安心して働きつづけられる定年延長制度の実現を

2021年6月4日

【全教談話】安心して働きつづけられる定年延長制度の実現を

        全日本教職員組合   

        書記長 檀原 毅也

 

 本日、国家公務員の定年年齢を引き上げるための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」および「地方公務員法の一部を改正する法律案」が参議院本会議で採決され、可決成立しました。

 

 2000年の厚生年金保険法「改正」によって、年金支給は65歳へと段階的に引き上げられ、今年度退職者から65歳まで完全無年金の状況となります。雇用と年金の確実な接続のためには、定年年齢の引き上げは必要なことです。しかし、改定された内容には多くの課題が残されています。

 

 2023年度に60歳になる者から定年が段階的に引き上げられ、2031年度に65歳定年が完成します。われわれがこの間の交渉で強く改善を求めてきたにもかかわらず、制度が完成する2031年度までは、61歳以降の職員の俸給月額は7割に引き下げられます。同じ職務を続けているにもかかわらず年齢のみをもって給与水準が引き下げられることは、公務員の給与決定に関する原則である職務給の原則(「職員の給与は、職務と責任に応ずるものでなければならない」地公法第24条)からもあってはならないことです。また制度が完成する2031年度までに、60歳前後の給与水準を連続的なものとなるよう、今後、人事院で検討されることになります。7割水準のまま給与を連続的なものにすれば、60歳以前の給与水準が大幅に引き下げられることになり、断じて容認することはできません。

 

 多くの教職員から、「今の長時間過密労働ではとても65歳まで働き続けることができない」などの声があがっています。介護休暇制度の抜本的充実や小学校の体育実技補助といった高齢層への労働軽減のための措置の実施など、定年まで働き続けることができる条件整備が緊急に求められます。

 

 60歳以降の弾力的な働き方として「定年前再任用短時間制度」と、退職後65歳までの「暫定再任用制度」が設けられましたが、給与のしくみは現行再任用制度と同一の内容とされています。現行制度は、収入が正規職員の約6割以下になり、とりわけ低く抑えられている一時金の支給月数や、住居手当や寒冷地手当などの生活関連手当は支給対象とならないなど、制度改善は喫緊の課題です。また現行の再任用の定数は、教職員定数法の枠内での任用となっており、再任用を定数外とし政府・文科省の責任で再任用に係る独自の定数措置を行うことが求められます。

 

 また、隔年で定年退職者が発生しない年度が生まれることから、年度によっては新規採用が抑制される危険性があります。教職員の年齢構成の是正をおこなうためにも、計画的・継続的な採用をおこなう必要があります。

 

 成立した地方公務員法には、われわれの要求を反映して、非常勤職員と常勤職員との給与・手当等の格差をなくすための処遇の改善、必要な新規採用を継続するための定員措置、職員の希望に基づく暫定再任用職員のための定員の確保、地方公共団体は職員団体等の関係者との誠実な協議等、重要な附帯決議がついています。今後のとりくみに活かす必要があります。

 

 今後、地方自治体においても、定年年齢引き上げのための条例改正が行われていくことになります。全教は、教職員が安心して働き続けられる定年延長制度を求めて、とりくみを強める決意です。

 

                     以 上