義務標準法改正 小2から35人学級へ 全教が談話

【全教談話】    

「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準

に関する法律の一部を改正する法律」の成立にあたって

  2021年4月7日

  全日本教職員組合(全教)

  書記長 檀原 毅也

 

(1) 41年ぶりの小学校全学年学級編制標準引き下げ

 2021年3月31日、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下、義務標準法)の一部を改正する法律」が成立し、4月1日から小学校2年生の学級編制標準が35人になりました。

 

2011年に小学校1年生が35人以下学級となって以来、国の責任による少人数学級は前進しませんでしたが、地方では独自の少人数学級が広がり、全教の「全国の少人数学級」調査から、5府県4政令市を除くすべての自治体で国を上回る学年で少人数学級が実施され、21県5政令市では小・中学校全学年で少人数学級が実施されていることが明らかになっています。

そして、義務標準法改正の動きを受け、2021年度は15道県3政令市が独自の少人数学級を前進させています。地方任せではなく国が責任をもって学級編制標準を引き下げることが求められています。

 

 2020年度はコロナ禍によって全国一律休校が行われ、学校という子どもたちの学ぶ権利を保障し安心安全に過ごすことのできる居場所が奪われることになりました。学校が再開されるとほとんどの学校で分散登校など、密集を避け、できるだけ少人数に分ける対応がとられ、子どもたちのいのちと健康を最優先にするとりくみがすすめられました。そうした中で、少人数での授業や学校生活の良さが実感を持って子どもたちにも教職員にも、そして保護者にも伝わりました。

 

 全国各地で保護者や教職員、市民、さらに教育研究者が声を上げ、署名や集会、要請、マスコミへのアピール、SNSによる拡散など多種多彩なとりくみを広げました。これまで少人数学級を求めるとりくみを行ってきた人たちと、そうしたことに関わったことのない若い人たちが連係して、新しい息吹を感じさせるとりくみが大きく広がりました。全教は、「えがお署名」や「教育全国署名」、「#めざせ20人学級プロジェクト」などを通じて、全国各地のとりくみと結んで、それをつなげ、広げる役割を担いました。コロナ禍のもとで子どもたちのいのちと健康を守り、成長と発達を保障するため、少人数学級の実現を求める声は大きなうねりとなりました。全国の500を超える地方自治体が決議を上げ、地方6団体や教育委員会、教育関係団体、政党・会派も少人数学級を求め、萩生田文科大臣がいう「財務省の壁」に穴を開け、ついに国を動かしました。

 

(2) 教育予算を大幅に増やして、少人数学級の前進を

 義務標準法改正による35人以下学級の実施は大きな前進です。しかし、5年かけて小学校だけを35人以下学級にすることはスピード感もなく、いま小学校3年生以上の子どもたちにとってはまったく恩恵のない「改善」です。計画を前倒しして小学校全学年の35人以下学級を早急に実施し、中学校・高校や特別支援学校・学級でも学級規模縮小をすすめることが求められます。また、私学でも公立と同じ教育条件で学べるよう、私学助成の増額で学級規模縮小などの教育条件整備を行うことが必要です。衆議院予算委員会日本共産党・畑野君枝議員が菅首相に中学校の35人以下学級について質し、「中学校を念頭に申し上げました」との首相答弁を引き出しました。この答弁も活用し、少人数学級の前進をさらに広げることが重要です。

 

 日本の40人学級は国際標準から大きく遅れています。OECDインディケータ2020によれば、「1学級当たりの児童生徒数」のOECD平均は小学校21.0人・中学校23.2人に対し、日本は小学校27.2人・中学校32.1人と非常に多いことがわかります。その原因は日本の教育予算が国際的に見ても少なすぎるからです。OECDインディケータ2020によれば2017年の日本の公財政教育支出の対GDP比は2.9%でOECD加盟38か国中、下から2番目の低さです。せめてOECD諸国平均の4.1%まで教育予算を増やせば、すべての学校の少人数学級と幼稚園から大学までの教育無償化を実現することができます。子どもたちのいのちと健康を守り、成長と発達を保障するためにOECD諸国並みの「20人学級」がいまこそ求められています。

 

(3) 義務標準法改正でつけられた附帯決議を着実に実現させ、「#めざせ20人学級」「#せんせいふやそう」

 義務標準法改正案は、8つの附帯決議が付けられ、衆参ともに全会一致で成立しました。

附帯決議には、

①中学校・高校の少人数学級の検討、

②必要な加配定数を削減することなく確保するための安定的な財源措置、

③教員免許更新制の大幅な縮小や廃止を含めて教員の確保や負担軽減、

④義務教育費国庫負担金及び地方交付税の財源確保、

⑤学級編制標準引下げの効果検証については「学力」だけでなく指導方法・学習環境改善や不登校発達障害など特別なニーズを持つ子どもへの対応などを含め総合的に行うこと、

⑥小学校高学年の教科担任制は教員の定数増を含め検討し、小学校教員の持ち授業時数の軽減を図ること、

教育職員免許法の抜本的な見直しを含む検討、

⑧計画的な教員定数改善によって地方が必要な教員を正規で採用・配置するよう促し非正規教員が増加することのないようにすること、

が書き込まれました。いずれもゆきとどいた教育を実現するために必要なことで、今後、国は早急にその着実な実行をすすめるべきです。

 

 全教は、2022年度文科省概算要求に向けた「えがお署名」や、ゆきとどいた教育を求める「教育全国署名」のとりくみをいっそう広げるとともに、「#めざせ20人学級」「#せんせいふやそう」などSNSを活用したとりくみなど、全国各地と連係し、大きく世論を広げ、「20人学級」を展望した国の責任による少人数学級のさらなる前進を求めます。子どもたちが安心して学べる教育条件整備のため、教育予算の増額を求め、全国の保護者・教職員・地域住民とともに奮闘する決意です。

 

                         以  上