教員への政治活動規制強化の動きに反対する〜憲法で保障された主権在民の具体化こそ求められている〜

全日本教職員組合(全教)  書記長 北村佳久

 3月10日、自民党みんなの党は、国家公務員と同様に政治的行為の制限に違反した教員に対して刑事罰(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)を適用するとした教育公務員特例法の「改正」案を衆議院に共同で提出しました。

 本来、教員にも憲法14条による法の下の平等、同19条による思想及び良心の自由、そして同21条による集会、結社、表現の自由がいずれも保障されなければなりません。これは、主権在民基本的人権尊重の憲法の基本原則から導き出されるものです。

 全教は、1991年の結成時に綱領と行動綱領で「資本と政党からの独立、一致する要求に基づく行動の統一」という基本原則を高らかに宣言しています。それは、組合員に特定政党支持を押し付けることは、憲法19条が定める思想及び良心の自由を侵害するとともに、要求で団結すべき組合の基本的性格をゆがめるものであるという立場に立つからです。その立場から、大会方針でも「組合員の政党支持の自由、政治活動の自由」の保障を明確にしているところです。

 現在でも関係法律等で教員の政治的行為に対しては様々な規制がおこなわれていますが、北教組の「違法献金」事件を入り口にして提出された教員への「刑事罰」適用を科すための教育公務員特例法の「改正」案は、憲法原則をさらに制約するものであり、全教は厳しくこれに反対するものです。

 こうした日本の教員を含む公務員への政治活動の制限は、国際的にも異常と言ってよいものであり、2008年10月には、国連自由権規約委員会が「締約国は、国連自由権規約第19条および第25条の下で保護されている政治活動および他の活動を、警察、検察官および裁判所が過度に制約しないように、表現の自由参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」と日本政府に対して勧告しています。

 見直されるべきは、憲法で保障された主権在民基本的人権尊重の基本原則を制約する現行の国家公務員法地方公務員法、教育公務員特例法など関係法律の諸条項です。

 なお、教員がその地位を利用して行う選挙運動については、公職選挙法刑事罰の適用を含めてすでに厳しく規制されているところです。

 川端文部科学大臣は、3月2日の記者会見等で、刑事罰適用のための改正を前提にするのではないとしながらも「教育公務員特例法の一部改正がおこなわれた議論なども踏まえて慎重に検討する」との考えを表明していますが、憲法原則と国際基準を踏まえた検討が行われるよう強く求めるものです。