2007年度対県教育長春闘要求交渉 速報

07年4月26日

4月26日(木)に3月に提出した『全教静岡対県教委春闘要求書』に対する回答と交渉が行われました。遠藤県教育長(元静岡高校長)、須藤教育次長(総務省自治税務局固定資産税課長補佐からの出向・教育畑とは無関係)、教育総務課長、義務教育課長などの県教委の面々が20人顔をそろえています。

 先ずは、全教静岡の齋藤委員長から。 
「今回ははじめに2点要望したい。一つ目は、現場はこの4月末の時期、会議、行事や出張で多忙で大変であること。組合側の出席も大変である。交渉の場を早めに設定していただきたい。二つ目は、国の「教育再生会議」で「親学」なることが言われている。これまでも、「ゆとり」「いじめ対策」などいろいろなことが出て、何だこれは?と思っている内に、それが法律になってしまう。こんな現場が対応できないスピードで変えられては困る。現場の声が反映される、現場サイドに沿ったものになるようにしてほしい。」

 それに対して、県教育長は、
「一つ目は、早めに対応するようにしたい。二つ目については、気持ちが通じるところがある。今後とも、組合とは誠実に話し合っていきたい。」とあいさつして、組合側の重点要求について次にように回答しました。

■組合からの重点要求と◆県教育長の回答

重点1. ■ 全国でも進んでいる小学校1・2年生の30人学級と中学1年生35人学級を実現させること。■ 小1支援員を派遣する場合には、次の3点において改善すること。①授業ができる支援員とすること②4月のはじめから派遣すること ③34人枠を取り除くこと
県教育長回答 ◆中1支援プログラムを平16から3年研究してきた。生徒指導上は効果があった。しかし学習面では明確な差異が見られない。継続して検討していきたい。
 小1支援は、国の定数活用で行って。いる。国の動向を見ながら、あわせて検討していきたい。

重点2.■ 子どもたちの安全を守るため,養護教諭が学校を留守にする場合、専門的知識のある代替者を当該学校に派遣できるよう予算措置を講じること。
県教育長回答 ◆国の基準や県の財政状況から見て、県単独(県単)の配置は無理。
 平17から近隣校サポート事業を行い、兼務校の安心感、保護者の信頼を得てきたので、指定校を増やして継続していく。今年度から拠点校を県内9校から12校に増やした。
重点3. ■ 県内の学校職場に働くすべての非常勤職員の時間給を1000円以上に引き上げること。また、 時間講師の授業時間単価を3000円以上に引き上げること。
県教育長回答◆業務内容が異なっているので、できない。単価は、地方交付税単価を考慮して実施している。

重点4.  ■ 高校入試調査書作成等、計測可能な時間外勤務に関して時間外勤務手当を支給すること。
県教育長回答◆時間外勤務はできないことになっている。

重点5. ■ 教育現場には馴染まない「教職員人事管理システム」導入をしないこと。■ 計画されている来年度の全校試行は拙速であり、取りやめること。
県教育長回答◆ 今年度全校試行を実施し、調査研究委員会で制度のいっそうの改善をはかっている。組合(職員団体)の意見聴取は今年度も行いたい。本格実施は、全校試行の状況で判断していきたい。

重点6.の① ■ 文科省4.3通達「労働安全衛生法等の一部を改正する法律等の施行について」の内容をすべての学校職場に改めて徹底するよう指導すること。
県教育長回答◆文科省の4・3通達の趣旨は、十分理解している。教職員の安全と健康については、市町、教委に働きかける。

重点6.の②■ 休息時間を廃止しないこと。また,休憩時間及び休息時間にまたがる児童・生徒の指導や会議等の職務が行われている事実を認め速やかに是正措置を講じること。
県教育長回答◆休息時間の廃止について、9月県議会に上程の方向で考えている。
休憩時間にまたがる児童・生徒の指導については、勤務時間の適正化について、各学校に働きかけている。

重点7. ■ 体力的・精神的健康不安を訴える教職員が増加している折、教職員の健康及び「勤務状況調査」の分析に基づき、勤務の軽減等健康回復のための緊急措置を講じるなど、超過勤務の縮減を実現させること。
県教育長回答◆勤務時間の適正化のための環境づくりを指導している。
 ◆休暇制度については、『義務教育課だより』で周知させている。健康保持のための可能な措置を講じる。

重点8.■ 最近多く発生している「指導要録」「調査書」「成績関係書類」「記憶媒体」等の校外持ち出しによる事故を防ぐには、勤務時間内で成績処理等ができる環境を用意することであり、そのための抜本的な解決策を早急に講じること。
県教育長回答◆勤務時間内に処理できるよう適正化をはかる。

重点9.■ 1-65で頭打ちとなる臨時的任用職員の賃金改善に努め,退職金の支給についても実施すること。
県教育長回答◆県の任用要綱にもとづいている。職務の困難性を考慮して、級号給に組み入れている。
 ◆退職金については、県の退職条例の適用外となっている。

重点10. ■ 教員採用試験に関して、いわゆる講師経験がある受験者には一次試験を免除するような特別措置を講じること。
県教育長回答◆ 平20から、教員経験者対象選考を導入した。

回答後の交渉

組合   少人数学級の態度は変わっていない。(怒!)(県教委は、制度や待遇については、「国の動向や他県の状況などを見て」というが、少人数学級に関しては「他県の状況」を言わない。他県が少人数学級を進めているからで、まったくのご都合主義の態度)
 小1の34人という限度はなくしてほしい。子どもの環境も変わっている。34人以上であろうと、以下であろうと大変なことは変わりない。
 空港建設を止めて、教育に金を回すべきだ。
 他県で行われている30人学級がなぜできないのか。
県教育長   財政的な裏付けが厳しい。
 県知事に言われて、理想的な教育とはどういうものか出してみろ、と言われて、『教育を取り巻く環境実態調査』を行う。現場の声を反映するために、またいい教育をするために、生の声をぶつけてほしい。
(組合は、もう十何年、県教委に生の声を「ぶつけている。」しかも、県知事は県議会で、「学力の指導力は、塾の方が高い。」と発言しており、学校現場の実態のつかみ方も、「学力観」もその程度の人物。) 
組合  ある小規模の中学校では、今年「井川宿泊体験学習」と修学旅行を同日に行うことになった。それは、昨年2つを別の週に行ったら、教科の先生が付き添ったため、その2週間他の学年の普通授業ができなかったためだ。ところが、今年養護教諭が新採のため、同じ日に初任者研が入り、養護教諭が引率できなくなった。さあ、そうなると、専門の人を雇って養護教諭の代替
をしてもらうことになる。その費用が出ないので、子どもから集金するか、それとも代替者をやめるか、と悩んだ。保護者から人件費を集金するなんておかしな話だ。重点2.の件は、そういう現場の実態からも要求していることだ。
 静西教育事務所からの通達の中に、精神疾患を患う教職員が増えたことで、「先生方は強くなれ…」といった文面があったと聞く。まったく本末転倒の話で、本当なら問題だ。調べてほしい。
 教育長は、「生の声を聞きたい」というが、既に一昨年9月抽出、昨年の1月と6月に県教委は『勤務状況調査』を行っている。抽出調査の結果が出た一昨年12月に県教委は「想定内」というコメントを発表している。1時間、2時間の時間外勤務が非常に多く、休憩を取れない教職員が80%以上、持ち帰りを1週間内にしたという教職員が80%以上などの結果も出ている。今さら、調査、検討などでなく、わかっているのだから、対策を打ち出すべきだ。「勤務時間の適正化を指導する」の一言で、現場がなんとか変わるとは思えない。この部屋から(県庁東館16階)静岡市内の学校が見えるから、何時まで灯りがついているか見ればわかる。
 3月22日に出た尾崎裁判(うつ病発症で自殺された小学校養護学級担任の死は、公務災害として認定することを求めた裁判)の静岡地裁判決は、「県内養護学級の児童数は4人以上が6割。だから2人の受け持ちでは、特別多いとはいえない。」と言い、発症の原因となった問題行動のある養護学校児童の2週間の体験入学(これも異常に長い!)中、「手の空いている教師が誰かしら」いて、「相手をしたり」「問題行動の時は引き離すなど」した。他の先生が「体験児童の相手を無難にこなしていた」などから、「強度の心理的負担を与えるものであったとは認め難い。」として、公務の過重性を認めなかった。しかし、これらの理由は、県教委でさえ、「教師の仕事」として認めないのではないか。(教育とは、教師の仕事とは、「相手をする」だとか「無難にこなす」などの言葉で言い表せるものか。)こんな判決を出させる地方公務員災害補償基金静岡支部支部長は県知事)に対して、県教委はどうも思わないのか。(県教育長や義務教育課は、尾崎裁判そのものを知らなかった。ひどい話。怒!)
県教委  勤務状況調査の結果に対しては、対策を講じる用意ができている。(交渉後の教育総務課主席管理主事の弁明。さて、本当に現場に生きるものでしょうか。半信半疑で、期待…。)