2010年人事院勧告について(声明)

全日本教職員組合 中央執行委員会

1.人事院は本日8 月10 日、一般職国家公務員の給与等の勧告と報告をおこないました。

 賃金に関しては、民間との較差が「マイナス0.19%、マイナス757 円」であったとして、中高齢層(40 歳台以上)が受ける俸給月額を平均で0.1%引下げる改定に踏み切ったうえ、一時金も昨年に引き続き0.2 月引下げるとする勧告をおこないました。

 また、55 歳を超える者であってかつ行政職(一)6 級以上の職員の賃金を1.5%一律削減することも勧告に盛り込みました。

 この勧告が実施された場合、平均で9.4 万円の賃下げとなります。一時金については2 年連続の大幅削減であり、年間3.95 月というのは、今から47 年前の1963 年の水準です。2 年間で合計0.55 月分の一時金削減は、公務員労働者の生活設計に重大な支障をもたらすものです。地域での給与水準において「標準性」を持っている公務員賃金の水準引き下げは、全国の公務員だけでなく、民間労働者や地域経済にも大きな影響を与えるものです。

2.全教は「賃上げでこそ景気回復を」「貧困と格差の拡大から、労働者・国民の生活を守ろう」と呼びかけ、最低賃金の引き上げを求めるとりくみや公務員賃金削減が一つの争点となった参院選での政治的な力関係を変えるとりくみとも結合して、夏季闘争をたたかいました。
 とりわけ、人事院が今年の勧告1ヵ月前に、55 歳を超える職員の給与に一定率を乗じて削減することを突然提案したことに対して、全教は公務労組連絡会に結集し、提案の撤回を基本に組合との誠意ある協議・交渉を求め、とりくみを強化してきました。交渉では、特定年齢層を対象にした賃金削減が、法に定められている生計費原則や職務給原則を無視した公務員賃金制度の根本的改悪であることを明らかにし、その姿勢をきびしく追及しました。そして、労働基本権が制約されている中で、人事院がその代償機関としての役割を発揮することを強く求めてきました。

3.たたかいでは、人事院総裁に向けて、賃金改善を要求する職場要求署名66,376 筆と臨時非正規労働者の処遇改善をもとめる要求ハガキ運動、文科省の概算要求にむけた「えがお署名」提出行動を組み込み、526 名の参加による7・28中央行動、東京と近県の構成組織から5日間で約140 名が参加した最終盤における人事院前の座り込み行動およびその行動と呼応した2,819 に上る要求決議の集中など、職場・教職員の積極的な立ち上がりを背景にしたとりくみを大きく展開しました。
 このようなたたかいが、人事院が一時金削減の勧告は強行したものの、当初提案した55 歳を超える全員を対象にした賃金の定率削減を押し戻し、管理職層に限定せざるをえなくさせる力になったことは明らかです。

4.勧告では、給与構造の見直し措置が今年度をもって完結することを踏まえ、民間労働者より低い水準にある43 歳未満(2011 年4 月1 日現在)の者に、来年4月に1号俸上位に調整するとしました。このことは、遅きに失したとはいえ改善措置であり、初任給の引き上げをはじめ更なる若年層の賃金改善が求められます。

 また、報告では、私たちの粘り強いたたかいで、国家公務員の日々雇用職員の制度を廃止し、不十分ながらも雇用の安定化につながる「期間業務職員制度」が発足するとともに、非常勤職員が育児や介護にかかる休暇を取得できるよう法改正への意見の申し出を行うとしました。引き続き、「官製ワーキングプア」の解消をめざす立場から、地方公務員への適用改善をはかるとともに、「均等待遇」をめざした抜本的改善を強く要求するものです。

5.人事院は65 歳への定年延長と病気休暇制度の改悪についても、今年の報告の中に盛り込みました。
 定年制の延長は年金支給開始年齢の引き上げへの対応で出されており、それだけに真の実効あるものとするために、賃金の引き下げを伴わない定年年齢の延長や大幅な定数改善、介護休暇や病気休暇制度の改善、多様な働き方の選択の保障を求め、全教は引き続きたたかいすすめるものです。

6.昨年に引き続き地域ブロック別官民較差が公表されました。今後、政府は、地方に対して国家公務員に準じた措置とともに、「地域の民間給与の更なる反映」を強く指導していくことが予想されます。 
 地域ブロック別官民較差の公表が、地方においては賃金引き下げ圧力として強く影響することが危惧されます。地方確定闘争にむけ、疲弊させられている地域経済における人事委員会勧告の社会的影響を広く訴え、人勧制度を否定する独自カット問題をはじめ、地域格差拡大に反対する運動をさらに強化することが求められています。

7.教員給与については、2010 年度政府予算で「義務教育等教員特別手当」の3 年連続削減と障害児学級・学校の「調整額」の2 年連続削減が盛り込まれています。こうした政策的な賃下げの強行は、一時金を含めた大幅なマイナス勧告とあわせて、教職員の生活をますます厳しいものにしています。

 あわせて、給与構造改革の完成とあわせて、新たな職の設置や評価結果の処遇へのリンクも広がる危険性が増大しています。
 
 私たちは、あらためてCEART第4次勧告が「昇給とボーナスに関わる業績評価制度の今後の設計と実施を、教員を代表するすべての教員団体との誠実な協議と合意のもとでおこなうよう、すぐに措置を講じるべきである」としたことにもとづいて、文科省と地方教育委員会に引き続き改善を求めていくものです。

8.全教は、あらためて政府に対し、生計費にもとづく賃金改善をおこなうことで、公務員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいをさらにすすめていくものです。
 同時に、憲法と教育、国民のいのちと暮らしを守るたたかいと結合し、労働基本権の全面回復、教職員賃金水準の確保と均等待遇の実現、地域格差拡大反対、教職員諸手当の見直し改悪反対、差別賃金制度の導入阻止のため、全力でたたかう決意を表明します。                            

以上

人事院勧告2010については、下記参照
http://www.jinji.go.jp/kankoku/h22/h22_top.htm