東日本大震災支援ニュース第8号

全教・教組共闘 東日本大震災対策本部  2011 年4 月14 日(木)

被災地の教育委員会に、全国からの募金を届け、懇談

「子どもたちのため、教育の機会を確保するため、学校の再開のために、大切に使わせていただきたい」……福島県教委・次長が対応


 全教・教組共闘 東日本大震災対策本部は、4 月14 日から被災地の教育委員会を訪問し、甚大な被害に対するお見舞いの意を伝えるとともに、全国から寄せられた救援カンパの一部を届ける活動を始めています。


 この行動をすすめる全教・教組共闘代表団は、磯崎・全教副委員長(北村・全教委員長の代理、教組共闘連絡会事務局)、加門・日高教委員長(全教副委員長)、吉田・全教専門委員(前・全教書記次長)の3 人です。


 福島県教委には、4月14日午前9 時から義援金の贈呈と要請・懇談が行われました。福島県教委は、藤田充教育次長 が対応しました。
冒頭、磯崎・全教副委員長が震災で被災された県民のみなさんへのお見舞いと救援活動に尽力されている県教育委員会への敬意を表明しました。 また、全教としての支援募金やボランティアのとりくみを紹介したうえで、「被災した子どもたちや高校生たちを応援し、学校再開に役立てていただきたいとの思いで、義援金100万円をお持ちしました。ぜひ活用していただきたい」と述べて、目録を教育次長にお渡ししました。
 教育次長 は、これを受け取り、「みなさんの思いをこめた義援金をいただきます。子どもたちのため、教育の機会を確保するため、学校の再開のために、大切に使わせていただきたい」と述べました。

 加門・日高教委員長が、全教・教組共闘対策本部の活動についてニュースを渡し、本日提出する文部科学省あての要請書について説明しました。

 これをうけて、教育次長は、「伺った要請書と同趣旨のことを県教委として文部科学大臣あてにいくつも要請している。いくつか実現しているものもある」と応えました。


 最後に、磯崎副委員長が、「教育委員会として学校への支援をお願いするとともに、全教としても全国連帯で学校への物資支援をしていきたい」と述べ、協力をお願いし、教育次長は「義援金は有効に使わせていただきたい」と述べました。
 代表団は、引き続き14 日に宮城県教委と仙台市教委、15 日には岩手県教委を訪問する予定です。

全教、文科省に現地要望を踏まえた要請書を提出

 全教は、4 月14 日、文部科学省に対して、「東日本大震災被災に対する支援と教育活動の再開に向けての要請」を提出しました。


これは、対策本部などの議論を経て、全国代表者会議の論議や被災地の要望も加味しながら作成されたものです。要請書提出は、今谷・全教書記長、中村・全教総務財政局長が文科省を訪れ、初等中等教育教育企画課の大久保・調査係長に手交しました。


今谷書記長が、要請内容の趣旨を説明するとともに、重点項目を調整したうえで論議の場を設けることを求めました。



文部科学省宛要請書)2011年4月14日
文部科学大臣 郄木 義明 様       全日本教職員組合(全教)中央執行委員長 北村 佳久

東日本大震災被災に対する支援と教育活動の再開に向けての要請

 東日本大震災に関わって、文字通り昼夜を分かたぬご奮闘をいただいていることに心より敬意を表します。未曾有の大災害となった被災地では、地震発生から1 か月余が経過した今日においてもなお1万人を超える規模での行方不明者が存在し、被害状況の把握が遅れるとともに、再開に向けての見通しさえもてない学校も残されるなど深刻な事態が続いています。福島第1 原発事故が、この事態に拍車をかけ、事態をいっそう複雑で、困難な状況においていることも明らかです。こうしたなか、少なくない教職員が、自ら被災しながら避難所での業務をはじめ、子どもたちへの支援に力を注ぎ、教育活動の再開、新年度のスタートに向けて懸命の努力を続けています。今こそ、教育行政は、こうした教職員の努力を支え、励ます施策を具体的に展開することが求められています。


 全教は、災害直後の3月14 日に中央執行委員会のもとに東日本大震災対策本部を設置し、被災地の教職員組合と連携をとりながら、具体的な支援、救援のとりくみをすすめてきました。3 月30 日には、宮城県内に現地対策本部を設置し、役職員を派遣し、現地支援のとりくみを強めてきました。
また、3 月16 日付で貴職に対する緊急要請を提出し、被災地の状況に対応した具体策の実施を求めたところです。その後のとりくみを通じて明らかにされた被災地の状況と課題にもとづき、子どもたちを守り、教育活動の円滑な再開に向けての要求を取りまとめ、提出します。真摯に検討し、ただちに具体化いただくことを求めます。



1.子どもたちの安否確認をはじめ、被災した子どもたちを守り、学校の再開に向けた施策を充実させること。

(1)被災地では、今なお子どもたち、教職員の安否確認さえままならない状況が続いている。現地の教育行政機能の回復を支援し、一日も早い被災状況の全容把握と被災実態に即した支援策を具体化させること。

(2)現地の教育行政機能の回復と教育活動再開への支援を具体化させるための人的措置を講じること。被災した子どもと学校を支えるために、被災校、被災児童・生徒の通学校及び兼務発令校に対する教職員加配措置を講じ、その人数および配置時期を早急に示すこと。また、教育行政実務に習熟した各地の教育委員会職員の積極的派遣を促進すること。

(3)学校と教育活動の再開にあたっては、子どもたちと教職員のいのちと健康を最優先に考え、被災地における県段階の災害対策本部などとの情報共有を支援するとともに、現場教職員の意見も十分に聞いて、現場実態に即した対応を可能とする弾力的な対処を指導すること。その際、教育課程、授業時数などについて、被災地の状況を考慮した対応を徹底すること。

(4)被災した生徒への学費の全額減免など、国として特別な措置を講じること。また、返還義務のない特別奨学金(仮称)の創設など就学支援と予算確保に万全を尽くすこと。その際、一過性の支援ではなく継続的な支援によって教育を受ける権利が保障されるよう必要な予算措置を講じること。

(5)教育活動の再開に必要な物資について、具体的な支援策を講じること。特に、子どもの教育を受ける権利を保障し、教育費無償の原則にたって、被害を受けた児童・生徒に対し、学用品の無償給付など学習活動に不可欠な物品についての具体的な援助措置を継続的に講じること。

(6)被災地では、今なお公共交通手段の復旧が不十分であり、児童・生徒、教職員の通学・通勤手段の確保策を具体化させること。スクールバス運行などに対する財政支援策を講じること。また、通常経路と異なる通勤経路に対する実費支給など被災地の事情に対応した弾力的な手当支給を検討し、具体化すること。

(7)被災地及び遠隔地への避難生活を余儀なくされている児童・生徒に対するメンタルケア対策を拡充すること。スクールカウンセラーソーシャルワーカーなど専門職員を増員し、児童・生徒の状況に応じた配置を行うこと。

(8)避難地域での就学を余儀なくされている児童・生徒に対して、中長期的な視点に立った住居確保や通学手段に対する援助など支援策を充実させること。

(9)原発事故も契機に食材への汚染など看過できない事態となっていることをふまえ、被災地、被災地外における学校給食の安全確保と円滑な実施への支援策を具体化させること。調理場が被害にあっている学校については、学校給食再開のための予算措置を講じるとともに、当面の弁当配送などによる代替措置も含めて具体的な支援策を講じること。

(10)今後も相当に強い余震も想定されることから、学校施設の安全確認に万全を期すとともに、耐震チェックのための基準を明確に示し、専門家による耐震診断と補強工事を促進すること。

(11)流失校舎など学校施設の復旧に対する財政支援策を国の責任で講じること。全壊・半壊・部分壊したすべての私学の校舎について、再建・修復・補強に対して、阪神・淡路大震災時に適用した実質3分の2の財源補助を今回も適用すること。その際、仮設校舎の建築(リース)についても含めるものとすること。

(12)被災地では、原発事故によって立ち入り規制対象となった学校、大規模な津波被害にあった学
校などの復興にかかわって「当該校の廃校が検討されている」などの事態を生じさせず、地域に根ざした学校としての復興を推進すること。



2.特に被災地における障害児・者の生活支援、教育活動の再開に向けての支援策を充実させること。
(1)被災地の教育行政が、被災地における障害児・者の安否をはじめ生活実態などを把握するための支援策を講じること。

(2)医療的ケアを必要とする子どもたちへの医療器具、衛生用品の確保に万全を期すとともに、個別事情に対応したケアが行われるよう支援策を講じること。

(3)被災地における特別支援学校の通学手段としてスクールバスの確保と円滑な運行に向けての支援策を講じること。

(4)放課後ケアや通学支援サービスの現状を把握するとともに、教育活動の再開に向けてサービス利用に支障が出ないよう支援策を講じること。


3.自らも被災した教職員の現状を把握し、それぞれの事情に対応した具体的な支援策を講じること。
(1)住居の滅失、家族の被災、原発被災地域居住など甚大な被害を受けた教職員の実態をていねいに把握し、それぞれの個別事情に応じた支援策を講じるとともに、被災状況に応じた人事上の配慮を行うなど具体的、個別的な対処を徹底させること。

(2)被災家族が県外に避難しているケースや子どもの養育、老親の介護などが必要となっている教職員、県外避難などによって通勤不能となっている教職員などに対して、特別休暇の弾力的運用、学校運営を支える加配教職員の配置など支援策を具体化すること。

(3)津波被害等によって、通勤及び勤務にも不可欠な自家用車を失った教職員の通勤手段を確保するとともに、損失自家用車に対する公的保障を具体化すること。

(4)被害にあった教職員に対する支援策の拡充に向けて、公立学校共済組合等の関連機関との連携を図り、緊急融資、返還期間の延長、分割返済の猶予など緊急の具体策を検討すること。

(5)被害にあった教職員について、教員免許更新制に係る修了確認期限を延期させる措置をとること。

(6)被災地の実態も踏まえ、初任者研修制度縮小など教職員研修の抜本的見直しを行うこと。


4.地震津波による被害及び原子力発電所事故を契機に居住地を離れている子どもたちへの支援策を具体化すること。また、原発事故と教育活動に関わる安全確保策を徹底させること。
(1)居住地を離れて新学期を迎えた児童・生徒について、転入学手続きを簡素化するなど取り扱いの弾力化を周知し、円滑な就学を支える体制と具体的な対処を徹底させること。

(2)被災地における学級編制において、地震発生日を基礎にした学級編制及び教職員配置を行うとともに、居住地を離れて就学する児童・生徒の扱いについても年度途中で戻ることを想定した学級編制を行うなど柔軟な対応を周知、徹底させること。

(3)被災地外においても、居住地を離れて就学する児童・生徒への対処など教育活動を円滑にすすめるうえで必要とする学校への教職員加配を具体化すること。

(4)原発事故による影響下にある児童・生徒について、原発事故の現状に照らした安全・安心確保策を確立し、周知、徹底させること。特に、児童・生徒、保護者、教職員が落ち着いて教育活動を再開できる安全、安心のきめ細やかな基準の策定を重視し、情報の周知と明確な方針を提示すること。

(5)原発事故によって県内外に避難している高校生等の教育保障に万全を尽くすこと。


5.被災地救援にかかわる人的派遣を促進すること。
(1)被災地支援のための公務派遣について、制度の周知を図るとともに、積極的な促進策を講じること。その際、週休日活用による公的派遣と事後策の検討をすすめ、早急に対応策を提示すること。

(2)各地の学校運営と教育活動と被災地支援を両立させる観点から、退職教職員などの積極的活用策を検討し、被災地の現状に照らした人的派遣が具体化できるよう、都道府県教育委員会等との連携を強化すること。


6.高校卒業生等に対する内定取り消しについて、労働局等関係機関との連携を強化し、企業、経済団体への強力な要請を行うなど事態の解決に向けた対策を実施すること。