教員の長時間勤務に歯止めをかけ、 豊かな学校教育を実現するための全国署名を

教育研究者有志がよびかけた

「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、

豊かな学校教育を実現するための全国署名」

をおおいにすすめよう

2023.6.6 全教中央執行委員会

 

 「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育を実現するための全国署名」が始まりました

 5月30日、教育研究者有志20人が呼びかけ人となり「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育を実現するための全国署名」を開始しました。同日の記者会見では、学校現場の長時間勤務が、教職員未配置の深刻化の要因となっており「このままでは日本の学校はもたない」と危機感が語られました。6月1日には呼びかけ人から、全教に協力要請がありました。

 

「全国署名」が要求していることは次の3つです。

 

・教員にも残業代を支給すること

・学校の業務量に見合った教職員を配置すること

・これらを実現すべく教育予算を増額すること

 

 教職員の長時間過密労働を解消することは、子どもたちへのゆきとどいた教育を保障するために、また、教職員のいのちと健康を守り、教職員として、また一人の生活者としての充実した日々を生きるために待ったなしの課題となっています。

 

 全教の教職員勤務実態調査2022は長時間過密労働の深刻な実態を明らかにしました。1か月の時間外労働が過労死ラインをはるかに超えており、勤務時間中の休憩時間はとれていません。そして、授業の準備や子どもと向き合うこと、自主的な研修など、教職員本人がもっと時間をかけたいと思っていることが、勤務時間内にはほとんどすることができません。教職員はいのちと健康を削って勤務していると言っても過言ではありません。

 

 全教は、この間、どうすれば長時間過密労働を解消することができるか、シンポジウムや多くの教育関係者と懇談を重ねてきました。そのとりくみを通じて、長時間過密労働の解消がゆきとどいた教育の実現のためには欠かせないという問題意識を共有することができました。そして、長時間労働に法的な歯止めをかけるために、給特法を見直し、実際におこなった時間外勤務に対して手当を支払うしくみを設けること、授業の持ち時間数の上限を定めるなど業務を軽減できるように教職員を増やすこと、そのために教育予算を増やすことの3つの一致点を築くことができました。

 

 この3点は教育研究者有志の「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育を実現するための全国署名」の要求項目と一致しています。

 

 呼びかけ人は「これほど幅広い教育研究者らが共通の危機意識をもって全国署名活動にとりくむのはこの国の歴史でも初めて」とも述べています。「このままでは学校がもたない」という危機意識を共有し、子どもたちの学ぶ権利と発達と成長を保障する学校教育を実現するために、教育研究者にとどまることなく、教職員、保護者、地域、教育関係団体、教員志望の学生など、所属の違いを越えた幅広い共同を広げることが求められています。

 

 全教は署名用紙を用いて、50万筆を目標に、この署名のとりくむことを全国の組合員のみなさんによびかけます。全国連帯で、この署名をおおいにすすめましょう。

 

政府・文科省自民党の動き・・・時間外勤務手当を設けることに否定的

 「学校における働き方改革」をすすめている政府・文科省は、2022年に勤務実態調査を実施し、4月28日に速報値を公表しました。それに先立って、文科省有識者会議「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上等に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」で論点整理をおこない、自民党「令和の教育人材確保に関する特命委員会」も「提言」をまとめています。5月22日に文科大臣が中央教育審議会に「令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」諮問し、議論が始まりました。永岡文科大臣は来春の答申を受けて、給特法改正案を2025年の国会に提出すると述べています。

 

 給特法について、自民党の特命委員会は「教職調整額を4%から10%以上にする」「給料表に新たな級を設ける」「学級担任手当の創設」「将来的に時間外在校等時間を20時間程度にすることをめざす」などを提言するものの、時間外勤務手当については「とるべき選択肢とは言えない」と否定しています。文科省有識者会議の論点整理も時間外勤務手当については消極的な姿勢を示しています。これでは、現状の長時間過密労働を容認することになり、長時間勤務に歯止めをかけることはできません。現場の教職員の苦悩は解消されず、教員志望の学生も決して増えることはありません。

 

3つの要求項目の実現を求める圧倒的な世論を構築し、その実現のための施策を中教審の議論と答申に盛り込ませよう

 

 中教審への諮問事項は「第一に、教師の勤務制度を含めた、更なる学校における働き方改革の在り方について」、「第二に、教師の処遇改善の在り方について」、「第三に学校の指導・運営体制の充実の在り方について」の3つです。

 

 第一の事項は、学校・教師が担う業務にかかわる3分類や1年単位の変形労働時間制など、これまでの「学校における働き方改革」をさらにすすめようとするものです。しかし、全教および文科省の勤務実態調査は政府の「学校における働き方改革」の限界を示しています。この方向にすすんでも、現場の教職員の苦悩は解消されないばかりか、教職志望者を増やすことにもなりません。さらに検討項目に「教員集団の流動性や多様性を高めることに資する仕組みの在り方」など、期間限定任用の教職員をいっそう増やすことや、教職員の専門性を軽視することにつながりかねないものがあることは重大な問題です。

 

 第二の事項である処遇改善については、現職者を大切にし、教員志望者を増やすために当然必要なことです。議論の焦点は給特法の見直しになることが予想されます。

 

 第三の事項については、検討項目として柔軟な学級編制や教育活動、中学校への35人学級などがあげられています。「教師が教師でなければできない業務に集中できるようにするための教員業務支援員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学習指導員、部活動指導員等の支援スタッフの配置の在り方」という項目もあるものの、教員そのものの増員に触れていないことが問題です。

 

 中教審が、自民党提言や文科省有識者会議が設定しようとする議論の枠組みを超え、長時間労働を抜本的に解消するための実効ある施策を答申することが、今後の学校教育のあり方にとって決定的に重要です。だからこそ、いま、私たちの要求を「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育を実現するための全国署名」によって明確に示すことが求められています。そして、全国各地でこの署名の呼びかけ人を招いて学習会やシンポジウムなどを開催することにより、3つの要求の実現を求める圧倒的な世論を構築しましょう。