本会議傍聴報告

5.16 教育基本法改正案本会議で趣旨説明される


               四ノ宮隆司

 午前中2時間の授業をした。2時間目は野菜作りの畑の準備。子どもに牛糞を運ばせ、私は耕耘機で土をうなう。授業が終わり耕耘機を小屋まで運び、着替えて学校を飛び出した。駅に着くと11:11発のひかりがちょうど到着したところだった。汗びっしょりで、東京に着く頃になってやっと汗がひいたかなという感じだった。

全教の呼びかけで集まった仲間はおよそ50人弱。
1時からの本会議を傍聴する。

Ⅰ 証券取引三法案一部改正に関する最終討論の後、採決に入り賛成多数で可決された。 最終弁論に立ったのは民主党の若手議員。自民党席からのヤジの声の大きさははんぱ  じゃない。マイクがあるのにあんなに「演説」するのは、ヤジに負けないためであ  る。

Ⅱ 前置きもなく、議長が教育基本法「改正」法案の趣旨説明を文科省大臣に求めた。

① 法案の趣旨説明と法案の概要の後、
最初に自民党下村議員が意見と質問に立つ。
次に、民主党鳩山議員
公明党太田議員
共産党石井議員
社民党保坂議員 と続き、15時5分に閉会された。

② 主な答弁

○ 「改正」の理由

   ・戦後60年経ち、教育を取り巻く環境が大きくかわった。こうした時代にふさわしい教育のあり方を考え、変えていく。
憲法を改正しなければ、改正できないというものではない。憲法26条(教育を受ける権利、教育の義務)で規程されているから。・・・・ここのくだりは意味がわからなかった。

愛国心

・国を愛する心と愛する態度との関係は、一体のものである。心と一体となって培われるものが「態度」である。
内心の自由を侵すものではない。あくまで態度を育てるという目標を定めたもので、児童生徒や教員の内心まで立ち入って評価するものではない。

○ 不当な支配

・一部の者による教育への介入があってはならない。
・行政が教育内容にかかわることができる。
      ※昭和51年最高裁判例
「国が必要かつ最低限の教育内容にかかわることは、最高裁判例が示している」

○ 教員の養成

・児童生徒と教員との人格的なふれ合い。教育の成果は、教員にかかっている    ・教員の身分の保障と・・・・は継続させた上で、免許法、研修等改善していく。
・全体の奉仕者が消えたのは、私立学校を含めた法律だからはずした。

○ 家庭教育の規程

教育の出発点として重要。そして第一義的責任があることを明記した。

子どもの権利条約のかかわり

文言はないが、理念は同質である   ● 与党協議会の内容公開については、内閣が答えることではない。円滑な話し合   い実現のためにどうするか考えていってほしい。

 民主党は、対案を出すと発表をした。その内容に基づいて鳩山氏は述べた。「なぜ愛国心ではいけないのか」と、自民党一部議員から拍手をもらいそうな内容であったが、小泉首相の姿勢と公明党との密室協議体制を厳しく弾劾したため、ヤジがわき上がった。
 
 公明党太田議員は、やたらと教育学者や哲学者の言葉を引用して、論述に箔をつけたかったようだ。聞いていて恥ずかしくなった。おそらく創価学会の理論的知的舞台の作文なんだろうから。また、彼は余分なことを言った。
「教育改革国民会議の17の提言」の履行を求め、文科省大臣はそれを約束した。
 
 石井議員は比較的穏やかに原則的に論述した。ヤジがすくなかった。「戦争する国づくり・・・・」と発言すると共産党を小馬鹿にしたような笑いが自民党席のあちこちから聞こえてきた。
 この連中は、自分たちがやっていることの意味が本当にわからないのか。「躾る」「道徳的」「諸外国と友好」であるための「改正」と信じているのか

  保坂議員は、挑戦的に述べた。「教育を大人の側からだけ見ていて、子どもの権利としての視点と文言がどこにもない」「教育勅語が果たした役目を思い起こせ」「非国民!!という心配がないのならどこに歯止めがあるのか」「不当な支配とは、一体誰がどういう理由で判断するのか」・・・・。従って猛烈なヤジがわきあがった。保坂議員はそれらと闘うように激しい口調で話を進めた。

文科省は檜舞台にのりたかったんだなあとつくづく思った。教育の問題が本会議に特別に表れることはほとんどなく、それは同時に文科省の他との力関係における弱さの背景でもあった。今回の「改正」は、文科省が積極的な役割を果たしていることが十分に見えた国会であった。
 それにしても品粗な本会議風景。そうそう、ヤジの中に数回「不当な支配が日教組だ」というのが聞こえてきた。「ちがうだろ!全教!と言えよ。今は日教組はお友達だろ。そんな状況も知らずしてよく政治家やってんな」
 この日から、日教組も国会前で座り込みの抗議行動を始めた。楽隊をつれて華々しくやっていた。ただ、人数は極めて少なかった。
 

● 傍聴にいくと不愉快になることが一杯ある。

知っていますか。傍聴席が狭く椅子が浅いから疲れて、私は足を組んだ。そのとき膝が少し高めに出していたら監視人がすぐにやってきて、足をひっこめろというのだ。以前郵政民営化の委員会を傍聴していたとき、近くの人が居眠りをしていたら、退席するように言われた。下にいる議員のかなりが居眠りをしているのに、私たちが居眠りをしたら退席って、どういうことなのでしょうね。傍聴席に入る前に荷物検査を受ける。できるだけ物を持って入らないようにと言われていたが、私はクリアファイルとその中にA版メモ用紙をはさんで入ろうとしたら、メモ用紙の1枚1枚を出して確かめられました。やられることはわかっていて、わざと持ち込んだのですが。

ところで、早口で答弁する小泉発言の中に危険な変更が含まれていたことが翌日の新聞で指摘されていた。(朝日)

◆ 愛国心をめぐる規定について、

「教員は法令に基づく職務上の責務として、児童生徒に対する指導を行っているもので、(教員の)思想、良心の自由の侵害となるものではない」と答えたことは、教職員が「良心の自由の侵害」を理由に愛国心の指導を拒むことができないことを示したものだ。一方、児童生徒については、これまでと何ら変わるものではない」
と。都教委の蛮行を認め、国もそうするよということなのでしょうか。