木村裁判第3回口頭弁論 傍聴・記

2009年2月12日(木)13時30分〜 静岡地裁

木村百合子さんの自殺を、公務災害として認定すべきだとして、ご遺族が訴えている裁判の第3回口頭弁論が、2月12日に行われました。

 裁判までの概要は以下の通りです。
「本件は、平成16年(2004年)4月に教諭として静岡県磐田市立東部小学校に新規採用された木村百合子さんが、着任当初から発達障害が疑われる指導困難児の指導に追われ、担任する学級も混乱に陥るなど学級経営に苦労し、管理職や学年主任など学校側からは適切な支援を得られず、逆に指導力不足を厳しく叱責されるなど、大きな精神的負荷を継続的に負う中でうつ病に罹患し、保護者からの苦情の手紙を受け取った翌朝、焼身自殺により24歳の若さで命を絶ったという痛ましい事件である。
 本件は、かかる木村百合子さんの自殺を公務外の災害であると認定した被告(地方公務員災害補償基金)の処分を取り消し、本件災害は地方公務員災害補償法31条にいう「公務上死亡した場合」であるとの認定を求める行政取消訴訟である。」(以上、「訴状」より)

 さて、当日は13時30分に始まりました。尾崎裁判では、証人尋問以外は互いの提出文書の確認がほとんどで、5分程度で終わることも多かったのですが、木村裁判の場合は、1回目からこの3回目まで、原告・被告及び裁判長の間で、口頭でのやり取りが長く続きます。今回も20分ほどの応酬がありました。

 既に原告(木村さん)、被告(基金)ともに準備書面(「口頭弁論は書面を準備しなければならない」ことから、事件の認否、反論等の文書)が出されています。

公務としての判断基準からどう考えるべきか

 原告の準備書面では、木村さんの死を公務としての判断基準からどう考えるべきかを主張しました。特に木村さんの場合、新採教員として担任し、教室には騒ぐ子もいて、必要な支援もない、そういう中でどの先生もこなしてきた内容であるかどうかということです。

 木村さんの場合、学級の混乱ぶり、発達障害が疑われる指導困難児の行動、その状況に対してどういう支援が必要だったか、本来どういう支援が必要だったか等から見て、明らかに他の先生より厳しかったことを数10ページにわたって原告の準備書面では詳述されています。裁判長にこの状況を具体的に判断してほしいと訴えたものです。

従って、うつ病になっても仕方ないほどのものだったという主張です。

 今回はさらに、平成10年〜12年当時の文部省が委託し研究調査した「学級経営研究会」の出した報告も載せられています。
(『学級経営をめぐる問題の現状とその対応(関係者間の信頼と連携による魅力ある学級づくり) 文部省委嘱研究(平成10・11年度)『学級経営の充実に関する調査研究』(最終報告書)学級経営をめぐる問題の現状とその対応−関係者間の信頼と連携による魅力ある学級づくり−平成12年3月学級経営研究会)http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/12/05/000506.htm
 そこでは下記の10のケースを紹介しています。
ケ−ス1 就学前教育との連携・協力が不足している事例 
ケ−ス2 特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる事例  
ケ−ス3 必要な養育を家庭で受けていない子どもがいる事例
ケ−ス4 授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる事例  
ケ−ス5 いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた事例  
ケ−ス6 校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない事例  
ケ−ス7 教師の学級経営が柔軟性を欠いている事例 
ケ−ス8 学校と家庭などとの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた事例  
ケース9 校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされなかった事例  
ケース10 家庭のしつけや学校の対応に問題があった事例
 木村さんの場合も同様のケースで、通常の職務でないとして、過重性を主張しました。

うつ病の状態とNくんの判定について

 木村さんのうつ病の状態はどうだったかについては、被告基金側は、今回までに医学的所見を出す予定でしたが、3/6までに延期しました。理由は分かりません。 
 Nくんが、ADHDではなかったという件については、平成16年12月22日に医療機関ADHDではないと判定したと被告基金側は主張していました。しかし今回それは、基金の裁決書(公務外とした際の)にあったままを引用しただけということが分かりました。この日は「受診日」であって、判定がされた日ではなかったのです。いい加減です。重要なことですからしっかり調べて記載すべきです。判定された日はまだはっきりしません。

法律的なこと

 今回の準備書面では、様々な判例を調べたそうです。 労災や公災など法律的な因果関係を証明する場合、過労死とちがい自殺はやっかいです。「覚悟の上」などとされ、遺言が残っていると認められない場合もあるそうです。
 今回も被告基金側は、こんな事まで言うのと思う反論をしています。つまり、自殺の前日に木村さんがライターと灯油を買っていることから、「自由意志」で自殺した、何をするか分かっていた、判断能力があった、従って、因果関係が「中断」していると主張しているのです。

 また、因果関係だけではダメで、「相当因果関係」が必要だと判例ではなっています。木村さんがこのクラスを持たなければ自殺はなかったことははっきりしているが、行為の結果が公務災害相当と判断できなければ、公災になりません。木村さんの業務自体に過重性、平均的なものより過重だったという証明が必要です。
 新採、サポートない、パワハラ(「アルバイトじゃないんだぞ」などの暴言)、そういう中での保護者からの手紙等々。認められないのはおかしいと思います。

昼間で大変ですが、是非傍聴してください。その後、弁護士さんからの説明があります。

第4回口頭弁論 4月9日(木)13:30静岡地裁