教員の勤務時間

2001年10月30日参院文教科学委員会質疑から

教員の勤務時間 命令外の超過分も記録対象
文部科学大臣   遠山 敦子君
政府参考人 総務省自治行政局公務員部長   板倉 敏和君
      文部科学省初等中等教育局長   矢野 重典君

○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。
 子供たちに行き届いた教育を行う上で、教職員の多忙の問題、もう本当に忙し過ぎるという問題の解決が求められていると思います。その点についてきょうはお伺いをいたします。
 きのうの、十月二十九日のマスコミでもこの問題は取り上げられて、国立教育政策研究所の調査なども紹介をされているところでございます。
 私は、ことしの五月にこの問題、教職員の長時間過密労働について取り上げて質問をいたしました。その点について再度伺いたいわけでございます。
 四月の六日に厚生労働省から出されました、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」の通達につきましては、その委員会の中で、総務省からは、四月二十七日に通知を行って、教育委員会も対象になると答弁されました。また、文部科学省からは、厚生労働省の基準は私立学校の教職員には当然適用され、公立学校教職員にも基本的には適用されると答弁をされております。
 そこで伺いたいのですが、一つは、総務省のおっしゃった教育委員会も対象になるという点につきまして具体的に伺いたいと思います。あわせて、文部科学省からは、公立学校教職員にも基本的には適用される、この具体的な中身について伺いたいと思います。
○政府参考人(板倉敏和君) 総務省といたしましては、地方公務員には原則として労働基準法の適用があることから、従来より労働基準法に関しまして各地方公共団体に必要な情報提供を行ってまいっております。
 厚生労働省が定めた基準は労働時間を適正に把握するためのものでございまして、その点につきましては公立学校の教職員も基本的に対象となるものでございます。したがいまして、教育委員会も対象となる旨お答えをしたところでございます。
○政府参考人(矢野重典君) 私の方からは、地方教育公務員についてのお答えを申し上げたいと思います。
 地方公務員にもこれは適用されるわけでございますので、当然のことながら公立学校の教職員にも基本的に適用になるわけでございまして、具体的には、この基準の項目のうち、一般的に申し上げますと、少し細かい話で恐縮でございますけれども、始業・終業時刻の確認及び記録についての項目でございますとか、またその確認、記録の原則的な方法についての項目、さらには労働時間の記録に関する書類の保存に関する項目、また労働時間を管理する者の職務に関する項目、こうした項目が適用になるものと考えているところでございます。
○畑野君枝君 そうしますと、総務省に伺いたい、確認したい点ですけれども、教育委員会も対象になるということは当然学校にも周知徹底されるということになるわけですか。
○政府参考人(板倉敏和君) そのように考えております。
○畑野君枝君 次に、文部科学省に御確認なんですが、労働時間の適正な把握の問題につきましては、当然、始業・終業時刻の確認及び記録と言われました。
 そこで、始業・終業時刻なんですけれども、これは、例えば命令のない超過勤務というのも始業・終業時刻の確認及び記録というのに入りますか。
○政府参考人(矢野重典君) 個々のケースでその判断が難しい場合もあろうかと思いますが、一般的には命令のない勤務につきましても始業時刻に入るものと思っております。
○畑野君枝君 そうしますと、命令のある超過勤務ですとか部活動などについてもこれは当然入るということでよろしいですか。
○政府参考人(矢野重典君) そのとおりでございます。
○畑野君枝君 今御説明があったわけでございますけれども、現場の教育委員会に聞きますと、そういうことが徹底されていないような実態もあるやに伺っているんですね。
 そこで、私、ぜひ文部科学省といたしましても、こうした厚生労働省の通知について、いろいろな手だてを尽くしてきちっと現場にまで徹底されるように必要な措置をとる必要があるのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○ 政府参考人(矢野重典君) 先ほど申し上げましたように、この基準につきましては地方公務員である教育公務員についても適用があるわけでございます。そういう意味で、私どもといたしましては、この基準につきまして、各種会議の場等におきましてその趣旨あるいはその内容について周知を図ることなどによりまして各教育委員会に対し教職員の勤務時間管理を適切に行うように指導してまいりたいと考えているところでございます。
○畑野君枝君 何か会議以外に具体的に出すとか、そういうことは考えていらっしゃるんですか。
○政府参考人(矢野重典君) 当面、今考えておりますのは、人事主管課長会議等の勤務時間管理を扱う、そういう会議において指導いたしたいと思っております。
○畑野君枝君 いろいろな手だて、例えば総務省につきましては通達が出されているということでございますが、各省庁連携しながら、あらゆる手だてを通じてこれを現場にまで徹底させていただきたいというふうに思います。
 そこで、もう一つの問題としてなんですが、先ほど少し申し上げました国立教育政策研究所がことしの九月に学校・学級経営の実態に関する調査の報告書を速報版ということで出されております。その中では、小学校の教員の学校で仕事をする時間は九時間四十二分、睡眠時間は六時間二十分。同時に、持ち帰り仕事があるということで、自宅に戻ってからも採点や授業の準備などに一時間十七分費やしているという報告が出されております。これは全国の公立小学校千百五十四校、六千六百十四人の教員を対象に行われた、ことし三月のかなり大きな調査であります。
 この調査の中で私、注目をいたしましたのは、持ち帰り仕事の点に触れていることでございます。この持ち帰り仕事の問題は、この間も申し上げましたが、過労死の問題ともかかわっておりまして、私は、ことし、二〇〇一年二月に大阪高等裁判所で判決が出されました京都教員過労死裁判のものを国政調査権最高裁からいただきました。読ませていただきました。一言で言えば、持ち帰り仕事が常態化していることや、あるいは職務内容のストレスが有力な原因となって過労死が起きているという認定になっているわけなんですね。
 それで、文部科学省としては、先ほど終業後の命令でない超過勤務についても基本的には今後始業・終業時刻の確認となるというふうにおっしゃいましたけれども、そういう実態、あるいはそれにかかわっての持ち帰り仕事を含めましてきちっと把握をするべきではないかというふうに思っているのですが、その点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 先ほどお話がございました持ち帰り仕事、これは当然のことながら労働時間には、勤務時間には含まれないものでございますが、そうしたことも含めて、公立学校教職員の勤務の実態そのものについては私ども調査を実施していないところでございます。
 この点につきましては、さきの国会においても私ども申し上げましたけれども、公立学校の教職員の勤務時間、これは服務監督権者であるそれぞれの教育委員会が、また私立学校につきましては教職員の使用者であるそれぞれの法人がその権限と責任において適切に管理すべきものであるというふうに考えているところでございます。
 しかしながら、教職員が心身ともに健康を維持し児童生徒への教育に携わるためにも、教職員の勤務時間を適切に管理することは極めて大事なことでございまして、そういう意味で、私ども、先ほどの通知の趣旨も踏まえながら、各教育委員会に対しまして教職員の勤務時間の管理を適切に行うように指導をしてまいりたいと考えているものでございます。
○畑野君枝君 趣旨を徹底しているのは当然なわけですけれども、それを本当に改善していくためにもやはり実態をきちっとつかまなければその方向は出てこないというふうにも私は思うわけです。
 それで、教職員の特殊性というのはこの間も議論されてまいりましたけれども、今、本当に子供たちの願いにこたえて、教育現場で教職員の皆さんが本当に努力、苦労されておられるというふうに思います。
 例えば、これは神奈川県の藤沢市が市立中学校三年生の学習意識調査の報告書というのをことし三月に出されております。
 三十五年間にわたっての比較研究というふうになっているわけなんですが、その中では、例えば、この三十五年間の中で、「勉強はもうしたくない」という「勉強の意欲」については、一九六五年が四・六%だったのが二〇〇〇年には二八・八%、このように六倍にふえているという子供たちの意識の変化がございます。
 その一方で、「授業に期待する事柄」は何か。この多い中身というのが、これは、勉強がほとんどわからないというふうに言っている生徒と、よくわかると言っている生徒それぞれに聞きましても、共通して言われているのが、一つは、「楽しくリラックスした雰囲気の授業」とか、それから「自分の興味や関心があることを学べる授業」ということで、非常に先生も努力をしていい授業にしていく、そのことが子供たちからも求められている、こういう調査報告も出されております。
 これに本当にこたえようとしていけば、やはりいろいろな形で、時間内に終わらなければ持ち帰りの仕事が出てくる、ですから、それをそうしなくても済むような状況に、学校の時間内にできるような、そういう体制をつくっていくことが私は必要だというふうに思っております。
 そういう点では、横浜市のある学校の先生から伺いましたら、ことしの四月から十月まで、自分は放課後どんなふうな仕事をしているかというのを毎日つけていらっしゃるというのを見せていただきました。例えば九月一日。これは夏休みが終わった最初の新学期の土曜日ですけれども、学校を出た時間というのは十七時で、四時間四十五分長く学校にいて働いたと。主な仕事は三、四年の打ち合わせ、学年研、週案作成というふうになっておりますけれども、それ以外にも持ち帰って仕事をしている、そういう記録もつけられているわけでございます。そういう点からも、きちっとした勤務の状況をやはり全体がつかんで改善していく、そういうことが必要になっている。
 私は、五月に委員会で、こうした勤務の実態把握を厚生労働省総務省とも協力しながら進めていただきたいというふうに質問いたしましたら、遠山文部科学大臣からは、そういう方向は必要であろうというような答弁もされました。
 ことしの八月に、国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解というのが出されまして、日本に対する勧告が出されております。例えば、教育システムの包括的な見直し、ストレスの多い状況を直すということも言われておりますし、それから労働時間の削減、これは公的部門及び私的部門を含めて労働時間の削減ということが言われております。
 ですから、本当にいい教育をしていくために、こうした教員の多忙の実態、子供たちと本当にかかわっていく時間すら奪われている、本当に過労死するか、それとも本当にあとはやめるかと、そういうふうに追い込まれている先生もいるわけですから、こうした実態を明らかにする必要な調査をすべきではないかと思いますけれども、文部科学大臣いかがでしょうか。
国務大臣遠山敦子君) 本当に教育の成否は教師にありということでございまして、教職員が心身ともに健康を維持しながら児童生徒への教育に携わるということは大変大事なことでございます。各教育委員会等に対しまして、私どもとしましても、常に教職員の勤務時間管理を適切に行うよう指導してまいっておりますし、今後ともそういう姿勢でまいりたいと思っております。
 先般五月二十四日の質疑のときのことが紹介されましたけれども、そのとき私が答えましたのは、そういう方向でという意味は、一般的に教員の勤務時間の適正化を図ることは必要であるという趣旨でございまして、文部科学省として勤務実態把握を行うということではございません。
 なお、服務監督権者である各教育委員会が、その権限と責任において必要に応じて教職員の勤務時間管理の実態調査を独自に行うことはもちろん可能ではあろうかと考えております。
○ 畑野君枝君 今、各県でというお話がありました。もちろん県段階で福岡県などもそういう調査を進めております。あわせて国としても必要な調査を進めていただきたい。あわせて三十人以下学級やあるいは教育条件の整備も本当に進めていくことが必要だということを申し上げまして、質問を終わります。








平成13年4月6日 都道府県労働局長殿 厚生労働省労働基準局長

01年厚労省4・6通達労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について
 今般、標記について、別添のとおり、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下「基準」という。)を策定し、使用者に労働時間を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を示したところである。 ついては、本基準の考え方、周知及び遵守のための指導等については、下記のとおりであるので、これが取扱いに遺漏なきを期されたい。 一部略
                 記
 1 基準の考え方    (1)趣旨について
  労働基準法上、使用者(使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けた者を含む。以下同じ。)には、労働時間の管理を適切に行う責務があるが、一部の事業場において、自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用により、労働時間の把握が曖昧となり、その結果、割増賃金の未払いや過重な長時間労働の問題も生じている。このため、これらの問題の解消を図る目的で、本基準において労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき具体的措置等を明らかにしたものであり、使用者は、基準を遵守すべきものであること。
 (2)基準の2の(1)について  使用者に労働時間を適正に把握する責務があることを改めて明らかにしたものであること。また、労働時間の把握の現状をみると、労働日ごとの労働時間数の把握のみをもって足りるとしているものがみられるが、労働時間の適正な把握を行うためには、労働日ごとに始業・終業時刻を使用者が確認し、これを記録する必要があることを示したものであること。
 (3)基準の2の(2)について
 ア 始業・終業時刻を確認するための具体的な方法としては、ア又はイによるべきであることを明らかにしたものであること。また、始業・終業時刻を確認する方法としては、使用者自らがすべての労働時間を現認する場合を除き、タイムカード、ICカード等の客観的な記録をその根拠とすること、又は根拠の一部とすべきであることを示したものであること。
 イ 基準の2の(2)のアにおいて、「自ら現認する」とは、使用者が、使用者の責任において始業・終業時刻を直接的に確認することであるが、もとより適切な運用が図られるべきであることから、該当労働者からも併せて確認することがより望ましいものであること。
 ウ 基準の2の(2)のイについては、タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基本情報とし、必要に応じ、これら以外の使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突合することにより確認し、記録するものであること。また、タイムカード、ICカード等には、ICカード、パソコン入力等が含まれるものであること。 (4)基準の2の(3)のアについて  労働者に対して説明すべき事項としては、自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な取扱いが行われることがないことなどがあること。 
(5)基準の2の(3)のイについて  自己申告による労働時間の把握については、曖昧な労働時間管理となりがちであることから、使用者は、労働時間が適正に把握されているか否かについて定期的に実態調査を行うことが望ましいものであるが、自己申告制が適用されている労働者や労働組合等から労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘がなされた場合などには、当該実態調査を行う必要があることを示したものであること。
 (6)基準の2の(3)のウについて  労働時間の適正な把握を阻害する措置としては、基準で示したもののほか、例えば、職場単位毎の割増賃金に係る予算枠や時間外労働の目安時間が設定されている場合において、当該時間を超える時間外労働を行った際に賞与を減額するなど不利益な取扱いをしているものがあること。
 (7)基準の2の(4)について   ア 労働基準法第109条において、「その他労働関係に関する重要な書類」について保存義務を課しており、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類も同条にいう「その他労働関係に関する重要な書類」に該当するものであること。これに該当する労働時間に関係する書類としては、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書などがあること。
 なお、保存期間である3年の起算点は、それらの書類毎に最後の記載がなされた日であること。
 イ 上記アに関し、労働基準法第108条においては、賃金台帳の調整に係る義務を使用者に課し、この賃金台帳の記入事項については労働基準法施行規則第54条並びに第55条に規定する様式第20号及び第21号に、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、早出残業時間数、深夜労働時間数が掲げられていることに留意すること。
 (8)基準の2の(6)について    基準の2の(6)に基づく措置を講ずる必要がある場合としては、次のような状況が認められる場合があること。   ア 自己申告制により労働時間の管理が行われている場合    イ 一の事業場において複数の労働時間制度を採用しており、これに対応した労働時間の把握方法がそれぞれ定められている場合
 また、労働時間短縮推進委員会、安全・衛生委員会等の労使協議組織がない場合には、新たな労使協議組織を設置することも検討すべきであること。
 2 基準の周知
 本基準については、労働相談、集団指導、監督指導等あらゆる機会を通じて、使用者、労働者等に幅広く周知を図ることとし、本通達発出後、集中的な周知活動を行うこと。
(1)窓口における周知   労働基準監督署の窓口において、就業規則届、時間外労働・休日労働に関する協定届等各種届出、申告・相談等がなされた際に、別途配付するリーフレットを活用し、本基準の周知を図ること。
 (2)集団指導時等における周知   労働時間に係る集団指導、他の目的のための集団指導、説明会等の場を通じて積極的に本基準の周知を図ること。  特に、自己申告制により労働時間の把握を行っている事業場等については、これを集団的にとらえ、本基準の周知を図ること。
 3 基準の遵守のための指導等    (1)監督指導において、基準の遵守状況について点検確認を行い、使用者が基準に定める措置を講じていない場合には、所要の指導を行うこと。
(2)自己申告制の不適正な運用等により労働時間の適正な把握が行われていないと認められる事業場に対しては、適切な監督指導を実施すること。また、使用者が基準を遵守しておらず、労働基準法第37条違反が認められかつ重大悪質な事案については、司法処分を含め厳正に対処すること。
別添
 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について 労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである。
 しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用に伴い、割増賃金の未払いや過重な長時間労働といった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況もみられるところである。
 こうした中で、中央労働基準審議会においても平成12年11月30日に「時間外・休日・深夜労働の割増賃金を含めた賃金をを全額支払うなど労働基準法の規定に違反しないようにするため、使用者が始業、終業時刻を把握し、労働時間を管理することを同法が当然の前提としていることから、この前提を改めて明確にし、始業、終業時刻の把握に関して、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなど、現行法の履行を確保する観点から所要の措置を講ずることが適当である。」との建議がなされたところである。
 このため、本基準において、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにすることにより、労働時間の適切な管理の促進を図り、もって労働基準法の遵守に資すものとする。
 1 適用の範囲
 本基準の対象事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定が適用されるる全ての事業場とすること。
 また、本基準に基づき使用者(使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けた者を含む。以下同じ。)が労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、いわゆる管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての者とすること。
 なお、本基準の適用から除外する労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務がある。
 2 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
 (1)始業・終業時刻の確認および記録
 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。
 (2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。 ア 使用者が自ら現認することにより確認し、記録すること。
    イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
 (3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。    ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
   イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
   ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
 (4)労働時間の記録に関する書類の保存   労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。
 (5)労働時間を管理する者の職務
 事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。
 (6)労働時間短縮推進委員会等の活用
    事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間短縮推進委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。