問は、国民の世論と運動をとても意識しているものでした。もっとも気にしているのは拙速批判です。「平成12年、国民会議報告以来5年以上、一日中教審、教育改革フォーラム、タウンミーティングなど国民の声を聞いてきた」などと、国民感覚からかけ離れた弁明に終始する政府の姿が印象的でした。

この答弁を引き出す町村元文科相の質問は、「自分は22年前に教育基本法改正を主張した。森元総理はもっと前から主張している。」などと、「時代の変化」とする政府の「改正」理由説明とも矛盾するものでした。

また河村建夫文科相が、全教のちらしをかざしながら「戦争する国の人づくり」と書いてあるが、そんなことはないと否定してほしいと小泉首相に要求する場面もありました。

民主党案と意見の相違はない」

この日、特別委員会で民主党から「日本国教育基本法案」が提案されました。この日の論戦で小泉首相は、「与野党の意見の相違はない」「『態度を養う』と、『心を涵養する』の両者に大きな違いはない。十分審議を尽くせば、共通の認識となる。心も態度も大事だ。」などと答弁しました。宗教に関する教育の大切さを民主党藤村議員に問われ、小泉首相は「宗教心は大事だ。人間は万能ではない。人間を超えるものに対する畏敬の念が必要だ。多くのものに支えられ生きていることを教えるのが、宗教のもつ大きな力だ。」と述べました。

また、「教育基本法を変え、教育を変えることが大切だ」という民主党松本議員の質問に呼応する形で、教育基本法「改正」に関連して、小坂文科相は教育振興基本計画を策定すること、関連法案を「改正」すること、学習指導要領を改定することなどに言及しました。

教育財政をめぐる論議

OECD調査で、GDP対比の教育費で日本がもっとも低い問題がとりあげられ、日本政府の教育への姿勢として問題にされました。谷垣財務相も「日本が一番低いのは事実だ」と認めました。民主党は、はじめから日本が低かったのではなく、日本政府が50年間教育費を減らしてきた結果だと指摘しました。

愛国心の評価難しい」との重要な首相答弁

日本共産党の志位委員長は、福岡市の通知表を示しながら、「愛国心」を3段階で評価することについてどう思うかと問いました。小泉首相は「小学生にこうした中身で評価するのは難しい」と述べました。志位氏は、福岡市の「愛国心・通知表」は、学習指導要領の内容にもとづいたもの。それを今度は法で定めることになり、政府の改悪案は教育の道理から見ても矛盾していると追及しました。

さらに志位氏は、国の教育内容に対する介入の問題でも、「旭川学テ最高裁判決は、教育内容に対する国家的介入はできるだけ抑制的であることを述べている。法にもとづけばいくらでも介入できるとする『改正』案の内容は最高裁判決からも逸脱している」ことを指摘しました。

また政府が教育振興基本計画でもっともすすめたいと思っている、全国一斉学力テストについて、学校ごとの結果を公表し、学校選択制とも結び付けている東京の実例を示しながら、どれほど教育をゆがめ子どもたちを苦しめているのか指摘しました。これに対し小泉首相は、「一斉学力テストのどこが問題かわからない」と、一層競争の教育、「勝ち組、負け組」の教育を推進していく姿勢をあらわにしました。