全国一斉学力テストにかかわる要請(申し入れ)

 
 憲法と教育の条理にもとづき、子どもたちの成長、発達を保障する教育の実現に向けてのご尽力に敬意を表します。

全国学力・学習状況調査」(以下、全国一斉学力テスト)は、国民的な批判を受けて、「悉皆調査から抽出調査へ」と本年度より制度変更を余儀なくされました。

しかし、約30%という高い抽出率を残すとともに、「学校単位、都道府県ごとの抽出率の設定」とされたために、最高では72.4%の学校(中学校・香川県)が対象校とされるなど「悉皆調査から抽出調査への移行」には程遠い状況となりました。

加えて、「学校設置者が希望すれば『調査を利用できる』」という抽出の趣旨に合致しない施策も残され、国民的な世論や「事業仕分け」でも集中した批判とはかなりの距離を持ったものになってしまいました。しかも、「(希望参加の場合には)採点、集計等は、設置者が自らの責任と費用負担で行う」とされ、予算確保ができなかった自治体では、その作業が学校現場に丸投げとなり、本来の学校教育に多大な悪影響を及ぼすことになりました。これでは、悉皆調査を事実上継続し、国の予算削減のしわ寄せを地方に転嫁しただけと指摘しなければなりません。

そして、この学力テストの結果が公表されるや「全国○○位」などの報道が相次ぎ、「学力テストの成績を上げることが教育の目的のように取り扱われている」などの厳しい声があがったのは当然のことです。

昨年の「事業仕分け」では、「6%程度の抽出で十分」という議論も行われたこの学力テストは、国連・子どもの権利委員会でも厳しく批判された「競争の教育」をいっそう促進する役割を果たしています。

私たちは、すべての子どもたちの成長と発達を保障する教育を願う立場から、全国一斉学力テストはただちに中止すべきと考えています。現段階では、少なくとも「抽出調査への移行」とする趣旨が、すべての過程で生かされることが必要だと考えます。以下の点をご検討いただき、具体化くださるよう申し入れます。

1 全国一斉学力テストの中止を文部科学省に求めること。

2 国民世論によって、「抽出調査で十分」と政策変更になった意義をふまえ、学校設置者として「希望利用調査に参加しない」など地域と学校の状況にもとづく自主的かつ民主的なな手続きを踏み、判断すること。

3 教育に責任を持つ教育行政として、これ以上の負担を学校に持ち込むことがないようにし、各学校の教育課程編成権を尊重すること。

尚、県教委へは、次の要請をしています。

1.全国一斉学力テストの中止を文部科学省に求めること。

2.国民世論によって、「抽出調査で十分」と政策変更になった意義をふまえ、これまで同様、市町教育委員会の地域と学校の状況にもとづく自主的かつ民主的な判断がなされるよう県として配慮すること。