【全教談話】

中教審「学校における働き方改革特別部会」の「意見のまとめ及び今後の方向性」に関わって

1年を単位とする変形労働時間制の導入ではなく、

長時間過密労働の実効ある解消策の策定を強く求めます

2018年10月19日
全日本教職員組合(全教)
書記長 小畑 雅子


 中教審「学校における働き方改革特別部会」(以下、特別部会)は10月15日、第18回目の会合を開きました。


 特別部会では「意見のまとめ及び今後の方向性」として「一年間の変形労働時間制を地方自治体の判断により導入することができるような制度改正を検討すべき」とする文書が示されました。


 そして、夏季・冬季・春季休業における勤務時間を7時間45分としたまま、それ以外は週3日あるいは4日の勤務時間を1時間延長し、8時間45分とする「変形労働時間制を導入した場合の勤務時間のイメージ」(以下「イメージ」)も同時に示されました。


1年を単位とする変形労働時間制は、そもそも地公法で地方公務員には適用除外となっています。


それを敢えて導入するなら教職員の長時間過密労働を解消できないばかりか、かえって時間外労働の実態を覆い隠し、長時間過密労働を助長することになります。


全教は特別部会における変形労働時間制導入に向けた検討に反対するとともに、長時間過密労働の実効ある解消策の策定を強く求めるものです。


平日の勤務時間が1時間長くなれば、当然のことながら名目上の時間外勤務は減少します。これは一日の拘束時間を増やす一方で、時間外勤務があたかも減っているかのように描き出すものです。


また、現行の退勤時間で帰ろうとすれば、1時間の年休を取得しなければならなくなります。女性教職員が多く、しかも世代交代によって若い教職員が増えている学校現場では育児や介護などを抱えていたり、自らの病気疾患で時間外勤務を極力控えなければ働き続けられない教職員も少なくありません。そうした教職員にとっては、より働きづらいものとなってしまいます。


「イメージ」では「繁忙期の業務の圧縮を進めつつ、7時間45分を超えざるを得ない分について、長期休業期間中の勤務時間を圧縮して一定の休日を設定する場合」の一例として、「『長期休業期間から学期中に週3時間割り振る場合(毎週3日間8時間45分勤務)』※年間15日間(例:夏季2週間、冬季3日、春季2日)の学校閉庁日に相当」との例示がされています。


しかし、現行でも官制研修の増加、夏季休業の短縮、教員免許更新講習、部活動などによって長期休業中といえども休みが取れない状況があります。「繁忙期の業務」や「長期休業期間中の勤務時間」を「圧縮」できる見通しが何も示されないもとでは、かえって時間外労働を助長することになってしまいます。


また、「繁忙期の業務」を「圧縮」できない原因が、あたかも教職員個人の「業務処理能力」にすり替えられ、自己責任論で片付けられることにもなりかねません。「イメージ」そのものが机上の空論といわざるをえません。


一方で、時間外勤務手当について、政令市を除く公立小・中学校の教職員の服務監督権者と任命権者が異なることを理由に、「給与面での措置は業務の抑制に直接的にはつながりにくい」「教職調整額の水準が実態とかけ離れているとの指摘については、今の業務の総量や長時間勤務を抑制することを優先し、……教職調整額の在り方は中長期的課題と考えるべき」などと、予算上の措置については悉く回避していることは断じて容認できません。


教職員の長時間過密労働の解消には、持ち授業時間の上限設定など、一人あたりの業務量を減らすための定数改善が不可欠です。


政府の総人件費削減政策に屈服し、教職員定数の抜本的改善に背をむけたままでは、深刻な教職員の長時間過密労働を解消することは不可能です。


また、競争と管理の教育政策からの抜本的な転換、「原則として時間外勤務は命じられない」とした「給特法」の原則を堅持した上で、なお残る時間外勤務には手当を支給するなど、今日の教育現場の実態に即した法改正が求められます。


教職員の長時間過密労働の解消は、子どもたちの教育の充実と教職員の専門性の発揮、いのちと健康を守るための喫緊の課題です。全教は、そのような立場から、教育にかかわるすべての団体や個人のみなさんと協力・共同を広げ、1年を単位とした変形労働時間制の導入を許さず、教職員の長時間過密労働の解消をめざし、引き続き全力をつくす決意です。

                             以 上