尾崎善子さんの公務災害認定(裁判)のための支援のお願い

裁判は

2月2日に第9回口頭弁論が行われ、前段の文書交換(お互いの主張・反論等)が一段落しました。今後は証人尋問など本格的な論戦が始まるだろうと思われます。後述するように、被告の「基金」側は「この程度の仕事で、うつ病自死するなら、誰にでも公務災害補償をすることになり、税金の無駄遣いになる」という基調で通してきています。

裁判所にも、教員の仕事の中身や密度などはなかなか理解されていないようにも見えます。

 つきましては、本裁判支援のために次のようなご協力をいただきたく、お願いするものです。また、あわせて裁判闘争におけるご助言・ご指導もいただけるとありがたいと思っています。


お願いしたいこと

(1)意見書の提出(書式等は自由です。)

・養護学級・学校教員の仕事の実態や苦労、悩み。

・一般的に教員としての仕事の実態や苦労、悩み。

・保護者、一市民から見ての教員の仕事の過重性。

・その他 教育の営みで当事者でないとなかなか理解できない仕事の中身。

(2)団体署名の提出

(3)個人署名の提出

(4)支援する会の事務局会議、対策会議へのご助言・ご指導

(5)その他 情報提供等

お問い合わせ・送付先は

尾崎善子さんの公務災害認定を支援する会 事務局

〒420一0004 静岡市葵区末広町1―4 静岡市教組会館内

TEL、 FAX 054−253−3331 (全教静岡)

   TEL    054−271−8438 (静岡市教組)

電子メールアドレス:zenkyoshizuoka@dream.ocn.ne.jp (全教静岡)

shikyoso@quartz.ocn.ne.jp (静岡市教組)

ブログ 『ともにー全教静岡』http://d.hatena.ne.jp/zenshizu/

概略と訴え

2000年4月、静岡県小笠郡(現・掛川市)の小学校に勤務していた尾崎善子先

生(当時48歳)は養護学級担任中、養護学校から養護学級へ転入したいと希望した多動性障害のA君(教育委員会の就学指導では、入学時、養護学校がふさわしい とされていた)の2週間にわたる「体験入学」を受け入れました。

実は養護学級に在籍していた2名の児童は、就学前にこのA君と幼児期を共に過ごしており、特に一人はA君からいじめや暴力による精神的・肉体的な被害を受ける経験を持っていました。そのため在籍児童の保護者は、例え2週間であっても体験入学が行われることに反対していました。尾崎さんも保護者の意を受け入れ、また就学前の様子を知る中で「体験入学」に反対しました。しかし「A君の両親に、養護学級転入をあきらめさせるための体験入学だから」との町教委等の無責任な判断で「体験入学」は強行されたのです。

心配したとおり、A君の体験入学によって授業が成りたたなくなり、在籍児童と築き上げてきた学級体制も崩されます。そして尾崎さんは、これによる著しい心身の負担から「うつ病」を発症してしまいました。その後、体調が思うように回復しないため、4月から休職し、症状の回復に専念しました。しかし、それから4カ月後の8月2日、志半ばにして「苦しい。もうこれ以上生きていけない」と自ら命を絶ちました。

ご遺族は、この件で

「公務災害の認定申請」をしたところ、地方公務員災害補償基金静同県支部(支部長は県知事)から「公務外」とされてしまいました。

そこで、支部審査会に審査請求しましたが棄却。その後、中央審査会に審査請求したものの3ヵ月経っても採決がないため、2004年8月、静岡地方裁判所に公務外認定処分の取り消しを求めて提訴したのです。(地方公務員のいわゆる「労災」認定はこのような段階で行われます。一般の労災に比べ、非常に狭き門になっています。)

私たちは、「尾崎善子さんの公務災害認定を支援する会」をつくって、支援を始めています。裁判は現在、書類の提出がほば終わり、いよいよ中身に入っていくところまで、進んできています。

教員の精神疾患増加とその要因

2004年1月に、高裁で逆転勝利判決を勝ちとった大阪の「鈴木裁判」も、同年9月に逆転認定された京都の「荻野裁判」も過労死に対する判決でした。「尾崎裁判」のような自死に対する「公務災害認定」は全国の中でもまだありません。
(注;岩手地裁での勝利判決があるようですが、高裁で棄却されたと聞いています。)

いま、教育現場では、教員の精神疾患が激増しています。文科省の調査によると、

2003年度に病気で休職した公立学校の教員は、

全国で5017人にのぼり、そのうち精神疾患による休職者は3194人、全体の53%をしめ、この10年間で2.7倍になったとされています。静岡県内では精神疾患がこの 10年間で約4倍に増えているという県教委の報告もあります。「教員特有の理由としては保護者や子どもとの関係が複雑化していることが一因と考えられる」と県教委は語っています。

 尾崎先生の事例は、けっして特例ではなく、いつでも、どこでも起こり得る事例なのです。

最近提出された基金側の準備書面を読み、基金側の言いたいことがはっきりしてきました。「尾崎先生の精神疾患は本人の弱さにあった」「体験入学は過重なものではなかった」「(わずか2名の生徒しか受け持たない養護学級の担任であれば、わずか1枚程度の簡単な学級通信を作成する)時間は、勤務時間中にいくらでもあるはず」の3点がそれです。

まず、1点目。

「公務起因性は、当該職員と職種等が同等程度の職員との対比において、同様の立場にある者が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価する必要がある」「客観的にさほど大きなストレスではないにもかかわらず、当該固体に精神疾患が発症した場合には、その原因は本人の脆弱性にあると結論せざるをえない」としています。

書面では、「家族の精神疾患による入院歴」「高校時代に不登校の時期があり、もともと精神面の脆弱性を有していた」「入院歴をみると、環境の変化に影響を受けやすいことがうかがわれ、ストレスに対して耐性が弱い」等々、家族や故人の病歴を都合のいいように利用したり、解釈したりした上で、「2週間の体験入学が客観的にみて精神疾患を発症させるほどのものではなかった」「公務起因性の認定基準には該当せず、本人の脆弱性にある」と決めつけているのです。

2点目については、

「就学判定時と比較すると、A君の問題行動は大きく改善されていた」「体験入学は慎重な教育的配慮に基づいてされた」ことで、あり、「体験入学中、いくつかの問題行動はみられたものの、A君の行動は障害のある児童の行為としてはあり得る範囲内」「期間中は関係機関の支援体制もとられていた」「A君と尾崎さんはずっと一緒ではなく、相手をしていない時間が相当あった」等とし、「体験入学は精神障害を発症させる程度に過重であったとは認められない」と論じています。(例えば「体験入学期間中は、殆ど母親が付き添ったのみならず、校長、教頭、教員のほか、東遠学園、養護学校児童相談所、町教委の職員も適宜授業に参加するなどの支援体制がとられた」「問題行動としては、唾吐き、失便、失尿、粗暴行為等が見られたが、障害のある児童の行為としてはありうる範囲の出来事であり、いずれも他の教職員等が対応できる範囲のもの」)

また3点目は、

私たちが尾崎さんの持ち帰り残業等を調べたものに対して、最近被告基金側から出された反論です。学級通信や体験入学中の記録などについて、持ち帰り残業の「証拠として特定されていない」「自宅で作成されたという証拠もない」「主張するほどの時間がかかったという証拠もない」とし、体験授業の記録は

「分量はわずかなものであり、実際にあった出来事を記載するだけであるから、作成にさほどの時間を要するとは思われない」ので、「時間・内容全てにわたって誇張があると言わざるを得ない。」と一蹴しているのです。

このような、「本人の脆弱牲に問題があった」とする基金側の結論は、到底認めることはできません。しかも、これを言わせているのが、尾崎さんのそして私たちの使用者である県知事(県教委と言ってもいいかもしれません)です。例え裁判係争中のことであっても、あまりにも非情・非道な言い方ではありませんか。

また、学校現場の現実を知らなすぎる、あるいは理解しようとしていないことが明らかです。

**尾崎先生の弟さんは、
「姉の死を無駄にはしたくない」「姉と同じような犠牲者を出してはいけない」と声を大にしで叫んでいます。私たち「支援する会」ではその声をしっかりと受け止め、同じような事態を引き起こさないためにもがんばっています。

裁判は次回4月13目(木)16時15分の第10回から、いよいよ証人尋問等本格的たたかいとなります。私たちは、証人依頼や「意見書」提出、「公務災害裁判の公正な判決を求める要請署名」(個人・団体)の取り組みを始めています。

つきましてはみなさんに大きな支援を要請します。私たちにぜひ力をお貸しください。