財政制度等審議会(財務省)は、どこを見ている!?

【全教談話】

財政制度等審議会の「財政健全化計画等に関する建議」について−

                                         2015年6月17日
                                     全日本教職員組合(全教)
                                        書記長 小畑 雅子

                                
1. 6月1日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、2020年度までの「財政健全化計画に向けた建議」を麻生太郎財務相に提出しました。
名目3%以上の経済成長率を毎年実現しても2020年度の基礎的財政収支が9.4兆円の赤字になるとの内閣府の試算に基づき、歳出の伸びを毎年5000億円程度に抑えるため、社会保障費の大幅削減と、教育、科学分野等の歳出増の抑制を主張しています。
大企業・富裕層優遇税制の是正などの歳入改革には触れず、軍事費も聖域扱いとしながら、医療・福祉・教育などの国民生活を犠牲にしようとするものであり、断じて認めることはできません。


2. 教職員定数については、少子化が進展し、2024年度までに標準学級数の減少等による基礎定数の自然減3万7700人に加え、標準学級当たりの加配定数4214人減とする「合理化」を「当然減」とみなして、計4万1914人減とすることが可能としています。

昨年度財務省は、「35人学級に明確な効果があったとは考えにくい」として、公立の小学校1年生で導入されている35人学級を従来の40人学級に戻せという主張を展開しました。

今年度は、地方自治体独自の35人学級については現在の教員定数でも担任外教員を活用すれば実施できるなどと国の責任を放棄し、学校現場の実態を無視した主張を展開しています。


地方自治体では、加配定数を活用した少人数学級が進められているため、実際の学級数は標準学級数より多くなっています。そのため、加配定数の「当然減」が強行されれば、加配定数も活用しながら実施している地方自治体独自の少人数学級が維持できなくなってしまいます。


もともと加配措置は単年度予算で措置されるため、その多くが不安定な臨時教職員での配置になってしまいます。
多様な課題を抱え、特別な支援を必要とする子どもたちが年々増加するなか、各自治体は子どもたちの学び・成長を保障するために、独自の少人数学級を前進させ続けています。
通級指導教室については殆どが加配定数で対応しているのが実態であり、ますますニーズは高まっています。
こうした自治体の努力と工夫を真摯に受けとめ、衆議院での「35人学級の実現に向けて鋭意努力していきたい」との、国民的要求を背景にした安倍首相答弁を積極的に受けとめ、不安定な加配措置ではなく、基礎定数を充実させた標準法の抜本的改正にもとづいた35人学級の確実な前進を今こそ行うべきです。


3. 教育予算増額の国民的要求の声に対しては、「児童生徒一人当たりの公財政支出額はOECD諸国と比べて遜色はない」としていますが、公財政支出は国と地方公共団体の支出合計であり、国のみの支出の比較ができるものではなく、国の責任を免れることはできません。
また、「義務教育関係予算のうち、教職員人件費が約90%を占めており」「教職員人件費に配分が偏っているという問題がある」としていますが、小泉内閣の「三位一体改革」により、人件費以外の国庫支出の地方交付税化がすすめられたことによるものであり、資本的支出(施設費など)を含めた総教育支出に占める教員給与の割合は諸外国と同水準になっています。
さらに、「その結果、児童生徒1人当たり教員給与支出は国際的にも高い水準となっている」と、あたかも日本の教員給与が国際的に高い水準にあるかのように述べていますが、「図表で見る教育2012」は、日本の教員の実質的給与は2000年から2010年の間に9%も低下しており、「日本の初等・中等教育の教員の初任給はOECD平均を下回っており、このことは、日本が優秀な高等教育修了者を教職に誘致するにあたって課題となっている」と指摘しています。


4.大学教育については、大学卒業者がより高い賃金を取得するなど、大学教育から受ける恩恵が大きいから国公立大学の授業料を私立大学並みに引き上げて、所得水準の低い家庭の学生を中心に負担軽減などの優遇措置を講ずる取組が必要としています。
高等教育における私費負担が64.5%(OECD平均30.8%、「図表で見る教育2014」)と異常に高い日本の実態を改善するどころか、さらに高めようとする財務省の姿勢は厳しく批判されなければいけません。
OECDの半数の国が大学授業料を無償としており、大学の授業料が有償でありながら給付制奨学金がないのは日本だけという状況を一刻も早く改善すべきです。


5. 全教は、教育予算の削減を無理矢理に導き出すために、机上の空論ともいうべき論理と恣意的な数字の操作を繰り返す財務省の姿勢を許さず、教育現場が抱えるさまざまな課題を解決するため、教育費の父母負担を軽減し、義務標準法を改正して国の責任で35人学級の前進と教職員定数を充実させることを強く求め、父母・地域住民とともにとりくみを強化していく決意です。                                
                         以上