(全教談話)

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の強行に抗議する

2014 年7月1日
全日本教職員組合(全教)
書記長 今谷 賢二
 多くの国民が「戦争する国づくり」に反対し、「憲法9 条守れ」と声をあげ、国会を包囲するなかで、安倍政権は、本日、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強行しました。全教は、安倍政権の憲法破壊の暴挙に満身の怒りをこめて抗議します。
 

 憲法破壊の「閣議決定」がおこなわれても、戦争はしないと誓った日本国憲法の基本原則が変わるわけではありません。閣議決定を具体化する法案審議も、憲法の規定に制約を受けながらすすめられることになります。全教は、一切の「戦争する国づくり」への動きを許さず、憲法の基本原則を守り、いかすとりくみに全力をあげます。


 集団的自衛権の行使は、日本の国を守ることでも、国民の命を守ることでもありません。アフガニスタン報復戦争(2001 年)、イラク侵略戦争(2003 年)のようなアメリカが起こした戦争に、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事支援をおこなう、アメリカの戦争のために日本の若者の血を流すことを認めることです。昨年末の特定秘密保護法の制定、今春の武器輸出三原則の改悪などとあわせて、日米の軍事的一体化をすすめるものに他なりません。


 「集団的自衛権の行使は、憲法9条のもとでは許されない」ことは、長年の国会論議を通じて確立された憲法解釈です。この憲法解釈を変えて「海外で戦争する国」への大転換を、国民多数の批判や不安に耳をかさず、国会でのまともな論議もなしに、与党だけの密室協議をつうじて、一内閣の判断で強行するなど、あってはなりません。憲法の尊重擁護義務を課せられる内閣は、憲法を遵守し、憲法に従って行政を執行する責任を有するものであり、「行政権の行使としての解釈変更」など許されません。


 アジア・太平洋戦争では、日本の侵略によりアジア諸国の人々約2000 万人、日本国民約310万人の尊い命が奪われました。この悲惨な体験をふまえて、戦後二度と戦争をしないことを世界に誓ったのが、日本国憲法です。この憲法のもとで、日本の若者は、戦争によって殺されることも、人を殺すこともなく69 年を過ごしてきました。この事実は、学校と教育に希望をもたらし、いのちを大切にする教育実践の基盤となってきました。痛苦の歴史と憲法のもとで歩んできた戦後教育の重みを忘れてはなりません。


 戦後、私たちの先輩たちは、「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを掲げて、憲法をかけがえのない宝物として、すべての子どもの成長と発達を保障する民主教育の実践を積み重ねてきました。私たちは、この願いと歩みを引き継ぎ、子どもたちと平和の大切さ、戦争の悲惨さを語り合い、平和の中でこそ、子どもたちの未来を切りひらくことができると、憲法子どもの権利条約がいきる学校、教育、社会の実現をめざしてきました。集団的自衛権の行使容認、「戦争する国づくり」への道は、こうした私たちの願いや日々の実践に反するものです。安倍政権がすすめる「教育再生」はこの動きと一体のものです。再び子どもたちを戦場に送る道を許してはなりません。


 安倍政権による集団的自衛権の行使容認の動きに、全国各地で厳しい批判の声があがり、「戦争する国」づくりに向けた「暴走」を許さない運動が急速な広がりをみせています。全教は、この国民的なたたかいの発展を確信に、父母・国民のみなさんとの共同をいっそう広げ、憲法原則に反する一切の悪法を許さないたたかいをすすめます。

                                    以 上