CEART第10回会議の到達点と勧告について(声明)

全日本教職員組合(全教)中央執行委員会

1.CEART第10回会議が、2009年9月28日から10月2日まで、パリのUNESCO本部で開催されました。全教はCEARTに、2002年、日本における「指導不適切教員」政策や新しい「教職員評価」制度の導入が「教員の地位に関する勧告」(以下、1966年勧告)を遵守していないとしてアリゲーションをおこないました。今回の会議では、2008年の訪日調査も含めて過去4回だされた報告・勧告を踏まえて、全教のアリゲーションについての審査もおこなわれました。ILOは、11月の理事会においてCEART第10回会議の報告を承認し、2009年12月8日付で全教中央執行委員長宛に送付してきました。

2.CEARTは、2008年4月20日から28日に実施したCEART調査団の報告を踏まえた中間報告で、教員評価制度、業績評価、賃金決定などの改善やこれらの問題についての教員団体との協議や交渉にたいする政府のとりくみ方に関する4度目の勧告をおこないました。

3.全教はその後の状況について、全教としてすすめている勧告普及のとりくみと文科省に対して協議をすすめるための要請を積極的におこなっているものの、文科省の対応がきわめて消極的なものであることを、追加情報として2009年2月19日に提出しました。さらに、2009年6月13日と14日に東京都内で開催した「ILO・ユネスコ『教員の地位』勧告とCEART勧告を教育にいかす国際シンポジウム」のとりくみとともに、都道府県段階の状況として、香川・京都・大阪・北海道における勧告の適用状況における問題点を、2009年7月30日に追加情報として提出しました。

4.文科省は、2009年8月24日、CEARTに対して「(2008年の)勧告については、我が国の法制度を踏まえたものではなく適当でないことから、次回会合(第10回会議)においては、我が国の法制度を尊重して検討を行うよう求める」とした追加情報を提出しました。
※( )内は全教注

5.CEART第10回会議は、所見として、「1966年勧告の教員の雇用とキャリアに関する第VII部への注意を喚起する。ここでは専門職としての身分を損なうような専断的行為からの十分な保護(46項)、懲戒手続きが取られた場合の手続き上の保護の必要性(47項から52項まで)に言及している。」「勧告82項によれば、教員の賃金と労働条件は教員の使用者と教員団体との間の交渉を通じて決定されなければならないことを想起する。」「2008年中間報告で指摘しているように、共同専門家委員会は文科省と県教委とが提起された問題における政策にかんして教員団体との間で ―必ずしも正式な交渉ではなくとも― 誠意をもった協議のプロセスを開始することを期待」しているとしました。これらは、全教が追加情報として提出した各地の状況に対する解決の方向を明確にするものです。

6.こうした所見にもとづいて、CEART第10回会議は以下の4点を勧告しました。
? 共同専門家委員会は政府と教員団体がILOとUNESCOの助言活動と尽力を利用して、協議・社会的対話制度、教員評価、行政評価などについての情報や手本となるようなグッドプラクティス(優れた実践例)を入手するように勧告する。

? 共同専門家委員会は政府と教員団体に、ILOとUNESCOと協力し、双方が受け入れられるような1966年勧告の日本語訳を作成するようよびかける。

? 共同専門家委員会は政府にCEART中間報告と調査団報告を、政府が加えることを希望するコメントがあればそれを付けて、各県教育委員会に情報として送ることをよびかける。

? 共同専門家委員会はさらにILO理事会とUNESCO執行委員会にたいして以下を勧告する。
(1) 上記の所見を考慮すること。
(2) 上記の所見と勧告を日本政府、県教委、関係する教員団体に伝達し、政府と代表的な教員団体すべてに対し、これらの事項についての進展や継続する困難にかんする情報を共同専門家委員会に引き続き提供すること。

7.全教は、この間の日本における勧告適用状況をふまえた、具体的で踏み込んだ今回のCEART勧告を心から歓迎するものです。2008年のCEART中間報告がだされて以後、私たちは積極的にすべての教育委員会に対してその内容を伝え、懇談をすすめてきましたが、文科省が積極的に各県教育委員会にCEART中間報告と調査団報告を伝えることは、各県教育委員会と私たちとの懇談や協議をさらに深めていく大きな力になります。

8.CEARTが勧告したように、日本においては1966年勧告の日本語訳は確定されていません。1966年勧告は、「教育の進歩における教員の不可欠な役割」を明記し、「教員団体は、教育の進歩に大きく寄与しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない。」と述べていますが、「双方が受け入れられるような1966年勧告の日本語訳」を作成する共同作業そのものが、日本における文科省と教職員組合との交渉・協議に大きく資することは明らかです。同時に、「指導不適切教員」政策や「教職員評価」制度等をめぐっても「情報や手本となるようなグッドプラクティス(優れた実践例)を入手」し、1966年勧告の立場からお互いに協議し、社会的対話を深めていくことはきわめて重要なことです。私たちは、ILOとUNESCOの協力と援助を求めつつ、文科省および他の教職員組合とともに、お互いが受け入れることができる前向きのとりくみをすすめることを決意し、ともに「誠意をもった協議のプロセスを開始する」場をつくっていくことを心から呼びかけるものです。

以上