木村裁判第8回口頭弁論開かれる

 2010年1月21日(木)11時30分から、新装なった静岡地裁木村百合子さんの公務外認定取り消し(公務災害認定)裁判第8回口頭弁論が開かれました。 
 その際のやり取りなどを紹介します。

 新たに原告(木村さん)からいくつかの準備書面・意見書が提出されました。

早出、持ち帰りなど時間外勤務の多さ

 その一つは、当時の木村さんが行っていた時間外勤務の実態についてです。基金は月に20時間程度(だから大したことない)と主張していました。6時頃には帰っていたという教頭などの報告に基づいています。しかし、実際は誰よりも早く学校に来て、7時過ぎから仕事をこなし、8時からの打ち合わせの前に職員にお茶を入れていたようです。その前に家では、5時頃起きて持ち帰り仕事をして7時に出勤していたとも。もちろん、PTA事業参加、飼育など休日出勤もありました。それらを少なめに計算しても、4月113時間、5月89時間、6月98時間、7月99時間、9月は亡くなるまでに95時間の時間外勤務があったと推定されるのです。明らかに過労死ラインです。

受け持ちクラスの大変さ

 また、3年から担任した4年のクラスへの引き継ぎによると、所謂「配慮児童」は多く、そのクラスが新採のための「楽なクラス」とは言えないというのです。しかもその引き継ぎ児童の中には、4年で大変だったという該当児は記載されていないこともわかりました。それ以上に「配慮」の必要な子が多かったということになります。

天笠医師(精神科)の意見書

 さらに、代々木病院精神科医師天笠さんが意見書を提出してくれました。(尾崎裁判の際にも重要な意見書を出していただきました。)意見書を出すに当たって、事前にご遺族や弁護士が天笠さんに面会したのですが、1時から9時頃まで、8時間にわたる「事情聴取」があったそうです。天笠医師が念入りに調べてくれていることがわかります。そして、『公務外認定処分原義』や09年4月6日に11年ぶりに改訂された労災認定に関わる厚生労働省の『心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針』と『判断指針別表1「職場における心理的負荷評価表」』に沿って、業務の過重性、精神疾患発症リスクがどれだけ高いか、公務のどういう仕事がなど精神科の専門家として意見を出してくれました。
 先ず、新採教諭としての視点で言えば、単に新人だから大変だと言うだけでなく、木村さん自身の諸事情も加味されることがわかります。木村さんは新採になる前に、同じ学校で講師をやっていました。従って新採と言っても、期待されている仕事の量や質に差があったと思われるのです。上記指針では、「配置転換」や「仕事の内容や量に多くな変化を生じさせる出来事があった」に当てはまるものです。
 また、学級崩壊になった事で言えば、一般的に大変であると考えられるが、指針に照らして見ると、「達成困難なノルマが課された」ことに該当します。
 さらに、支援体制が弱かったことについても、支援度の低さが指摘されています。

2つの研究・事業指定校

 尚、木村さんの勤めた学校は、木村さんが自殺された年を最終年に、2つの研究および事業指定を受けています。当該校のHPによると、『平成14年度〜平成16年度ソフィア(磐周教育研究所)研究指定校』『平成15年度〜16年度文科省教育の国際化推進地域指定事業センター指定校』となっています。1つの研究指定を受けるだけでも大変なのは、学校現場にいる者にはよくわかることではないでしょうか。それが2つ、しかも最終年度(発表年)が同じとなると、いったいこの学校はどうなっていたんだろうと、身震いすら感じます。現場の教職員に余裕があったのでしょうか。まして、新採先生をフォローする余裕があったのでしょうか。

 ※ 口頭弁論は、例によって10分程度の互いの書面や今後の確認に終始しました。裁判長を介した弁護士双方のやり取りは、聞こえにくい上に専門用語・略語の応酬です。従って、上記の内容は事後学習会での弁護士さんらの報告を聞き取ったものです。

次回第9回口頭弁論は、

3月25日(木)11時30分静岡地裁

資料

2009年3月20日 東京新聞 の記事 (注 改訂は4月6日)

職場のストレス時代に合わせ 過労うつの認定基準見直し

パワハラ』最強度扱い  
 厚生労働省は19日、うつ病などの精神疾患や自殺の労災認定基準を10年ぶりに見直すことを決めた。同日の専門家検討会で了承された。ストレスの強さを客観的に評価する「心理的負荷評価表」の項目を31から43に増やし、最も強いストレスの例として「パワーハラスメント」(パワハラ、職権を背景とした嫌がらせ)を新たに追加したのが柱。新年度からの認定審査に反映する。
 精神障害の労災は、厚労省が1999年に作成した心理的負荷評価表に基づき、労働基準監督署が発病前6カ月間について、職場で起きた出来事のストレスの強さを3段階で評価し判定。例えば、「重大な仕事上のミスをした」や「退職を強要された」などは、人生でまれにしかない出来事として最も強いストレスと評価される。
 見直し後は職場でのひどい嫌がらせやいじめ、暴行といったパワハラに伴うストレスも最も強いと定義。また、仕事を一人で抱え込むなど、業務を一人で担当するようになったことに伴うストレスを中度の強さと定義するなど、評価項目を計12項目新設した。
 さらに、部下とのトラブルなど計2項目のストレス強度を軽度から中度に引き上げるなど、計七項目の出来事について実態に合わせ修正した。
 見直しに当たり、厚労省研究班が2002年度と06年度に実施した研究結果を反映させた。研究では、会社で起きた出来事とその際感じたストレスの強さを東京、大阪、愛知など約6500人の労働者に聞いた。

◆見直し後の評価表

 労災認定基準見直し後の心理的負荷評価表の43項目は次の通り(▼は新設)。

【最も強いストレス】(6項目)

▽重度の病気やけがをした▽交通事故を起こした▽労働災害発生に直接関与した
▽会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした▽退職を強要された
▼ひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受けた

【中度のストレス】(20項目)

▽悲惨な事故や災害を体験した▽会社で起きた事件事故で責任を問われた▽ノルマが達成できなかった▽新規事業や会社再建の担当になった▼違法行為を強要された▼仕事で多額の損失を出した▼顧客や取引先から無理な注文を受けた▼達成困難なノルマが課された▽顧客や取引先からクレームを受けた▽仕事の内容や量に大きな変化を生じさせる出来事があった▽勤務時間が長時間化する出来事が生じた▽出向した▽左遷された▽非正規社員との理由などで仕事上の差別を受けた▽転勤をした▽配置転換があった▼複数で担当していた業務を一人で担当するようになった▽セクハラを受けた▽上司とトラブルがあった▽部下とトラブルがあった

【軽度のストレス】(17項目)

▼研修や会議の参加を強要された▼大きな説明会や公式の場で発表を強いられた▼不在になった上司の代行を任された▽勤務形態に変化があった▽仕事のペースに変化があった▽職場のOA化が進んだ▼早期退職の対象となった▽自分が昇進した▽部下が減った▽部下が増えた ▼所属部署が統廃合された▼担当外の業務として非正規社員の教育を担当した▽同僚とトラブルがあった▽理解してくれていた人が異動した▽上司が代わった▽ 昇進で先を越された▽同僚が昇進した