「GIGAスクール構想」を実状を無視して、押し付けるな!

【全教談話】

子ども・教育への影響や地方自治体の実状を無視し、

経済政策としての「GIGAスクール構想」を押しつけるべきではない

 

       2020年2月21日

         全日本教職員組合(全教)

         書記長 檀原 毅也

 

 政府は、12月13日、経済財政諮問会議で安倍首相が「PCが1人当たり1台となることが当然だということを、国家意思として明確に示す」と発言したことを受け、経済対策として「GIGAスクール構想の実現(2318億円)」を含む補正予算案を閣議決定しました。

 

 同日、萩生田文科大臣は、「令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~大臣メッセージ」を発表し、「GIGAスクール実現推進本部」を設置し、「児童生徒1人1台コンピュータを実現」「高速大容量の通信ネットワーク」整備等の政策パッケージを発表しました。

 

「大臣メッセージ」では、「1人1台端末環境は、もはや令和の時代における学校の『スタンダード』であり(略)これからの学校教育は劇的に変わります」としています。

 

しかし、「教育のICT化」や「1人1台端末」が子どもと教育に及ぼす効果や影響についての研究・検証も十分おこなわれていないまま導入を強行しようとするもので、学校現場から懸念する声が上がっています。

 

子どもと教育への影響についての検討を後回しにし、とにかく「国家プロジェクト」として位置づけ、公教育への民間産業の参入を促進する経済対策としてやみくもに導入に突き進んでいくことは、許されるものではありません。

 

 政府・文科省は、一人ひとりの子どもたちの学習ログを蓄積しAIを活用することで「最適化」された課題を提供し、異なる課題にとりくむことで「公正に個別最適化された学び」が実現するとしています。

 

しかし、今、経済政策として強引にICT化をすすめれば、子どもたちが共同の学びをすすめ、人間的なふれあいを通じて育む本来の教育を大きく阻害する危険性があります。

 

「人格の完成」をめざす教育に直接責任を負う教職員の専門性をも否定するものです。

 

また、子どもたちの学習ログを蓄積したビッグデータを活用することは、民間教育産業や巨大IT産業による教育や生活への介入・支配につながる危険性すらあります。

 

さらに、ICT機器の活用を推進することによる子どもの体や心の成長・発達への影響について、多くの専門家から問題が指摘されていますが、十分に検討されているとは言えません。

 

 文科省は、2019年度補正予算を受け、「児童生徒1人1台コンピュータ」配備について「令和5年度までに、小中全学年で達成」(「児童生徒1人1台コンピュータ」の実現を見据えた施策パッケージ)することを地方自治体に押しつけています。

 

1人1台端末の配備に係る2019年度補正予算において「全校分の所要額を計上している」としていますが、

通信ネットワーク配備に関する経費の半分と導入後の運用保守・保証などのランニングコストや有償ソフトウエアに関する経費の全額は地方自治体の負担であり、

地方自治体財政に大きな負担をかけるとともに、安定した運用の保障もありません。

 

すでに、静岡県市長会等から、各自治体の補正予算における関連経費が大きいとして、政府への批判や不満が噴出しています。

 

 「GIGAスクール構想」の導入により、公教育への民間産業の参入を促進しようとする政府・財界の意図が見え隠れします。

 

全教は、

子ども・教育への影響や自治体の実状を無視し、経済政策として「GIGAスクール構想」を押しつけるのではなく、

 

子どもや学校、地方自治体の実態を踏まえ、国の責任で一人ひとりの子どもたちにゆきとどいた教育を保障するための条件整備をすすめることを求めます。

                          以上

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学校現場での、さらなる多忙化は必至では(-_-;)