東京高裁の不当判決に抗議する

(全教談話)
   全日本教職員組合(全教)       書記長 北村佳久

  昨日、埼教組川口市教組の時間外勤務に関する措置要求に対する人事委員会判定の取り消しを求めた裁判で、東京高裁(大坪丘裁判長)は、原告の請求を棄却する不当な判決を下しました。

  2004年に埼玉県川口市内の小・中学校の教員6名の教員が、長時間過密労働の是正を求めて、県人事委員会に対して措置要求を申し立てましたが、県人事委員会は2006年3月にすべて棄却しました。これに対して、原告の3名が2006年8月に人事委員会の棄却決定の取消を求めて埼玉県を被告としてさいたま地裁に提訴しましたが、2008年3月にさいたま地裁は原告の請求を棄却する不当な判決を下したために、東京高裁に上告し争われてきたものです。

  昨日の東京高裁の判決は、次の点において、重大な問題点を持つ不当なものです。

  第1に、給特法の規定を、労働の量と無関係に教職調整額が支払われていることで、自主的・自発的労働分は労働時間にカウントしないとしたものいうことができる、と決めつけたことです。

  第2に給特法は「労働基準法の専門的裁量労働(38条の3参照)に似た面がある」とし、「みなし労働時間が適用される労働者と同程度に、労働時間の把握・管理を行えば足りうるものと解される」と踏み込んだ判断を行っていることです。
 
  こうした判断は、「原則として時間外勤務は認めない」と明確に規定した給特法について、さいたま地裁判決以上に恣意的な解釈を持ち込む不当なものです。
  判決自身が、一方で「自主的自発的教育活動部分といえども・・・『労働時間』に含まれるものである」としていることとも矛盾しますし、何よりも労働安全衛生法文科省の勤務時間の適正な把握をすすめる方針に反するものであり、また厚労省が専門業務型裁量労働制を導入できる対象を19業務と限定していることを逸脱したものといえます。

  言うまでもなく、教職員の労働は「裁量労働」でもなければ、「みなし労働」でもありません。そうしたゆがめた論理を、あえて構築することで不当な判決を導き出したことにたいし、憤りをもって抗議するものです。

  この間の私たちのたたかいは、教職員の長時間過密労働問題に対して、学校職場における勤務時間把握や労働安全衛生法に則った様々な改善など、大きな前進を生み出してきました。

  今日、教職員の長時間過密労働と健康破壊は、一刻の猶予も許されない状況にあります。

  ILOユネスコ「教員の地位に関する勧告」6項は、「教員は専門職にふさわしい地位や労働条件を享受すべき」と宣言し、8項では「教員の労働条件は、効果的な学習を最もよく促進し、教員がその職業的任務に専念することができるものでなければならない」ともしています。さらに、90項では教員の労働時間決定にあたって労働負担とならないよう考慮すべき事項を示しています。

  これらは、子どもたちの教育を受ける権利を保障するために必要なことであり、政府・文科省、各教育委員会は当然尊重すべきことです。

  全教は、引き続き教職員定数増を基本に慢性的な長時間過密労働の是正にむけた諸施策の具体化を強く求めるとともに、労基法第37条に基づく「時間外手当」が支給される法改正にむけたとりくみなど、教職員が生きいきと働き続けられる学校づくりをめざし、奮闘するものです。

以上